「議論の力」で強い民主主義をつくり出す
2011 / 03 / 20
[ 座談会 ]
工藤: 次に、現地に入ったときはどうすればいいのですか。遠慮なく、「何かできることはありませんか」、と。どういう風に、個人は行動すればいいのですか。見たまま、自分ができることをどんどんやっていくという状況でしょうか。
早瀬: それが現地にボランティアの相談機関をつくっていき、そこがご依頼とボランティアの活動をマッチングするプログラムをつくるので、そこでやるということはあります。しかし、現実に、多くの場合は被災された方が、我慢しているため、ニーズが上がってきません。だから、被災者の皆さんたちが我慢しないように、いかにSOSを出せる関係をつくれるかです。だから、僕らが実際に言っていたのは、「何かすることはありませんか」ということでは、なかなか心を開いてくれないので、「どなたかこの近くで、困っている方をご存知ではありませんか」という言い方の方が、実は自分が困っているのです、ということになりやすい。ちょっとした言葉遣いに気をつけるとか、できるだけ相手がSOSを出しやすい言葉遣いをするべきです。ただ、善意の押し売りはしてはいけないので、その辺りは難しいところですね。
田中: 今のお二人の話だと、現地でやれるボランティアと、それからその周辺でこれから被災者の人達を受け入れ先のボランティアなど、色々とオプションは出てくると思います。
山岡: 現地も3種類のボランティアがあると思います。これから被災地では、家やがれきの片付けボランティアが必要になってきます。次に、被災地のちょっと外で、ボランティアセンター、あるいは避難所でやるボランティア。それから、県外の移住先という3つぐらいに分けて考えて、それぞれにボランティアが必要になってくるのではないかと思っています。
堀: うちの社員も、今日は茨城にボランティアに行っています。
田中: そこら辺りだとアクセスできます。
堀: 壁が崩れていて、子ども達を非難させなければいけないかもという状況なので、お手伝いしています。茨城や千葉のエリアは、今、まさにアクセスできるところです。
田中: しかも、あそこはコーディネーション機関がしっかりしているみたいですね。
早瀬: ヘルメットは持ってきなさいとか、色々とルールはあります。目から下しか見ないから、よく頭打つのですね。
工藤: 他のところも同じかもしれませんが、難民を助ける会は、今後どういう風なステージに入っていくのですか。
堀江: まだ、物資配布というか、命を繋ぐ段階だと思います。普通に考えれば、1週間経てば、様子が見えてきて、どうしていこうかというプランに入りますが、まだ、そのプランが全然できる状況ではないので、今は、生き延びるための食料、生活必需品、それを配っていく段階で、もう少し落ち着いたら、もっと人を投入して、いい形で復興できるように進めていくようになると思います。
工藤: ここあたり、また重要ですよね。今、まさにそこのフェーズなのですが、段々その先のことを見据えながら、基本的に考えなければいけないという段階になってくる。みんなの善意を、継続させることも大事です。
早瀬: ボランティアのプログラムは、今の段階は生存を左右する時期ですが、次は、がれきの片付けだとか、潰れた家の中から思い出の品物を探すだとか、これから仮設住宅が建ち始めると、引っ越しの手伝いだとか、こういう緊急生活支援が必要になってきます。この緊急生活支援というのは、単発でも可能で、その日1日だけ行っただけで、十分役に立てるわけです。ところが、仮設住宅が開き出すと、そこは長い期間定住の地になります。そこでする活動というのは、できるだけ継続的な活動の方がよくて、顔見知りになっていかなければいけない。そうすると、活動できる人は、しょっちゅう行ける人でないと難しくなってきます。だから、緊急生活支援の時期は、水くみでも何でも、行った人ができることがある。段々、状況は変わってきます。多分、今月の末ぐらいには仮設住宅が建ち始めるようなので、随分早いなと思っています。土地が広いからでしょうけど。
そういう意味では、活動の中で、いわゆる話し相手的な活動と、緊急生活支援の話では全然違います。実際には、話し相手ではなくて、聞き相手ですからね。傾聴ですね。
山岡: 特に、東京から行った学生が、お年寄りの話し相手になれるかと言えば、難しい。方言は、土地によってかなり違いますから。
早瀬: あと、震災の時によく言われたのは、そういうこともあるけど、例えば、生演奏のような文化的なことが、凄く支えになったという人が凄く多いのですね。
工藤: 今、視聴者から質問が着ていて、この疑問は僕の疑問と同じなのだけど、司令塔がないと、混乱すると。僕の関心は政府の対応に見られます。今回の原発の問題もそうだし、色々な問題に関しても、バラバラでやっている状況ですよね。今の段階でも、どういう方向で被災者を救援し、生活支援をする、というような方向感が見えにくい。完全にわからなくてもいいけど、全体像がわかりながら、こういうことが必要だという段階にきてもらわないと、方向感を合わせた形で動けないと思うのです。またボランティア自体の司令塔が必要では、という意見もあるかもしれない。司令塔の在り方とか動き方というのは、どういう風につくられていって、機能するステージに入っていくのでしょうか。海外ではどうですか。
