「第8回言論NPOフォーラム」参加者からのご意見・ご質問の回答 page3 ―北川正恭氏への質問&回答

2004年11月09日

kitagawa_m040616.jpg北川正恭 (早稲田大学大学院教授、21世紀臨調共同代表)
きたがわ・まさやす

1944年生まれ。67年早稲田大学第一商学部卒業。三重県議会議員を経て、83年衆議院議員初当選。90年に文部政務次官を務める。95年より三重県知事。ゼロベースで事業を評価し改善を進める「事務事業評価システム」の導入や、総合計画「三重のくにづくり宣言」を策定・推進。2003年4 月、知事退任。

言論NPOは、2004年10月13日、東京都内で第8回目のフォーラムとして、「ローカル・マニフェストと地方の自立」というテーマを選び、新しい政治の仕組み、とくに地方から政治を変える動きをつくりだすことをめざすにはどうしたらいいか、という点に関して、それぞれの分野で先見性をもって行動されている3人のゲストスピーカーをお招きし、議論しました。

フォーラム自体の報告は、既にホームページ上に掲載されており、ご覧いただければと思いますが、今回は、その議論の詳細を再録しました。

「第8回 言論NPOフォーラム」報告はこちら
「第8回 言論NPOフォーラム」議事録

■北川氏への質問&回答

Q1:文化ソフトパワーなどコミットメントが数値化しにくいマニフェストの評価は、どう行うのか。
A1: 定量化して評価しにくいものは、長いスパーンで考える必要性を説明して、その中で期限内に何をするかを最大限数値化していくことが求められる。今まではこの様な努力が殆どなかったことが問題で、マニフェストを議論することにより、この様な質問が出てきて、政治、行政の政策の立案、作成、検証のあり方が向上していく。マニフェストは気づきの道具であり、学習組織・進化する組織に政治・行政組織をかえていく道具でもある。


Q2:国と地方の三位一体改革について、全体プログラムをマニフェスト的にまとめるよう、国に求める必要があると思うのですがいかがですか?
A2:
全くその通りである。今までは理不尽な押しつけでも長いものにはまかれろ主義が中央集権体制ではまかり通っていた。上下主従から対等協力に制度的にはなった今こそ、国に求めていくことは当然のことである。


Q3:「ローカルパーティ」の概念には正直目から鱗が落ちる思いがしましたが、一方で地方選挙においては「共産党 vs. others(各党相乗り)」や「無投票当選」のケースが多く。「対立軸」自体が選挙民にはなかったのであり「有権者の無関心」を助長してきたのではないかと思っております。
そこで、「ローカルパーティ」の生まれる要件、条件についてどう思われるか?(有権者の関心を高めるきっかけ)について、ご意見をいただければと思います。
A3:
ローカル・マニフェストを首長サイドが書くと、それは有権者と直接の契約を結ぶことになるから、議会のレゾンデートルが問われることになる。従来は機関委任事務が県で7~8割、市町村で3~4割あり、それは殆ど議会はスルーであった。この様な中央集権体制下では、首長サイドと議会サイドが協調して国に陳情することが大半の仕事になって、激しく対立することは少なかった。自立型の地方政府をつくることが制度化されつつある今日、議会のあり方が厳しく問われることになる。当然のことであり、今まで地方に政府はなかったに等しいことを理解の上、執行部と議会が自治を確立する必要がある。


Q4:改革期における良いマニフェストと平時のマニフェストは違うのではないか?
例えば、レベルの低いマニフェストをきっちりと守って実行する首長と、マニフェストを改革のツール、触媒と考え、あえて構造問題をあぶり出す道具につかう首長の両方が出てくると思う。その時、前者をほめて後者を批判するマスコミや大衆の心理がある。改革者の孤独といってもよいが、これをどう支持すべきか?
A4:
地方自治体は今まで中央集権体制下では財源が国に握られているから、期限、財源、数値のついた約束(マニフェスト)など出来なかった。即ち、国の下部機関にすぎなかったのである。良悪のマニフェストの比較等の質問が出ることが改革の第一歩であり、自立の第一歩である。後者の様な首長を有権者が選択する能力を有し、それを運動していく努力が求められる。


Q5:次期総選挙において消費税5%から8%(or10%)を自民党あるいは民主党は明確にマニフェストに書くべきだと思いますが、書いた場合議席は大幅に減らす結果になるでしょうか?
A5:
明確に書くべきであり、書いた場合、議席は増えると確信します。(丁寧な説明と本気で実行する決意とそれを現実の政策に落とし込む手法を見せて、公開のもとに断行すれば)


Q6:「マニフェスト」を日本語で表現するとどのようになりますか?(一文字から四文字ほどで。海外の自治・民主主義に輸出出来るような言語が必要と考えるため)
A6:
政権公約が今一番一般的です。日本語にするには新しい考え方ですから、適当な言葉がありません。ないのが当然で言葉をうみ出して育てていく努力こそが必要です。


Q7:「マニフェスト・サイクルは民主主義に律動を与えるので、こうした動きが地方から出来たことは評価。ただ現状全国的に市民レベルでマニフェストという考え方が定着したとは言えない。どうすれば定着するか。

例えば(現状の問題点、制約)

・公約と何が違うのか(マニフェストもpopulismに引っ張られれば従来と変わらない)

・理念の裏打ちがない

・市民との対話が不十分

・マニフェストに記述のレベルのバラツキ(形骸化、具体性に欠ける)

・財源的裏付けの制約から地域特性が出しにくい

・マニフェストの実行期限が不明

・マニフェスト・採掘が一巡していない(成功体験がない)

・ 第三者による検証基準が不明
A7:
日本の民主主義の中で最も遅れている部分はby the people(国民による)ではないだろうか。白紙一任でおまかせ政治が今日の700兆円の借金国家にした最大のものではないか。首長選挙(現在では特に来年の合併による市町村長選挙)をマニフェスト型選挙にする運動をいろんな運動体と連携してひとつづつ成功に導いていくことが重要だと思う。


Q8:首長の任期は4年です。わずか4年の中で成果を出し評価されるならば、マニフェストはかなり実現性の高いものになってしまうのではないでしょうか。逆にいうと、地域の大志を描くような政治という必要はないということにならないでしょうか。また、4年で実行することを拙速に進めようとするあまり、行政も含め無用な混乱をまねくことはないでしょうか。(具体的には、今、某県ではアンテナショップを作ろうとしています。(これはマニフェストに書いてあります)そのため当選後の予算にいきなり2億円の予算をつけたそうです。本来施設をつくるならば、その内容や経営など含め相当時間をかけるべきでしょう。)
A8:
今までは地域の大志はもとより、具体の政策もバラマキ型で、有権者に直接約束する公約が存在していない状態でなかったか。この様な問題提起が起こることが素晴らしいことで、マニフェストの質が問われることで向上し、民意が反映する選挙になっていきます。試行錯誤でバージョンがアップする様、共に頑張りましょう。

 言論NPOは、2004年10月13日、東京都内で第8回目のフォーラムとして、「ローカル・マニフェストと地方の自立」というテーマを選び、新しい政治の仕組み、とくに地方から政治を変える動きをつくりだすことをめざすにはどうしたらいいか、という点に関して、それぞれの分野で先見性を