世界とつながる言論

アジアの将来と日中問題/中川秀直氏

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第2話:「アジアの多様性と水平的思考」

 アジアの伝統的な思考は垂直的思考であり、確かに水平的思考ではありません。しかし、世界は今、フラット化に向かっていると思います。その意味では、アジアは垂直的思考を克服しなければいけない。日本と中国が対等な関係を築き、アジアの模範となることの歴史的な重要な意味はここにあるのではないかと思います。

 21世紀のアジアの課題の第2に挙げられるものは、先ほどの崇米的傾向とは異なり、反米的傾向の人々、あるいはその一部がアジアが結束して米国や欧州に対抗すべきと考える人々がいることであります。しかし、そうした発想はアジアの利益には全くなりません。日本も文明開化により、また中国も改革開放によりまして、欧米に対して門戸を開放したからこそ発展の道を歩むことができたことは紛れもない事実であります。

 米国はこれまでも、あるいは今後も、日本や中国にとって圧倒的な重要性を持ちますけれども、それは我々が目指すべき「開かれた独自性」と矛盾するものだとは考えません。
今後のアジアの地域統合を考える場合、2つのアジアの不均衡をどう考えるかが第3番目に極めて重要であります。

 まず第1に、経済発展段階の不均衡についてです。一部の人々は欧州連合(EU)と比較して、欧州のような同じ経済水準になる将来を持つべきだと言います。しかし、均質な平均化されたアジアを理想とするならば、その発想自身が垂直的思考で近代化の優劣を見ることになり、ひいては近代化の優劣でアジアの盟主を考えることになるのではないでしょうか。アジアでは多種多様の文明、文化、宗教が共存、融合しております。ご案内のように、日本人の多くは仏教と神道などを同時に信仰し、中国でも上海の松江(しょうこう)では、仏教の寺院と道教の寺院が1枚の壁を挟んで何百年も共存しているということを、ことし2月、私は上海に訪問した際に伺いました。

 アジアの未来を考える上で我々は異質を際立たせるのではなく、「小異を捨てて大同につく」、中国語では「小異を残して大同につく」という異文化の存在を認める精神にあるのではないかと考えます。
今日のアジアの魅力も、まさに近代化の不均衡な空間そのものにあるような気がいたします。一種の多様性の存在とも言えます。その魅力に注目して、世界の企業が投資しているのではないでしょうか。我々は、この不均衡な空間というアジア的特徴を生かしながら、いかに水平的思考を持てるかが問われているような気がするのであります。


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発言者

nakagawa_060804.jpg中川秀直(衆議院議員、自由民主党政務調査会長)
なかがわ・ひでなお

1944年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、66年日本経済新聞社入社、73年同社退社、故中川俊思代議士の秘書を経て76年衆議院総選挙初当選。96年国務大臣科学技術庁長官、同年自由民主党総務会長代理、98年衆議院議院運営委員長、2000年党幹事長代理、同年7月内閣官房長官(IT・沖縄担当兼務)・沖縄開発庁長官、2002年党国会対策委員長(歴代最長)などを歴任。2005年より党政務調査会長に就任、現在に至る。

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