「第8回言論NPOフォーラム」参加者からのご意見・ご質問の回答 page2 ―穂坂邦夫氏への質問&回答―

2004年11月09日

hosak_k030423.jpg穂坂邦夫 (埼玉県志木市長)
ほさか・くにお

1941年生まれ。71年埼玉大学経済短期大学部卒業。埼玉県職員、足立町(現志木市)職員を経て、志木市議会議員、埼玉県議会議員を勤めた後、2001 年より現職。第8代志木市議会議長、第99代埼玉県議会議長を勤め、現在、志木市体育館協会会長に在任中。77年学校法人医学アカデミーを設立、理事長に就任。81年「医療法人瑞穂会城南中央病院」を設立、会長に就任。現在は、老人保健施設「瑞穂の里」や訪問看護ステーション「みずほ」を併設している。

言論NPOは、2004年10月13日、東京都内で第8回目のフォーラムとして、「ローカル・マニフェストと地方の自立」というテーマを選び、新しい政治の仕組み、とくに地方から政治を変える動きをつくりだすことをめざすにはどうしたらいいか、という点に関して、それぞれの分野で先見性をもって行動されている3人のゲストスピーカーをお招きし、議論しました。

フォーラム自体の報告は、既にホームページ上に掲載されており、ご覧いただければと思いますが、今回は、その議論の詳細を再録しました。

「第8回 言論NPOフォーラム」報告はこちら
「第8回 言論NPOフォーラム」議事録

■穂坂氏への質問&回答

Q1:私は現在大学院で学んでいて首都圏の自治体職員の方と学ぶ機会が多いのですが、皆さん優秀であると同時に、中央省庁の役人を小さくしたような感覚の人もたまにいらっしゃいます。地方の県職員や市町村職員の方が分権については熱いのかな、と思うこともあります。 志木市の職員の方にはどのように分権の理念などを訴えていらっしゃいますか?
A1: (1) 職員20人と市長が質問方式の「市長ウイークリー講座:1回2時間(全職員)」や「市長講演」などを通じて分権の理念を訴えている。 (2) 内容 1] 地方自治体の運営は、制度疲労が顕在化しており、社会環境と経済環境の激変にもかかわらず、抜本的な改革は行われず、護送船団方式を続けた結果、国にも地方にも巨大の財政赤字と住民との乖離を生んでいる。 2] 地方分権を確立(主権)するためには、日本における三層構造(国と都道府県と市町村)の権能と役割を明確にすべきである。役割が不明確のまま財政面からの三位一体改革は、明らかに手順がちがう。しかし、分権への道を進めるためには、国の状況からして、知事会を中心とした国庫補助負担金の削減案の提出は、地方にとってやむを得ない選択である。 3] 国の基盤は地域力の結集であり、国家を支える基礎的自治体は、国よりも重い責務があり、職員はプライドと責任を持つこと。


Q2:「ローカルパーティ」の概念には正直目から鱗が落ちる思いがしましたが、一方で地方選挙においては「共産党 vs. others(各党相乗り)」や「無投票当選」のケースが多く。「対立軸」自体が選挙民にはなかったのであり「有権者の無関心」を助長してきたのではないかと思っております。
そこで、「ローカルパーティ」の生まれる要件、条件についてどう思われるか?(有権者の関心を高めるきっかけ)について、ご意見をいただければと思います。
A2:
(1) 地方行政は、国の持つ権能と大きく異なっており、日本的な政治イデオロギーは必要としない。
(2) ローカルパーティーの生まれる条件は、マニフェストよりも、むしろ市町村レベルにおける「メイヤー制度」から諸外国で普遍的な「シティマネージャー制度」の導入によるものと考えている。
(3) 有権者の無関心は、無投票や相乗りよりも地方に対する国の規制と地方自身の思考停止により、個性の喪失と全国一律的な行政サービスの展開により、魅力がないことが大きな原因である。


Q3:議会とマニフェストについて
仮にシティ・マネージャー制度が採用された場合、議会がマニフェストを作成することになるのでしょうか。
A3:
(1) シティマネージャー制度が採用されるとローカルパーティーを誕生せざるを得ない。理由は、それぞれのパーティーがマニフェストを作成し、選挙に望まなければならない。
(2) 本格的なマニフェストを作成するためには、歳入と歳出のバランスをとらざるを得ない。地方自治体における歳入は、手段が限られているところから、住民から様々な要望を受ける議員がマニフェストを作成することは困難である。


