政治に向かいあう言論

「日本の知事に何が問われているのか」/北海道知事 高橋はるみ氏

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camp4_hokkaido.jpg高橋はるみ(北海道知事)
たかはし・はるみ
1954年生まれ。76年一橋大学経済学部卒業後、通商産業省に入省。大西洋国際問題研究所(在パリ)研究員、中小企業庁長官官房調査課長、通商産業省貿易局輸入課長、中小企業庁経営支援部経営支援課長、北海道経済産業局長、経済産業研修所所長を歴任し、03年に北海道知事に就任(現在2期目)。「未来に向けて夢と希望が持続する北海道づくり」を提言し、経済構造改革の推進、地域主権の確立などを進め、道州制特区構想の実現に向けて先進的に取り組んでいる。

第3話 根強い官依存意識から脱することはできるか

北海道経済の自立に向けての見通しですが、問題は、大きく分けて2つあると思います。

1つは道民意識の問題です。北海道は極めて官依存意識が強い所です。これは、他の地域でも公共事業依存度の高い経済構造を持っている山陰などでも指摘されるところです。北海道の経済における公共事業依存度の高さは全国第10位ぐらいですから、それより上のところは皆、似たようなことがあると思います。

要するに、公共事業というものは、仕事がよそからやってくるわけですから、企業努力をして受注先を確保しようとすることなく仕事がくる。北海道の開拓の歴史に鑑みても、明治以来の短期間のうちに他の地域に比べ急速に開発が進んだだけに、いろいろな仕事がきたわけです。戦後も、北海道開発庁を中心に国策として開発が進んでいくうちに、官依存の住民意識はもう身体にしみついてきた。それについて私は責める訳ではありませんが、現にそうなのだということが1つ目です。

もう一つは、そのようなことで経済が動いてきたが故に、経済産業構造の上での弱点があるということです。まず、建設業のウエートが高い。建設業の需要構造を見ると、官公需と民需が日本国全体では半々ぐらい、あるいは民需の方が強いと思うのですが、北海道の建設業の需要構造では官公需が圧倒的に強い。そうした中で、今、公共事業がどんどん削減ですから、これはもうどう頑張っても厳しい。

しかしながら、私はこの北海道には潜在力があると思うから知事に立候補したわけです。これから中長期的に日本あるいは世界にとって重要になってくる水、環境、エネルギー、食料のすべてにおいて、北海道は国内のどの地域よりも優位性があります。最終的には日本国一の地域になる、そうするという固い決意と信念があるからこそ、知事としてやっていられるのです。時間がどのぐらいかかるかという問題はありますが、そういうビジョンを持って、今、一生懸命取り組んでいます。

地域経済の自立に向けて、いま欠けているところをいかに少しずつ補正していくかということに取り組んでいます。経済産業の分野ではものづくりです。製造業の部分を少しでも大きくするという努力をこの4年間、こつこつとやってきました。その一番の近道は、やはり企業誘致です。

もともと北海道は自動車産業とは縁があって、冬場のテストコースはメーカー全社が北海道に持っています。苫東エリアが重要港湾、そして日本一の地方空港の千歳空港を抱えています。千歳-羽田間は世界一の路線です。そうしたロケーションのある苫小牧エリアは、まずはものづくりの拠点とするにふさわしい地域だと思います。

ものづくりの企業誘致は雇用改善に直結します。ただ、そうした企業としっかり取引できる地場の企業がない限りは、そこまでにとどまってしまう。ですから、これと並行して、地場の技術力や経営力を育てていこうということを、私は繰り返して言っています。

技術力はあると自負しているのですが、やはり向上心や頑張ろうという気持ち、どんなところの企業とも伍して取引ができるという、意識改革のようなことが必要だと思います。4年間の取り組みで、少しずつ芽が出てきました。水、環境等々の優位な要件がありますから、北海道における加工組立型のものづくりは優位性をこれから発揮していくでしょう。

第1次産業についても、農業、水産業が日本一ですから、これをベースとした加工業、食品加工分野も日本一にしたい。従来、北海道は加工度合いが低く、原料がよいので、そのまま外へ売ってしまうところがありますが、これからは加工度を高めていく。

さらに、食と観光を基幹産業としていきたい。食は農水産と相通ずるところですが、それをうまく観光と結び付けて、一流の基幹産業にしていきたい。観光は波及効果が大きいですから、その意味では来年の北海道洞爺湖サミットはプラスに働くだろうと思います。名前が売れるので、来てみようという人が国内外で増えてくるでしょう。これを契機として、しっかり観光産業を北海道のものにしていかなければならないと思います。

観光分野では平成17年度に外国人観光客が51万人と前年比20%も増えました。しかし、観光を含め、産業分野ごとの目標付加価値、GDP額を描くところにまで行っていないのが現状です。例えば自動車産業で何万台ということは、九州の場合には、そもそもアセンブリーラインの工場があるからこそできることで、北海道はまだそこまで行っていません。今ある産業の現状を踏まえて、例えば観光客などには定量目標を掲げていますが、まずはそれを達成し、その上で他の地域が持っているような定量的な経済目標を掲げた展開に至りたい。

ただ、数字をつくることに満足するだけでは意味がありません。せっかくここまで4年間地道にやってきて少しずつ方向性が出てきましたので、これをもう少し続けた上で、次のステップとしての、極めてチャレンジングな数値目標化をした、さらなる産業経済政策というものにしていきたいと考えています。経済産業省での30年間の蓄積を生かしながら、そこまで行きたいと思っています。

現実には、ジャンプして理想型まで到達することはあり得ない。地方分権もそうですが、一歩一歩着実にやっていくということです。また新たに4年間のゆとりをいただいたので、これから4年間しっかりやろうと思います。

全5話はこちらから

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