【論文】日本の改革に誰が関心を持つのか?

2003年1月04日

ジリアン・テット (元フィナンシャル・タイムズ東京支局長)
Dr. Gillian Tett

ケンブリッジ大学にて社会人類学博士号取得。1992 年からロシア、中央アジア、バルト3 国にてフリージャーナリストとして活動。93 年よりフィナンシャル・タイムズ海外レポーター。ロンドン本社を経て、97 年より東京支局長を務める。現在、フィナンシャル・タイムズを休職し、日本の改革努力に関する本を執筆中。この本は来年ハーパー・コリンズ社から出版される予定。

概要

日本では小泉首相の支持の下、竹中経済財政金融担当大臣が銀行問題に取り組む改革路線を打ち出した。痛みを伴う手術の段階に、国内では議論は高まっているが、海外では政策当事者を中心にその改革の行方に懐疑的で関心のレベルも下がってきているといわれる。むしろ日本は改革もできず緩慢な衰退に向かうという見方まであるという。なぜ、日本の改革に世界は関心を失い始めたのか。フィナンシャルタイムズ元東京支局長のジリアン・テット氏が寄稿した。

要約

小泉首相の支持の下、竹中担当大臣が銀行問題に取り組む新たな改革政策を打ち出した以上、日本政府が改革路線に戻る可能性がないわけではない。だが、現在の残酷な現実は、世界の政策立案者が日本政府に対する敬意を失っており、関心のレベルも下がっていることである。公式的には、G7各国は引き続き日本に改革を求めている。しかしながら、10年間に及んで日本がその政策で国際社会の失望を招いてきたため、日本経済に対する疑念は今後数年間にわたって引き続き大きくなる可能性がある。関心が低くなっている要因は幾つかあるが、海外の政策当事者は日本で銀行危機が発生した場合でもその国際的な影響は低く、世界の金融システムからの日本の退場は管理可能だと考えている。このような平静さの「悪い」側面は日本国内で改革の緊急性に対する感覚を低下させていることである。事実、日本がこの10年間繰り返しその政策面で他国に失望を与えてきたのを受け、ほとんどの日本観察者は日本政府がその政策公約に従って行動できないとみなす傾向にある。このような傾向の変化は欧州や米国の外交当局者が表立って認めないものである。だが、多くの海外の政策立案者が議論している中心的なシナリオは日本が緩慢な経済的後退の中で身動きできず留まったままであるというものである。米国の日本観察者の一部はこの「緩慢な経済的後退」シナリオが米国にほとんど危険を与えないと考えている。このような事態は少なくとも外圧を言い訳にしてのみ伝統的に改革を行ってきた国にとって危機的な状況である。日本政府が真剣な改革を実行するためには国内で原動力を見出せない限り、こうした皮相的な見方が強くなるだけの可能性が高い。竹中大臣がこの傾向を逆転させることができると期待するのはすばらしいことである。今回は最終的に一部の実効ある銀行改革を実施している可能性はあるが、IMFが2003 年9月に開く次回の政策会議までに、小泉首相の改革チームは国際的な期待を再び裏切っているだろう。


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 日本では小泉首相の支持の下、竹中経済財政金融担当大臣が銀行問題に取り組む改革路線を打ち出した。痛みを伴う手術の段階に、国内では議論は高まっているが、海外では政策当事者を中心にその改革の行方に懐疑的で関心のレベルも下がってきているといわれる。