加藤紘一(衆議院議員)
かとう・こういち
1939年生まれ。64年東京大学法学部卒、同年外務省入省。ハーバード大学修士課程修了。72年衆議院議員初当選。84年防衛庁長官(中曽根内閣)、91年内閣官房長官(宮沢内閣)、95年自民党幹事長。著書に『いま政治は何をすべきか―新世紀日本の設計図』(講談社1999年)、『新しき日本のかたち』(ダイヤモンド社2005年)。
メディア評価で選んだ記事 「ブッシュ大統領の機密漏えい関与」
「なぜこの記事を評価するのか」
私が、メディア評価を担当するに当たってまず選んだ新聞の記事は、ここ最近、アメリカで報道が続いている、「イラクの大量破壊兵器開発へのブッシュ大統領の機密漏えい関与」に関する記事です。
海外の記事には日本にとっても考えなくてはならない重要なニュースなのに、その扱いが小さいため、話題にもならないものも多いのですが、この記事の内容は私たちも少し真剣に考えるべきだし、メディアももう少し深く扱うべきだと考えます。それほど、日本の社会にいろいろな論点を提示しているからです。
私は今、イラクは内戦状態だと思っています。前のイラクの総理大臣、アラウィという総理大臣が最近辞めたのですが、彼はBBCのインタビューに対して、「これはもう内戦だ。これを内戦と言わずして、神は何を内戦と言うだろう」、というところまで言っています。この発言は3月21日の朝刊にでていますから、その前の日の発言かもしれません。
それでよく私も注意して新聞紙面を見るのですが、最近もある自爆事故でイラクでは47人死んだとか65人死んだとかというのが外報面に小さく出ています。しかし、大勢の人が殺されているのにそれがあまり話題になることもありません。もうイラクの戦争は遠い昔のことか、慣れて麻痺してしまったのでしょう。
こうした状況はとてもまずいことです。日本では自衛隊を送り、この戦争に実質的には関与したからです。こうした海外のニュースでは日本のメディアの報道は断片的で小さな記事のことが多いため、なかなか国民も判断ができない状況が放置されています。
これは戦争前ですが、イラク戦争を始めたら、内戦になるということは、かなりの中近東専門家とかは主張していたし、私もそう思い発言をしてきました。当時のコーリン・パウエル国務長官が、大統領に戦争を始めるときには、終わり方をよく考えて決断しないといかん、と言っていましたが、彼の言うとおりに、内戦状態になっているとしたら、これは私たちも無視できないはずです。
それぞれの国には歴史的段階があります。イラクも国家統一前の戦国時代の日本のようなもので、豊臣秀吉だって織田信長だって、かなり強引な武力を使って国をまとめていったのですが、それと同じ時期だと思うのです。それを分からないアメリカの人たちが、一つの考えで世界中をコントロールしようとするから困るのですが、その限界というものを見ながら日本は付き合っていかなければいけないのに、それを直線で考えて、日米の付き合いをやってしまうから、こんなことになる。
イラクは大量破壊兵器を持っているから、ということでアメリカに説得されて、日本は自衛隊派遣までいってしまったのですが、本当は今年の4月、5月には撤退させるというつもりが、向こうの治安状況が悪くなってきたからとても撤退できなくなって、日本だけ逃げ帰るわけにはいけない、というわけで、年内中に撤退できるかさえもわからなくなってきています。
そういう話が、国民の間にも忘れられているのです。そういう記事も日本の新聞にもあることはありますが、ほとんど読まれなくなってしまっている。では、この話はアメリカでどうなのかというと、これは大変な話で、ブッシュの支持率がどんどん下がっていくわけです。それが、連日アメリカを賑わしている先の取り上げた一連の報道だったわけです。
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