穂坂邦夫(前志木市長、地方自立政策研究所代表 )
ほさか・くにお
1941年埼玉県生まれ。埼玉大学経済短期大学部卒業。埼玉県職員、足立町(現志木市)職員を経て、志木市議会議長、埼玉県議会議長を歴任。2001年7月、志木市長に就任。2005年7月から地方自立政策研究所代表
「構造的な依存体質から抜け出せるか」
私は地方行政に30年間ほど向かい合ってきました。その経験と100回を超える地方の講演を通じて、一部の強い自治体を除き地方の自立が曲り角にきていることを痛感しています。
経済産業省が行った全国269都市圏の2030年の経済状況予測が、ある雑誌にすっぱ抜かれていましたが、そこでは、35都市圏以外はガタガタで、ほとんどの地方商店街がシャッター通りになりかねないという結論が出ていました。
地方は25~30年にわたって農業も漁業も地場産業も捨て、全て公共事業に頼るという体質にどっぷりつかってしまっています。そして、この5年の急激な変化の中で企業の倒産も急増しています。埼玉県でさえ、債務の額は低くなっていますが、倒産件数としては増えています。2005年も前年に比べて増えました。その一番は建設業です。
地方をそういう体質にしておいて、放っておいたものだから、これからどうやっていくか、出口も方向性も見つけ出していません。
私は今が過渡期だと思っています。仙台などでは建設業の人が他業種に動くなどの気配もありますが、全体的には大部分がまだ依存体質で、いよいよ自分たちで変えなければいけないというのが、これからの4、5年です。その中でも、国の手から離れて自立ということを、一部の若い人たちなどは考え始めています。今の地方経済の下り傾向が続いて、国はもうアテにならないということになれば、公共事業への依存体質も変わっていくでしょう。しかし、それまでは地方の疲弊はどんどん続いていくでしょう。
地方は「国土の均衡ある発展」を信じて中央への依存でずっとやってきました。特に小渕総理があれだけ公共事業を広げたことで、地方の産業構造の中で収益をあげているのは公共事業関連のみで、他の産業は収益をあげるだけの力がありません。
地方の自立を不可能にしたのは、公共事業への依存体質を作り上げたことと中央集権的な政策など、もろもろ絡み合って、産業は土木・建設を主体にすれば生き残れると、皆が錯覚したということだと思います。
しかもそれが構造化されているために、地方の人はこれまで気づきませんでした。しかし、国の方が公共事業を切ってきたので、地方はどうすればいいのか、悩み抜いている状態です。
問題は、何か生産性をあげるものを地方が作り出せるかどうかです。しかし、地方の中央に対する依存体質が消えなければ、新しい可能性は広がりません。それは行政も同じです。地方に行けば行くほど、自治体の国に対する依存体質が大変強い。加えて、行政自身が厳しい危機感をまだ持っていない状態です。
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私は地方行政に30年間ほど向かい合ってきました。その経験と100回を超える地方の講演を通じて、一部の強い自治体を除き地方の自立が曲り角にきていることを痛感しています。経済産業省が行った全国269都市圏の2030年の経済状況予測が、ある雑誌にすっぱ抜かれていましたが、