【座談会】「金融界覆面座談会」 銀行界に銀行再生の戦略はあるのか

2003年1月04日

大手銀行幹部: A
大手銀行幹部: B
大手銀行幹部: C

概要

竹中プランの検討が進む中で、不良債権処理の加速と銀行の国有化の問題が提起されている。こうした状況を大手都銀幹部はどのように考えているのか。参加した4氏はこのままでは銀行の国有化はいずれやむを得ないとしつつも、デフレ下では自立的な銀行機能の回復は困難であり、国有化はかなり長期化するとの懸念を表明した。また経営の実態を説明しながらこの不良債権問題の最終出口はインフレで打開できるか、国民負担でしか描けないと語った。

要約

竹中プランの検討が進む中で、不良債権処理の加速と銀行の国有化の問題が提起されている。こうした状況を大手都銀幹部はどのように考えているのか。参加者はデフレの進行が不良債権を増加させていることを、支店や営業で状況を踏まえて説明し、むしろ、国有化に向けた与信の圧縮などが中小企業を連鎖倒産させデフレを促進することで共通の認識を示した。国有化については、状況的にはいずれはやむを得ないとの意見もあったが、それを回避するため与信の圧縮や国内銀行への転換なども視野に入れれば、まだ実際は時間がかかるとの見方も出た。銀行の経営建て直しについては、そもそも与信減の中では金貸しとしての銀行のビジネスモデル自体が成り立たず、デフレ下での銀行機能の回復の困難さも明らかにされた。議論で強調されたのはデフレの問題であり、公的資金を投入してもデフレが続く限り不良債権は増え続け、国有化になってもそれは長期化するという懸念が出された。経営者の交代については、経営者の交代でも銀行経営は変わらないとの意見はあったが、若い層には経営者の交代で若い力を活用できることや、公的資金投入により信用問題が解決することなどに若手行員の期待があることなどが出された。また、貸し剥がしの状況について、現場では収益の源泉である融資先は大事にしたいが、収益を目標にしているため審査が下りず、収益力の改善と融資増は相反の関係にあるジレンマについての銀行の本音も出された。また大手銀行のポートフォリオは日本全体のそれに近似していることから、本格的に健全化を図れば経済全体では合成の誤謬となりデフレを加速すること、それには相当の国民負担が必要との疑問も出された。現状は、市場の縮小を政府信用の拡大で穴埋めする管理型の経済が続いており、民間債務の削減の帰結は預金の削減という恐慌型解決につながりやすい。それをインフレで打開するのか、デフレと共存の中で国民負担をどのような形で覚悟するのか、政府は態度をはっきりさせるべきとの認識も示された。


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