堀江: 海外のケースなどは、政府ごとに状況が違いますので、政府が腐敗してダメな場合は、国連が中心的にやって、リードしていくということになりますし、政府がそれなりに機能しているところであれば、政府と国連が協力しながら、体制を決めていきます。日本の場合は、あまりにも海外からの援助を入れなさすぎていて。
早瀬: 今までは、今回は入っています。
堀江: ですから、もっと国連などのアドバイスを聞きながら、やっていくべきなのかなと思っています。で、今回特殊なのは、原発の問題があるので、政府の方が、ほとんどそちらの第三次災害、地震、津波、原発の崩壊を起こさないために、必死になってがんばっている。今は、そういう状況なので、本当に被災地の復旧支援の方には、政府の力がなかなかまだ向いていないのですね。その中では、県レベルでやっていくしかないと思うので、県でできることをやっていく段階かなと思っています。
工藤: 今回見ていても、県も町もそうだけど、ボランティアの受け皿だけではなくて、公的な受け皿がちゃんとあるのですか。
早瀬: それは、無理です。それは普通で、別に特別に東北各県の動きが悪いわけではなくて、大災害というのはこういうものなのです。それぞれが、自分の責任と判断でもって、動きながら連携をする、という形しかないだろうと思います。特に、ボランティアはそうですね。ただ、政府の方の動きは、ちょっと違うだろうと。本当は、政党の皆さんなんかは、被災地に行ってボランティアとか、被災者の方たちを激励するのではなくて、復興のための制度を、どう作るのか。あるいは、さっきも話に出ましたけど、税制に関しても色々な具体案が出ているのですが、ほとんど棚ざらしですよね。
田中: 寄付税制が通るはずだったのですよ。
早瀬: 国会議員がすることは、法律をつくることで、それだけは我々にできないことですから、彼らはそっちに注力するべきですよ。
工藤: その通りです。
田中: 何か、街頭募金をやっていますよ。
早瀬: そういうことじゃないですよね。そういうパフォーマンスをやられたら困るのですよ。
工藤: 立法府なんだから。今回、政府や政治にパフォーマンスが多いですよね。だから、そこは考えなければいけないこと、沢山ありますよね。僕も東北出身であれなのですが、かなりこれから長い時間かかりますよね。でも、これを糧にして、未来に向かう起点にしなくてはならないし、政治はそれを描かなければダメですよね。
最後に、被災地のことは大事なので何とかしないといけないけど、多分、日本全体の一人ひとりの市民が、この問題に力を合わせるぐらいの規模とか、被害だと思います。だから、僕たちは、こういう大きな問題を、どういう風に覚悟を決めて、考えればいいかということを、皆さんに最後言ってもらえますか。
未来に向けてどう覚悟を固めるか
山岡: やはり、緊急ということだと、お金も集まるし、ボランティアも集まるけど、生活再建には5年か、場合によっては10年ぐらいかかるわけです。そうすると、緊急に集まったお金を5年、10年と使えばいいのですが、やはり持続して関心を持つということが重要です。特に、日本は、瞬間的にはボランティアも集まるのですが、かなり持続的な活動が必要になってくると思うので、それがないといけない。それから、僕は大学のボランティアセンター長をやっていて、どうするのだという声をよく聞かれます。でも、色々と誤解があって、ボランティアの登録制をつくろうとかとなったりするけど、それは待てよとか、義援金を募集やろう、いやいやそれも待てよとか。色々なことが出てくる。だけど、大学のボランティアセンターなどでは、ある程度まとまった形で、どこかの拠点と提携して何日か行くとか、あるいは東北出身の学生もいますから、そういう人に中心になってもらって、ちょっと訓練をして現地に行けるような仕組みをボランティアセンターとしてできないかなと思っています。やはり、大学のボランティアセンターにしろ、社協のボランティアセンターにしろ、色々な形で全国にあるから、それらが一つひとつ、ある程度の情報のアンテナを張りながら自主的にやっていく。一人ひとりではなくて、グループとして、組織がしっかりしているところは団体が中心になって、一緒にやっていく。少し、長期的に関わってもらうようなことが必要ですね。
工藤: 確かに、継続的に関心を持つということは重要ですね。多分、この震災がきっかけとなって、自分の人生も含めて、僕たちが変わるような、そのような感じがしているので、一生の問題だな、という位の感じを僕は持っています。堀江さんどうでしょうか。
堀江: そうですね、今、日本という国が、今後に向けてどういう感じになっていくかという、ひとつの転機になるような気がします。ぜひとも前向きに、いい方向に繋がるようにしていかなければいけないし、今、とにかく日本全体で考えて、必要な燃料なり、物は、東北地方に送っていくという、国家的な体制でやっていかないと、とても我々がガソリンを1缶、2缶買ったところで大河の一滴に過ぎないので、これはぜひ国をあげてやって欲しいと思います。で、長期化することは肝に銘じて、今、1日がんばるのではなくて、長く続けるような体制でやっていくということを考えていかなければいけない。それは、当然大事だなと思っています。
