「議論の力」で強い民主主義をつくり出す
道州制という場合には、これは全国が道州制になることが前提ですが、まずは、国と広域自治体たる道州がどういう役割分担をするかというのが基本論です。これについては、地方制度調査会や全国知事会の議論もありますし、基本原則はあらかた書かれています。しかし、例えば外交や通貨発行、基本的な産業政策や国民の生活レベルの保持などは国だと書いてありますが、個別具体的なありとあらゆる政策分野について、これはどちらなのかという議論になると、まだ決着がつかない分野が多い。
では、世の中にある行政業務すべてについて、これは国、これは広域自治体、あるいは基礎自治体という区分け論を整理しなければ、道州制へゴーできないかというと、私はそうではないと思います。そこに道州制特区の意味もあると思うのです。
もう原則論はある。次は、その原則論に沿う形で、具体的に、道州制特区に指定された北海道の我々が権限移譲の積み重ねをしていくということではないかと思います。北海道がどこまで権限の移譲を受けて、それを自律的にやることができるかどうかを、全国は見ている。道州制特区法は時限法ではない恒久法なのですから。
では、北海道はどこまで狙っていくのか。北海道開発局は、沖縄総合事務局と同じように、北海道にのみある組織ですので、これと機能統合ということはあり得ると思います。しかし、それは結果であって、まずは国のいろいろな権限や仕事を広域自治体たる道が権限移譲を順々に少しずつ受けていくことです。そして権限移譲を全部受ければ、必然的に国の出先機関の業務が無くなるのですから、一体化ということになるでしょう。組織が一体になることは目的ではなく、必然的にそうなります。
究極の絵姿は、我々は道州制特区法ができる前に提案していますが、国の出先機関と我々道庁で似通った仕事をやっているところは全部一体化するということです。ただ、そこに一気に行けばよいということではありません。やはり北海道の経済の中で、開発局の職員の方々も「どさんこ」ですし、一気に身分を変動するということも現実的ではない。国から道への仕事の移管に当たっては、受注者サイドにもさまざまな事情もあるでしょう。やはり、徐々に進めていくということが現実的には重要だと思います。
その意味では、今回の特区法で国から道に移譲されることとなった内容については「しょぼい」という批判もありますが、道路、河川、砂防工事などについて、財源も含めて道への移譲を法律上に明記したということは第一歩だと思います。加えて、これから我々はいろいろな権限移譲の提案をしていこうと思っていますので、そうしたことを毎年積み重ねていくことが重要だと思っています。
北海道は今、10年先を展望した改革に取り組んでいます。そのときまでに、北海道の基礎体力としての経済がどれぐらい良くなっているかともかかわってくるとは思いますが、やはり我々が究極の姿として提案していた道州政府のようなもので、国の出先と我々道庁とが一体となったものが地方政府として存在、成立するということが、道州制の1つのあるべき姿になると思います。そこまで行けるように、我々も気持ちを引き締めて頑張っていかなければならないと思っています。
それが北海道でできなければ、他地域は難しいでしょう。北海道は全国で唯一、国の出先のエリアと都道府県が一致するところだからです。東北にも四国にも九州にも国の出先機関があって、それがそのエリア内の複数の県をカバーしているわけです。公共事業も、私が前職でいた経済産業行政でもそうですが、地方ブロックは全国で8つか9つですから、その県ごとの仕事にどう分割するかという議論がある。その前に、我々北海道のように1対1になっているところでどこまでできるかが重要になってくると思います。
一方で、北海道庁は、その1つの支庁エリアが、おおむね、他の大ぶりの面積の県1つに一致するか、それ以上というところがたくさんあります。そういう中で、私どもは道庁の行政サービス提供のエリアの見直し、再編に取り組んでいます。そのためにも、行政サービス提供の主役を基礎自治体たる市町村に担ってもらうことができるよう、道から市町村への事務権限の移譲を積極的に進めているところです。
ただ、そこが我々の悩みなのですが、公共事業依存度や官依存意識の強い地域において、今申し上げたような方向で市町村にもっと頑張っていただきたいと思っていても、本当にそのとおりうまくいくかどうか。これから正念場を迎えると思っています。
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