【国と地方】 穂坂邦夫氏 第6話:「地方へのお金を減らす―自立の近道」

2006年5月30日

穂坂邦夫氏穂坂邦夫(前志木市長、地方自立政策研究所代表 )
ほさか・くにお
profile
1941年埼玉県生まれ。埼玉大学経済短期大学部卒業。埼玉県職員、足立町(現志木市)職員を経て、志木市議会議長、埼玉県議会議長を歴任。2001年7月、志木市長に就任。2005年7月から地方自立政策研究所代表

「地方へのお金を減らすー自立の近道」

 地方の自立のために手っ取り早く、最も効果があるのは逆説的ではありますが、地方のお金を減らすことです。市長に1500万円、助役に1300万払ったりしている。市長会でも町村長会でも議長会でも、東京で会議があれば皆さん、公用車で、秘書を連れてきています。

 地方にはお金があるのです。お金を減らすためには、交付税を減らすことです。制度は複雑に絡み合ってなかなか動かせないとすれば、それが最も早い。

 国にお金がないのですから、今後は基幹五税しか出せませんと言うべきです。上乗せや借り入れも止める。交付税特別会計は53兆円も借金していますが、いつか返すべきです。

 お金があり余っているときは、お互いに人の金だし、住民は黙っているから、適当にやっていても構わないじゃないかということになる。しかし、お金がなくなれば本当に考えなければならなくなる。社会福祉や教育など、お金がかかるところには金をかけて、無駄なところは思い切って止めなくてはならなくなる。

 交付税は今の基幹五税の範囲で配分するが、それ以外は自分たちの努力で行う。そのときに、住民が監視する仕組みさえあれば、変なことをやっていたら、その首長は選挙に落ちることになる。こういう形に持っていかなくてはならないと思います。

 ですから、税源移譲はどんどん進めるべきなのです。なぜ自分たちの所は地方税がこんなに高いのにサービスはダメなのか、無駄があるのかという声が出るようにする。

 つまり、地方交付税を減らすことでもしなければ、地方の今の依存体質、今の無駄はなかなか減らないのです。もちろん、交付税の算定の仕方も変えなければなりません。

 住民の規自律に向けて改革を進めるのであれば、そのカンフル剤はやはり、お金がなくなることだと思います。総務省は依然として充分な交付額を求めているようですが、地方を守りたいという気持ちなのでしょう。それは農業と同じです。守りたい、大事にしたいと言っている間に、後継者がいなくなってしまった。そうなってしまうのです。結局、ずるずる疲弊し衰退していく。かえって「情けが仇」となっている。もっと自立できるように、早く訓練を始めなければならない。

 しかも、今が絶好のチャンスだと思っています。2007年には住民税の倍増が効いてくる。そうなると、住民にとっても、これはたまらないということになり、初めて危機感がお互いに共有できるからです。

 地方の自立と言いますが、自発的な自立というのは難しいというのが現実でしょう。地方だけが悪いのではなく、地方をそのように育ててしまった制度もいけない。

 だからといって、今検討されている地方の破綻法制は、脅かしだけで、現状のままではできないと思っています。本当にやるには、国と地方との役割分担もきちんとしなければならないし、今までの債務処理もしなくてはならない。地方税のあり方も考えなければならない。
 お金を借りるといっても、小さな村などはとてもお金など借りられない。まず全体の構造改革をやってから、破綻法制を作らなければならない。つまみ食いだけで破綻法制というわけにはいきません。

 それよりも、お金がなくなればみんなで考えるようになります。国もお金がない以上、その痛みを国と地方がお互いに分かち合い、従属関係から水平的関係に持っていくことが必要です。そして、地域は地域毎に創造性を発揮し、独自の個性を出してがんばってくれということになれば、皆さん納得するでしょう。お金がないのですから。


※第7話は6/1(木)に掲載します。

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 地方の自立のために手っ取り早く、最も効果があるのは逆説的ではありますが、地方のお金を減らすことです。市長に1500万円、助役に1300万払ったりしている。市長会でも町村長会でも議長会でも、東京で会議があれば皆さん、公用車で、秘書を連れてきています。