【インタビュー】横浜市長選に見る「惰性的な組織決定」の構図 ―政党の役割を問い直す―

2002年5月15日

nakada_h020425.jpg中田宏 (横浜市長)
なかだ・ひろし

1964年生まれ。青山学院大学経済学部卒業。92年、日本新党旗揚げに参画。参議院秘書、党報道室長を経て、93年衆議院議員に初当選。2002年、横浜市長選挙に無所属で立候補、当選。4月8日、横浜市長に就任。主な著書は「国会の掟」、「行革のレシピ―日本の料理法NZ風 」等。

インタビュアー:
sone_y020425.jpg曽根泰教 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
そね・やすのり

1948年生まれ。慶應義塾大学大学院法学部政治学科博士課程修了。98年から99年ハーバード大学国際問題研究所客員研究員を経て現職。著書に『決定の政治経済学』)、『この政治空白の時代』共著等。

概要

3月末に行われた横浜市長選では、元衆議院議員で無所属の中田宏氏が、現職で4選を狙う高秀秀信氏を破り当選した。与党3党と社民党が相乗りした現職候補が、無所属候補に敗れたことは、既存政党の存在意義を改めて問う結果となった。政党はもはやその役割を終えたのか。そうでないとすれば、政党の役割をどこに見いだすべきなのか。国家レベルと地方レベルという2つの視点から激しい議論が交わされた。

要約

与党3党と社民党が相乗りした現職候補が、無所属候補に敗れた今回の横浜市長選挙。企業、労働組合、政党といった組織票を中心とした高秀氏と、自発的な動機をもつ個人をバックにした中田氏の戦いは、「惰性的な組織決定」に「自発的な市民パワー」が勝るという構図となった。その背景には国と地方の制度の違いが存在し、国と地方の「ダブルスタンダード(二重基準)」が見え隠れする。

必然的に与党と野党が発生する国政の場に対し、地方政治には大統領型の首長・議員の選び方があり、そこで政党が有権者に対してしっかりと選択肢を示せていないことが、結果として無党派層を台頭を許し、自らの存在意義を見えなくしている。政策・公約に無関係な「多選」「相乗り」の問題も同様に、政党政治システムの問題ではなく、政治家、ひいては政党が役割を果たしていないことが、有権者を「結果として無党派」となった中田氏に向かわせたのではないかと分析する。

他方、国家に話を移すと、会派を組んでいた民主党について、政権すなわち権力を守る側の執念深さに対し、本質的に政権を取るための執念深さが足りないと指摘する。現在の自民党のあり方に迎合しない政策を出し続ける姿勢を貫くことが、国民に分かってもらえるチャンスにつながるのではないか。また政権をとるという意味では、自民党体制に疑問をもつ保守層を自然な形で取り込む必要がある。「小泉降ろし」ではなく、国民の人気を集める小泉首相に、野党も肩入れして徹底的に自民党を壊してもらうぐらいのしたたかさが必要だと主張する。

戦後長らく続いてきた自民党支配の旧弊は、とりわけ地方に根強く残っている。自民党的メカニズムの中で、一緒になって恩恵を被っている野党の議員たちさえいる始末だ。今後は「自民党そのものを破壊するだけではなく、自民党的メカニズム、あるいは自民党的体質を壊していくことが必要だ」と、曽根・中田両氏は口を揃える。


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 3月末に行われた横浜市長選では、元衆議院議員で無所属の中田宏氏が、現職で4選を狙う高秀秀信氏を破り当選した。与党3党と社民党が相乗りした現職候補が、無所属候補に敗れたことは、既存政党の存在意義を改めて問う結果となった。政党はもはやその役割を終えたのか。