8月24日、言論NPOは8月14日発表された「安倍談話」について、日本、中国、韓国の有識者にアンケートを行い、その集計結果を公表しました。
中韓の有識者の9割以上が「安倍談話」の公表を知っており、非常に高い注目を集めている
まず、中国と韓国の有識者に今回公表された「安倍談話」について知っているかを尋ねたところ、中国では91.4%、韓国では96.9%の有識者が、安倍談話が発表されたことを知っており、非常に高い注目を集めていたことがわかります。
「安倍談話」について、日本では評価が拮抗している。中国では「評価していない」が5割を超えたが、「評価している」も2割程度存在している。韓国では、「評価していない」が8割を超えた
次に、日中韓3カ国の有識者に、今回の安倍談話を評価しているかを尋ねたところ、日本の有識者では、「評価している(「どちらかといえば」を含む)」(45.6%)と「評価していない(「どちらかといえば」を含む、以下同様)」(41.7%)が非常に拮抗していることがわかります。 中国の有識者では、「評価していない」が56.9%と5割を超える一方で、「評価している」も21.4%と2割を超えています。 これに対し、韓国の有識者では、「評価していない」が83.1%と否定的な評価が大勢を占めています。(※1)
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(日本側調査)安倍首相は終戦記念日を翌日に控えた8月14日、記者会見を行い「戦後70年談話」を公表しました。あなたは、今回の談話について評価していますか。
(韓国側調査)安倍総理の談話についてどのように評価しますか。
(中国側調査)これまで、村山談話、小泉談話が出されましたが、今回の安倍首相の談話も日本国内外で様々な注目を集めていました。あなたは、今回の安倍首相の談話を評価していますか。
中国の有識者に比べ、韓国の有識者は「安倍談話」に否定的な見解を示している
続いて、中国と韓国の有識者に、今回の「安倍談話」が、日本のアジアに対する侵略戦争について反省している内容になっているかを尋ねたところ、中国の有識者は「感じなかった」、(「どちらかといえば」を含む、以下同様)と回答した人が全体の64.7%を占める一方、反省していると「感じた」(「十分」と「どちらかというと」の合計、以下同様)と回答した人も20.8%と、2割の中国人有識者が侵略戦争の反省という内容を読み取っていることもわかりました。 しかし、韓国の有識者の88.7%が「感じなかった」と回答し、「感じた」は2.5%しかおらず、前問に続き、中国人より、韓国人の方が「安倍談話」に対して、否定的な意見を示していることが明らかになりました。
(参考)
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「安倍談話」が日中、日韓両国の関係改善に役立つ内容になったか、について、中韓両国の有識者の中には厳しい見方が多いが、それでも中国では3割近くが肯定的に見ている
今回の「安倍談話」が、日中関係、日韓関係を改善していく上で、役立つような内容になっているのか、についても尋ねました。 日本の有識者で、最も多かったのは「どちらともいえない」と判断しかねている回答の35.2%でした。これに続く形で、「両国の関係改善に役立つ内容になった」(25.5%)、「両国の関係改善に役立つ内容になっていない」(25.0%)との回答が拮抗しています。 一方、中国の有識者に、今後の日中関係の改善に役立つ内容だったかについて尋ねたところ、「役立つ内容になっていない」(「どちらかといえば」を含む、以下同様)という否定的な回答は54.9%と半数を超えています。他方、「役立つ内容になった」(「どちらかといえば」を含む、以下同様)も29.3%と3割近く存在しています。 韓国の有識者では、今後の日韓関係の改善に役立つ内容だったかについて、「役立つ内容になった」は6.3%に過ぎず、「役立つ内容になっていない」は、74.9%と7割を超えています。
8月15日のパク・クネ大統領の演説については、日韓両国の有識者は評価しているとの回答が多数を占める
「安倍談話」公表の翌日となる8月15日に、韓国のパク・クネ大統領は「光復節 慶祝辞」発表し、その中で、「安倍談話」について、「残念な部分が少なくないのは事実」としながらも、「歴代内閣の立場が今後も揺るがないことを国際社会に明確に示した点を注目します」と一定の評価を行いました。そこで、この演説についても、日本と韓国の有識者に評価を尋ねました。 日本の有識者は「評価している」(「どちらかといえば」を含む)が56.0%で、「評価していない」(「どちらかといえば」を含む)の18.0%を大きく上回っており、日本の有識者は朴大統領の前向きな対応を高く評価しています。 これは韓国の有識者も同じ傾向を示しており、回答者の48.4%(「評価している」(9.4%)、「どちらかといえば評価している」(39.0%))と半数近くの人が、肯定的に評価しています。ただ、「評価していない」(「評価してない」(17.0%)、「どちらかといえば評価していない」(14.5%))との回答も31.5%と一定程度存在していることをも明らかになりました。(※2)
※2(日本側調査)8月15日、朴大統領は「光復節」の演説で、安倍首相の戦後70年談話を受けて「残念な部分が少なくないのは事実」としながらも、「歴代内閣の立場が今後も揺るがないことを国際社会に明確に示した点を注目します」と一定の評価を行いました。こうした朴大統領の演説について、あなたは評価していますか。
(韓国側調査)8月15日パク・クネ大統領は「光復節 慶祝辞」を通して、韓日関係についての立場を発表しました。この祝辞内容をどのように評価しますか?
また、今回のパク・クネ大統領の演説が今後の日韓関係を改善するのに役立つと思うかを日韓両国の有識者に尋ねたところ、日本では、49.6%と5割近くの有識者が、「日韓関係の改善に役立つと思う」(「どちらかといえば」を含む、以下同様)と回答しています。「日韓関係の改善に役立たないと思う」、(「どちらかといえば」を含む、以下同様)は、14.0%となり、合計しても1割程度にとどまっています。
一方、韓国の有識者では、「日韓関係の改善に役立つと思う」が43.4%となり、4割を超える人が関係改善の助けになると見ています。これに対し、「日韓関係の改善に役立たないと思う」は、29.5%と3割程度存在しています。ただ、「どちらでもない」との回答も23.9%と2割程度おり、韓国の有識者の中でも、今回の演説がこれからの日韓関係について、どのような影響を与えるか判断できない有識者も一定程度いることが見て取れます。(※3)
(日本側調査)今回の朴槿恵大統領が祝辞で明らかにした日韓関係に対する立場が、日韓関係を改善するのに役立つと思いますか。
(韓国側調査)パク・クネ大統領が今回の祝辞を通じて韓日関係について明かした立場がこれからの韓国と日本の関係改善の助けになる内容だと思いますか?
全体的な比較として、中国よりも韓国の有識者の方が「安倍談話」に否定的な見解を示している
調査結果の全体的な傾向として、中国と韓国の結果を比べると、中国に比べて、韓国の有識者のほうが、全体的に「安倍談話」に対して否定的な意見を示していることが明らかになりました。
アンケートの概要
日本側、韓国側調査は、言論NPOと東アジア研究院(EAI)の共同調査として行い、日本側については、言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約6000人を対象に、2015年8月18日から8月21日までの期間でアンケートの回答を依頼し、回答のあった307人の回答内容を分析しました。 韓国側については、EAIのニュースレターを受信する会員を対象に、8月20日から8月22日までにアンケートを発送し、回答のあった159人の回答内容を分析しました。 中国側調査は、言論NPOが過去10回の「東京―北京フォーラム」に参加していただいた有識者に対し、8月18日から8月21日までの期間でアンケート調査を実施し、回答のあった337人の回答内容を分析しました。