「第1回日韓未来対話」終了後、都内ホテルで日本側座長を務めた小倉和夫氏と言論NPO代表の工藤泰志、韓国側座長を務めた李泰植氏、李淑鐘・東アジア研究院院長による共同記者会見が行われました。
冒頭挨拶で工藤は、本日の議論を振り返りながら「この対話をもとに日韓相互の認識を把握し、未来へ向かって新たな一歩を踏み出すことができたのではないか」と述べ、この新しい試みの意義を強調。同じく挨拶に立った李淑鐘氏は、「今回の対話は何か根本的な問題の解決策を提示したわけではないが、市民を入れた対話形式にしたことにより、他の日韓の対話と比べてより深みのある議論の試みとなった」と対話の重要性を指摘しました。
続いて、第1セッションに関する報告で、李泰植氏が非公開の対話の内容について説明しました。その中で李泰植氏は、この対話で日本側と韓国側の認識が一致した点に言及しました。その一つとして、「未来志向のためには過去に固執するのではなく、しっかりと未来を見据えて上で過去の問題を解決していく『パラレル・アプローチ』の手法をとっていく」ことで日韓両国のパネリストが一致したと述べました。
第2セッションの報告で小倉氏は、日韓両国の認識が一致した点として、「日韓両国に共通した課題を設定していくこと」や「東アジアという枠組みで協力関係を構築していくこと」を挙げました。しかし、先程のパラレル・アプローチに関する李泰植氏のコメントに対し、「その点については必ずしも一致していない」とやや異なる見方を示し、このパラレル・アプローチを実際にどのようにしていくのか、この手法にどういった意義があるのかなどの点については、日韓両国の受け取り方にはややニュアンスに違いがあるのではないかと指摘しました。
李泰植氏はこの指摘について、「歴史問題などでは両国民の認識に違いがあることを互いに認めつつ、未来志向で解決していくべきである」という点では両国は一致しているとした上で、「ただし、韓国側は日本側が歴史問題について、もっと正しい認識を持つべきであるとも考えている」と付け加え、その背景には最近、日本で従軍慰安婦の存在そのものを否定するような発言が見られるようになっていることを指摘しました。
李淑鐘氏は、「現状では過去の問題が原因で日韓は信頼関係を築けておらず、未来へ向かって前進できていないのが現状である」と述べ、今後、未来志向で様々な分野の協力を進めていくにしても、「歴史問題に対する認識がこれ以上悪化しないように、問題を管理すべきである」と主張しました。
最後に工藤が、この韓国との民間対話という新たな取り組みを皮切りに、言論NPOが目指している「強いパブリック・ディプロマシー」を今後、力強く推し進め、「対話のチャネルを広げていく」と決意を述べ、記者会見は終了しました。
この記者会見を終え、「第1回日韓未来対話」は閉幕いたしました。次回は、来年ソウルでの開催を予定しています。
「第1回日韓未来対話」終了後、都内ホテルで日本側座長を務めた小倉和夫氏と言論NPO代表の工藤泰志、韓国側座長を務めた李泰植氏、李淑鐘・東アジア研究院院長による共同記者会見が行われました。