Q4:次期総選挙において消費税5%から8%(or10%)を自民党あるいは民主党は明確にマニフェストに書くべきだと思いますが、書いた場合議席は大幅に減らす結果になるでしょうか?
A4:
(1) 年金の実態や社会保障費の伸びを考えると、本来的には、最低でも10%に近いアップにならざるを得ない。
(2) 10%は、現行の2倍であり、マスコミや国民に解りやすい提示理由があった場合、民主党にとっては、大幅に減らす結果にならない。しかし、増税に違いはなく、大勝することは、むずかしいと考えている。
(3) 政権政党である自民党は、数々の多様なスキャンダルとムダ使いが指摘されており、民主党を越えて消費税のアップを発言したり、アップ幅を大きくしたときは、議席を大幅に減らす結果になる。自民党は「様子ながめ」となるのではないか。


Q5:「マニフェスト」を日本語で表現するとどのようになりますか?(一文字から四文字ほどで。海外の自治・民主主義に輸出出来るような言語が必要と考えるため)
A5:
(1) 政治公約
(2) 政党公約
(3) 住民への約束


Q6:マニフェスト・サイクルは民主主義に律動を与えるので、こうした動きが地方から出来たことは評価。ただ現状全国的に市民レベルでマニフェストという考え方が定着したとは言えない。どうすれば定着するか。
例えば(現状の問題点、制約)
・公約と何が違うのか(マニフェストもpopulismに引っ張られれば従来と変わらない)
・理念の裏打ちがない
・市民との対話が不十分
・マニフェストに記述のレベルのバラツキ(形骸化、具体性に欠ける)
・財源的裏付けの制約から地域特性が出しにくい
・マニフェストの実行期限が不明
・マニフェスト・採掘が一巡していない(成功体験がない)
・第三者による検証基準が不明
A6:
(1)定着させるマニフェストの内容(住民の関心と理解)
1] 理念と政策項目の一致
2] 政策項目と財源の一致
3] 実施プログラムと実施期限の明示

(2)定着させる活動
1] マニフェストを評価する公平な市民団体の育成と啓蒙活動
2] 市民団体による「表示形式」の統一


Q7: 県・市町村の二重行政は効率が悪そうだが、現在の形を前提に考えられる。
税金を上げるという公約と、出費を減らすという公約はPrivateからみると全く。
経済財政諮問会議で「市場化テスト」が議論されているが、県・市町村レベルで「市場化テストをまわせるサービス施策はたくさんあるのか知りたい。
1)制度的なバリア 2)住民ニーズとの乖離 があれば、あわせて教えて欲しい。
税金や社会保障費を使う人はやめて欲しい。もう贅沢な時代は終わっている。
A7:
(1) 都道府県と市町村の二重行政は、抜本的に改革すべきで、財政の効率化に大きいウエートを持っている。
(2) 市場化テスト(志木市の行政パートナー)の対象となる行政業務は50%~90%と考える。差異は「プライバシーの保護」に対する担保方策と考える。
(3) 最大の制度的バリアは、公務員の終身雇用制と硬直化した勤務形態並びに民間導入を制約する諸法令。
(4)住民ニーズとの乖離
1] 社会環境の激変に直結する生活実感による住民の意識変化を政治的、行政的に捉える行政や議員の努力不足と対応の遅れ
2] 首長も議員も選挙によって、権限のすべてを住民から負託を受けているという錯覚


Q8:首長の任期は4年です。わずか4年の中で成果を出し評価されるならば、マニフェストはかなり実現性の高いものになってしまうのではないでしょうか。逆にいうと、地域の大志を描くような政治という必要はないということにならないでしょうか。また、4年で実行することを拙速に進めようとするあまり、行政も含め無用な混乱をまねくことはないでしょうか。(具体的には、今、某県ではアンテナショップを作ろうとしています。(これはマニフェストに書いてあります)そのため当選後の予算にいきなり2億円の予算をつけたそうです。本来施設をつくるならば、その内容や経営など含め相当時間をかけるべきでしょう。)
A8:
(1) 大県であっても小さな基礎的自治体であっても「非営利独占的サービス事業体+特殊性(社会的弱者や少数意見に配慮)」であり、任期4年で成果を出すことが原則である。
(2) 実施した政策や事業については、第三者による1年間毎の「成果検証」を行い、公表することが必要である。
(3) 地域の大志(行政の基本理念や将来の地域目標)であっても、4年間で一定の定着を図ることを目標とし、期限としなければならない。4年間で出来ないのであれば、4年任期の行政に参加すべきではない。
なお、志木市の25人学級の成果を例にとった場合、その成果が教育効果として明確に実証するには、長い期間を要するが、一定の成果は1年毎に検証することが出来る。

 言論NPOは、2004年10月13日、東京都内で第8回目のフォーラムとして、「ローカル・マニフェストと地方の自立」というテーマを選び、新しい政治の仕組み、とくに地方から政治を変える動きをつくりだすことをめざすにはどうしたらいいか、という点に関して、それぞれの分野で先見性を