【報告】「第1回日韓未来対話」開会 ~日韓両国の識者は何を語るのか~

2013年5月11日

第1回日韓未来対話 両国民の相手国に対する感情が悪化する中、言論NPOと韓国のシンクタンクである東アジア研究院(EAI)は、日本と韓国の間に民間を主体とした新しく議論の舞台である「日韓未来対話」を立ち上げ、1回目となる対話を5月11日、東京都千代田区の日本プレスセンターで開催しました。


 日本側は小倉和夫元駐韓大使を座長に、政界から川口順子・元外務大臣、山本幸三・元経済産業副大臣のほか、マスコミ関係者など9氏、韓国側からは李泰植・元駐米大使、孫洌・延世大学国際学大学院院長、金姫廷・セヌリ党国会議員らがパネリストとして出席し、将来の日韓関係についてそれぞれの立場から意見を交換しました。


工藤泰志 まず、「第1回日韓未来対話」の討議に先立ち、日本側主催者の言論NPO代表の工藤泰志が「東アジアでは排他的なナショナリズムが存在しており、こうした局面では政府間だけの対話は困難であり、この局面を立て直すには民間というか、市民の力が不可欠である。両国には不信を増幅させていく構造があり、これを国民に開かれた対話で乗り越えたい」と挨拶。

 また、韓国側主催者の東アジア研究院(EAI)とは、米国外交問題評議会(CFR)が主催する世界23カ国のシンクタンクが集まる会議、カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC)のアジアからのメンバーとして出会い、その後、今回の対話を準備してきたという経緯を説明しながら、今回の対話が実現したことに、「ちょっとした勇気が時代を動かす、その一歩を踏み出したい」と語りました。また、今回の対話には岸田外務大臣からの祝辞も寄せられました。


 開会のあいさつに引き続き、非公開で行われた第一セッションでは「共同世論調査結果から見られる日韓関係・日韓関係における対立の原因と協力関係の促進」をテーマに、5月7日に発表された日韓共同世論調査結果について議論がなされました。

李淑鐘・東アジア研究院院長 まず、韓国側の基調報告を行った李淑鐘・東アジア研究院院長は「韓国人は歴史認識、領土問題で日本に対して不信感を持っている。また、両国民は自国のメディアの報道が偏っているとも考えている」と指摘しました。


 一方、日本側の基調報告を行った代表の工藤は「両国民の交流が予想以上に進んでおらず、相手国への印象は日中間の調査結果よりも悪い。韓国では戦争など過去から日本を見る傾向があり、日本の現状についてはあまり知られていない。日本は逆に今の韓国には詳しいが、過去のことはよくわかっていない」などと問題提起しました。


第1回日韓未来対話 その後の意見交換の場では韓国側から「教科書問題など政治的な問題がマスコミに報道されるたびに短期的には摩擦が起きるが、長期的に政治が大きな影響を及ぼすことは限られると思う。一回の世論調査のみで悲観的に見るべきではない」と日韓の将来を楽観視する声もありましたが、他の韓国側の出席者からは、歴史認識、領土問題では「これらは根本的なもので、癒すのは難しいが、お互いどれくらい歴史問題を知っているのか。日本はW杯の共同開催など最近の出来事を通じて韓国をみているが、韓国は日本との関係で、文禄・慶長の役をもっとも先に思い浮かべる。あれで韓国の人は初めて日本人を経験した。そして、韓国植民地支配や太平洋戦争を通じて、日本が韓国に何をしたのかという出来事を通じて、日本を見ている。安倍首相が靖国を参拝するのも問題だが、歴史に関する根本的な認識を共有することが必要だ」と、独島(竹島)問題だけで日本の歴史、領土問題を語っているのではない、との意見もありました。


 これに対し日本側からは「両国間には、過去10年の中でも非常に異質の空気が流れている。一昨年から歴史認識を巡る韓国の裁判所の判決の問題など重苦しい雰囲気が立ち込めていたが、今から思えばこの芽を早く摘むべきだったのではないか」、「日本の若者は水平思考で、歴史の中で日本を考えない。それに対し韓国の人は歴史を通じた垂直思考。この違いを持つ両者がどのようにお互いを理解していくか、という問題があるのではないか」と両国間の認識のギャップを指摘するパネリストもいました。


 世論調査では韓国人が日本より中国に親しみを抱いている、という結果が出ていたが、日韓両国民の相手の国民性に対する認識では、日中と比べると、そこまで否定的ではない、という意見も出され、共に東アジアの重要な国として協力していくべき、との姿勢では意見が一致し、第一セッションの議論は終了しました。

 両国民の相手国に対する感情が悪化する中、言論NPOと韓国のシンクタンクである東アジア研究員(EAI)は、日本と韓国の間に民間を主体とした新しく議論の舞台である「日韓未来対話」を立ち上げ、1回目となる対話を5月11日、東京千代田区の日本プレスセンターで開催しました。