工藤: また視聴者から意見がきました。答えてくれますか。
田中: 「現地で何をやるかより、『どうボランティア自身が生活できるか』を先ず確認すべきではないでしょうか。」
早瀬: もちろん、その通りです。
田中: 『フェイズは場所によって色々あると思います。これを整理し、フェイズの進んだ地域にボランティアを送り込む仕組みも必要では。』、『NPO法人税制改正に合わせ、緊急時の寄付税制優遇も是非実現して欲しいと思います。』こういう意見です。
早瀬: ボランティア自身が生活できるかを確認するべきというのは、当然その通りで、阪神淡路大震災の時には、夜にほとんどする仕事がないのに、ボランティが泊まりこんでしまうと、被災者に負荷をかけてしまうのですよ。だから、我々は、徹底して日帰りにこだわりました。ところが、今回は日帰りでは行けない場所ですから、ボランティアって、一方で、たかがボランティアなのですよ。ボランティアでやれることはどれだけあるのか、自分が行くことによって、被災地へ負荷をかけないかと思いながらいかないといけない。でも、されどボランティアなのですよ。ボランティアでしかできないことももちろんあります。そのバランスは凄く大切だと思います。
田中: 行ったきり、足止めにあっている人からメールがきたりします。
早瀬: そうそう。善意はわかるけどね。
山岡: 迷惑はかけないようにね。
工藤: 堀さんはどうですか。
堀: 企業からすれば、今はお金を集めるということをやっています。UBSは18日の金曜日に、株式取引(一部)の手数料の50%を寄付するというプログラムをやりました。これはもちろん、お客様からいただく手数料の50%を決済後に寄付するということで、かなりの額を集めました。先に早瀬さんもおっしゃっていましたが、もっと寄付を集める仕組みを、色々な形でつくっていけると思っています。今までは、日本はファンドレイジングについては、弱かったかもしれませんが、それをやっていくということはできると思います。私たちとしては、社員からの直接の寄付も受けて、それに対して、会社が同額マッチング寄付するということもやっているのですが、この寄付分に関しては、寄付を差し上げるNPOの方々に、今回の災害支援活動だけではなくて、NPO法人の基盤強化にも使ってもらおうと。今後のための基盤強化に、使っていただける資金にしようと。寄付金の使い道は、3年位を視野に入れて、フィードバックもちゃんと返ってくるような仕組みを、NPOさんとご相談していきたいなと思っています。義援金とは違う種類の寄付になりますね。
工藤: 早瀬さん、一言でお願いします。
早瀬: 東京がこの状態ですから、エネルギー消費を抑えた生活だとか、色々と生活のスタイルも転換しなければいけませんよね。それから、今まではどうしてもボランティアが凄く大切で、寄付はお金にあかしてというイメージがあったのですが、寄付も大切なのですよね。やはり、寄付は自分よりもうまくできる人がいると信じて託す行為ですから、そういう行為もがんばろう、ということが今回のことで、ボランティアと寄付の両方が大切なのだというように、転換すればいいなと思います。
工藤: 田中さん、お願いします。
田中: 2つあります。1つは、今年の国会で平成23年度から大きな税制改正案がかかっていますが、それが止まっている状態です。これをやると、認定を受けた団体への寄付は、寄付金の5割を税額控除できるという、ドラスティックな税制改正だったのですが、これが止まってしまっています。今は、税額控除があるかどうかなしに、寄付はされていると思いますが、本当に長期戦なので、寄付税制は、切り離してでもいいから国会を通して欲しいというのがあります。それから、もう1つは、市民の皆さん、NPOの皆さん、両方に向けてなのですが、阪神淡路大震災でNPO法ができたようなものなのですが、この10年を振り返ると、寄付とボランティアに対して、ちょっと消極的な側面が目立っていたのですが、これを契機に、ぜひNPOが市民の皆さんとつながる絶好の機会だと捉えていただきたいですね。
工藤: 今日は、1時間にわたって、非常に重要な示唆的な話ができたなと思っています。皆さんも言われていましたけど、市民の力は非常に凄いなと思っているのですね。やはり、市民と繋がっていくということが大事です。ただ、他の地域はどうかわからないけど、残念なことに東京でいると、非常に暗いのですよ。元気を失っているような感じで、鬱状態という感じがしています。でも、今こそ、自信を持つことが重要です。今回の震災が、市民の力で日本を変える、というきっかけになる可能性が非常に高いと思っています。僕たちの人生をこの時期に使い切るぐらいの、問題だと思っています。だから、僕たちは、これからの人生とか、社会のために自信を持って、未来のために動くことが必要だろうし、政府や政党がちゃんと動かないのなら、僕たちは意見を言っていって、その動きにプレッシャーをかけるぐらいの感じで、新しい動きを始めなければいけないと思っています。あと、被災者の人達を、力を合わせて救済しないといけないということを、僕たちは、覚悟を決めて、できる事をやっていきたいと思います。今日は、みなさんありがとうございました。
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