【国と地方】 本間正明氏 第3話: 「財政再建と国と地方の関係」

2006年6月09日

honma.jpg本間正明(大阪大学大学院経済学研究科教授・経済財政諮問会議議員)
ほんま・まさあき
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1967年大阪大学経済学部卒。73年同大学大学院経済学研究科博士課程修了。英国ウォーリック大学客員教授、ロンドン大学STICERD客員研究員、大阪大学副学長などを経て、現在大阪大学大学院経済学研究科教授。経済財政諮問会議議員、税制調査会委員などを兼任。主著に「租税の経済理論」「新・日本型経済システム」等。

財政再建と国と地方の関係

 国と地方を合わせた日本の財政については、我々はこれまで、2011年までにプライマリーバランスを黒字化するということは言っていました。

 しかし、私たちはこの目標をさらに発展させ、その後のストックの債務残高の対GDP比率をピーク・アウトして収束させる方向に持っていく姿を描いています。

 それでは、債務残高のピーク・アウトを何年頃に設定するのか、例えば2015年なのか16年なのか。また、またこの債務残高の対GDP比率をどこまで持っていくのかという議論もあります。EUの目標、コンバージェンス・クライテリア(収束条件)は60%ですが、日本ではプライマリー黒字を単に2%程度でずっと続けていっても、実はその比率は100%をなかなか下回れないような状況です。ですから、その収束した最終的な姿をどうするかという問題は、まだ私たちは踏み込んでいません。

 我々は、債務残高がピークアウトして対GDP比で頭打ちになるような状況を、2010年代の真ん中から少し後ろくらいにイメージしています。プライマリーバランスを乗り超えた上で、債務残高の問題をどう考えるかという問題が、恐らく、これから大きな問題になってくると思います。そこにおいては、国と地方のプライマリーバランスの解消を2011年の時点でどういう形で国と地方との構成比で描くのか、が問われています。その後の黒字幅を2%あるいはプラスアルファにするときに、国と地方でそれをどうシェアしていくかによって、債務残高の姿が違ってくるからです。

 成長率と金利がどうなるかということにもよりますが、一番良い定常化されたような状況の中でも、債務残高のGDP比が100を切れるケースというのは非常に少ないのです。その達成は2025年過ぎです。トータルでプライマリー黒字を2%強にしなければ収束条件として100を切れないという問題に加え、国と地方の黒字をそれぞれ考えるということになると、更に難しい問題が出てきます。

 そこでは、国と地方の役割分担と財源の配分の問題は、避けて通れない問題です。国の機能を国防や外交などに集約していって、実務的な問題については地方の側で相当やるような仕組み作りでやるのか、依然として国がウェートを高くして、今までのようなやり方でやるのかによっても、話が全く違ってきます。


※第4話は6/11(日)に掲載します。

国と地方を合わせた日本の財政については、我々はこれまで、2011年までにプライマリーバランスを黒字化するということは言っていました。