言論NPOは8月9日、21世紀臨調主催の「政権公約検証大会」にて、自民党と民主党のマニフェストの評価結果を公表しました。
両党のマニフェストを「形式要件」と「実質要件」の2項目をもとに、「外交・安全保障政策」「経済政策」「財政政策」「少子化対策」など全17分野にわたって検証した結果、17分野の「平均点」は自民党が100点満点で36点、民主党が27点となりました。
また、21世紀臨調の政権公約検証大会では、主催者側の要請により、評価項目にマニフェストの「策定手続き」を評価項目として加えたため、自民党と民主党の「総合点」はそれぞれ36点、31点となりました。「総合点」と「平均点」の違いは、マニフェストの「策定手続き」の評価に20点の配点を行い、集計をし直したためです。
そのため、言論NPOでは、マニフェスト評価の公表としては、17分野の「平均点」としての評価結果を言論NPOの評価として公表し、マニフェストの策定手続きの評価は実際の点数に加えず、参考意見として公開することにしました。
この結果、2009年のマニフェスト評価は自民党が36点、民主党は27点になります。
この自民党マニフェストの36点と民主党マニフェストの27点という結果はいずれも、2年前の2007年の参議院選のマニフェスト評価と同じ(自民党27点、民主党28点)でかなり低い水準であり、国民の約束としては「不合格」だと私たちは判断します。
なお、個別の評価では、全17分野のうち、民主党の点数のほうが自民党よりも高かったのは「医療政策」「環境政策」「市民社会」の3分野にとどまりました。残りの14分野では、自民党のほうが民主党よりも相対的に高い点数を得ています。
自民党で最も評価が高かった分野は「経済政策」(51点)で、逆に最も低かったのは「医療政策」「市民社会」(それぞれ21点)でした。民主党で最も評価が高かった分野は「医療政策」(62点)で、最も低かったのは「規制改革」(7点)です。
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※点数は四捨五入しています。
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言論NPOの評価はこれまでと同様に、政権公約が国民との約束としての形態を整えているかを判断する「形式要件」と、日本が直面している課題解決のどの程度向かい合い、答えを出そうとしているかを評価する実質要件の2つの基準によって評価を行っています。2つの要件に8つの評価項目があり、それらの評価点を集計して全体の評価点を算出しています。
今回の2009年の総選挙では「形式要件」に40点、「実質要件」に60点という配点をしています。「形式要件」は、マニフェストが約束としての要件を備えているかを判断するもので、数値目標、財源や期限など約束が測定可能なものであるかを判断すると同時に、なぜそうし政策に取り組むかという、政策の理念・目的から目標実現のための政策手段や工程などが体系として描かれているのか、を判断します。
「実質要件」では、マニフェストが現在の日本の課題の解決に向けた設計図になっているかどうかを判断します。課題抽出の妥当性(政治が取り組むべき課題を適切に把握できているか)、課題解決の妥当性(目標と政策手段が整合性を持っているか)、指導性と責任(マニフェスト全体の中で、約束の実現が矛盾なく位置づけられているか)、の3つについて、それぞれ20点満点で評価しています。
言論NPOでは政策当事者のヒアリングや有識者のアンケートを踏まえてそれぞれの分野の課題や現状の認識をまず固め、マニフェストで書かれている政策課題を8つの評価項目に関して評価を行っております。この作業には各分野の専門家の評価委員約20氏が参加し、また政党との討議なども行うかたちで、その評価のプロセスを公開しています。
言論NPOではこれらの評価基準や評価委員のコメントや政治との討議の模様を全て専門サイトで公開しています。
評価基準に沿って両党のマニフェストを見ると、まず形式的な要件の一つで数値目標や期限などが書かれている政策項目は自民党と民主党でそれぞれ15%、 13%しかありません。またそれぞれの政策課題が体系性を持って提示されておらず、ともに約束として形式要件は満たされてはいません。
特に自民党についてはこれまで政府が実施してきたものを並べているだけの項目が多く、政府がまとめた「安心社会実現」を骨格に据えたが、そこで描かれた目指すべき社会を提起しているとは言えません。民主党については、目的や目標、政策手段の体系性が十分ではない。それにも関わらず、国民へのサービスの支出計画がマニフェストの前面に出て、それぞれの目的との関係が十分に説明されないなど、ばら撒き的な色彩が強いと言えます。
「実質要件」について見ると、自民党には政権与党として、この間の取り組みを総括して政策に反映させる努力が求められましたが、新しい政策は乏しく、なおかつ教訓が今回のマニフェストの政策に反映されているものが少ない。マニフェスト全体で、首相が約束を約束の実現する気迫や指導力が感じられません。
民主党については、日本の未来に向けた課題設定や将来像、日本の国際社会での役割をあまり語っていない。個別政策に斬新さが見られるものの、マニフェスト全体で見たときに他の政策との整合性が保たれておらず、個別政策の先進性が後退したものも多いと言えます。
マニフェストの「策定手続き」について言えば、自民党はマニフェスの作成が遅れ、また麻生首相の登場が極めて限定的で、マニフェストの実現を誰が責任を持つのかわかりにくい構造となっています。民主党については鳩山代表が掲げる「友愛主義」がマニフェストの骨格になっていません。また、マニフェストで書かれた内容が後から次々に変更になるなど、党内の政策決定プロセスの脆弱さが露呈しました。
詳細な評価結果および言論NPOの評価基準は、8月10日よりオープンしたマニフェスト評価専門サイト「未来選択」にてご覧になれます。
専門サイトでは、2005年の小泉政権以降の自公政権の実績評価結果も、あわせて公表しています。また、今回の評価結果について、言論NPO代表の工藤泰志が発言していますので、こちらもご覧ください。
言論NPOではこの結果をもとに投票日までの間、アンケートや座談会などを行う予定もあります。また、ウェブサイト上では言論NPOの評価に対する意見を募集していますので、ぜひ皆さんの声をお聞かせください。
言論NPOは8月9日、21世紀臨調主催の「政権公約検証大会」にて、自民党と民主党のマニフェストの評価結果を公表しました。