【国と地方】 穂坂邦夫氏 第7話:「住民は行政のオーナーのはず」

2006年6月01日

穂坂邦夫氏穂坂邦夫(前志木市長、地方自立政策研究所代表 )
ほさか・くにお
profile
1941年埼玉県生まれ。埼玉大学経済短期大学部卒業。埼玉県職員、足立町(現志木市)職員を経て、志木市議会議長、埼玉県議会議長を歴任。2001年7月、志木市長に就任。2005年7月から地方自立政策研究所代表

「住民は行政のオーナーのはず」

 地方の改革のもう一つの難しさは、1,820の市町村の全てに議会があり、制度を変えるのは全て議会の専管事項だということです。そして、議会は大変保守的です。

 私もかつては埼玉県議会で議長をしていました。「要請受付型」、「超保守型」というのが議会の特徴です。例えば、新しい県の施策が新聞にすっぱ抜かれれば、大変です。議会を開かない、議員の頭ごなしに新しい施策や事業をマスコミに言うとは何事か、議員にまず了解を求め、よろしいと言ったらやるというのが当然ではないか、議会を軽視しているのか、ということになってしまう。

 首長と議会では、最後には議会が強いのです。駄目と言って否決すれば、それでいいわけですから。地方税の税率を上げるという案などは議会は出せませんし、首長が提案をしても、議会がノーと言えばそれで終わりです。議会は要請受付型であり、執行権を持っていませんから、住民の痛みに通じる提案には、いやだと言えば住民は拍手してくれます。

 ですから、どうしても行政が肥大化する傾向になるのです。議員は、住民からあれをやってくれ、これをやってくれと要請を受けるケースが多いのです。それを執行部に伝えるわけです。極端な言い方ですが仮に首長が出来ないと言うと、「だったら好きなようにやればいいじゃないか、議案は全部通さないから」となる。ですから、業界用語で「顔を立てる」ということが盛んに行われる。
 こうした地方の議会というもののあり方も、十分に考える必要がありますし、こうした状況をつくってしまう住民側にも問題があるのです。

 住民の意識というのはなかなか変わらないものです。日本では民主主義は闘い取ったものではなく、なんとなく来たものです。住民の皆さんは行政に対して無関心で、選挙で一票を入れるのが民主主義の行使だと思ってしまった。ですから、監視機能を放棄して、選挙に行くことだけが仕事だと思っています。
 しかし、住民は税金を負担しています。本当は自治体に出資しているオーナーなのです。


※第8話は6/3(土)に掲載します。

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 地方の改革のもう一つの難しさは、1,820の市町村の全てに議会があり、制度を変えるのは全て議会の専管事項だということです。そして、議会は大変保守的です。私もかつては埼玉県議会で議長をしていました。「要請受付型」、「超保守型」というのが議会の特徴です。例えば、