本間正明(大阪大学大学院経済学研究科教授・経済財政諮問会議議員)
ほんま・まさあき
1967年大阪大学経済学部卒。73年同大学大学院経済学研究科博士課程修了。英国ウォーリック大学客員教授、ロンドン大学STICERD客員研究員、大阪大学副学長などを経て、現在大阪大学大学院経済学研究科教授。経済財政諮問会議議員、税制調査会委員などを兼任。主著に「租税の経済理論」「新・日本型経済システム」等。
これからの国と地方の形をどう考えるか
地方の自立に向けてもうひとつ議論しなければならなくなるテーマが、道州制をどうするか、県と市町村の役回りをどうするかという問題です。
国と地方の垂直的な関係の中で、補完性原理をきちんと謳い、機能がオーバーラップしないような形で、この国の姿かたちを議論していかなければいけません。基本はやはり、道州制を導入し、基礎自治体を強化していくということです。
都道府県というのは、大きさとしても中途半端です。域内の社会資本をどうするのかというときに、県単位でやっていても効率化の効果はあがっていません。その点でいえば、道州制の導入の下で2~30万人程度の基礎自治体を強化していくべきでしょう。
その上の、地方の中核都市のようなところに全てを持ってくるのは難しいですから、基礎自治体として2~30万人程度のイメージの中で、廃藩置県からずっと変わっていない部分のところに本格的に手を付けていかざるを得ないのではないでしょうか。
こうした制度面での改革の一方で、地方の自立に向けた改革がエコノミクスとして成り立つかとどうかが問われることになりますが、そこには、日本が構造改革を通じて、全体としての成長力をどのように復元をしていくかという大命題があるわけです。最近の経済の調子の良さの中で、今まで1.2%と見込んでやってきた潜在成長率を高めに見直す必要があるのではないかと言われています。それには、我々が構造改革を民間部門を中心にしながらやることによって、生産性を上げるということが前提であり、それを地域間でどのように波及をさせていくかが課題です。
私は、これからイザナギ景気越えをして、このゆったりとした景気回復が継続できれば、地域経済に対してプラスのスピル・オーバー効果が出てくると思うのです。現実に、東京、北関東、東海、それから東北、そして岡山、中国地方にまで広がってきつつあるわけで、この流れを、我々は努力しながら、強化をしていくことが必要になります。
しかし、そうはいっても、やはり、地域の高齢化という要因がありますから、そこをどういう具合に強化していくかという問題は、担い手の問題として起こっているわけです。
地方の中心市街地では商店街の衰退の問題もでていますが、こうした問題はそれを解決しようとする担い手がでてこないと、流れを変えることはできません。
お父さん、お母さんが、商店街で店を開いていたが、もう客も来ないからやめようとなると、シャッター通りになる。そこで、若い人たちが入ってきて、それを活性化できるような状況をどう作っていくのですかが問われます。
こうした問題の取り組みとして、まちづくり3法の問題が出てきたわけです。私たちはそれには大きな問題があると考え、諮問会議は、まちづくり3法に意見を述べました。時限の設定をしてくれということで、見直し要求を入れました。今までは商調協などといって、大型店舗が商店街に入ってくるのをノーと言っておきながら、道路のそばに大型店舗が出て、モータリゼイションの流れの中でそこへお客が行くと、今度は、こちらの方はだめだ、町に戻って来いという話です。
こうした発想はやはりロジックとしておかしい。官が余分なことをせずに、できるだけ自由にして、担い手が地域、地域でがんばろうというような経済・社会にしていかなければいけないと思います。
地方の自立に向けてもうひとつ議論しなければならなくなるテーマが、道州制をどうするか、県と市町村の役回りをどうするかという問題です。