第2回日韓共同世論調査 記者会見 報告

2014年7月10日

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 7月10日(木)、韓国・ソウルの韓国プレスセンターにて、言論NPOが韓国のシンクタンクである東アジア研究院(EAI)と共同で実施した「第2回日韓共同世論調査」に関する共同記者会見が行われました。

 記者会見には、日本側からは代表の工藤が、韓国側からはEAI院長の李淑鐘氏と、EAIシニアリサーチフェローのジョン・ハンウル氏が出席しました。会場には4台のテレビカメラが設置され、日韓両国から約30名の報道関係者が集まるなど、高い関心が寄せられました。

 この共同世論調査は、日韓両国の相互理解や相互認識の状況やその変化を今後継続的に把握することを目的に、昨年から始まったもので、今回の調査のサンプル数は日本が1000人、韓国は1004人です。また世論調査を補完する形で、両国で有識者調査も実施されました。調査形式や質問内容は、言論NPOが過去9年にわたり行い、今年も8月に実施予定の日中共同世論調査とほぼ同じであり、これによって日中韓三カ国の比較が可能になるよう設計されています。

 調査結果の発表に先立ち、李淑鐘氏は「民間レベルの対話によって日韓関係の厳しい情勢を打開していく」という日韓未来対話創設の趣旨を振り返りつつ、「この世論調査をベースとするからこそ、日韓未来対話は他の対話よりも客観的かつ冷静な議論ができる」と述べました。続いて工藤も、「この調査は政府間の対立の正当性を証明するために行っているのではない。両国の国民が冷静に今の日韓両国や相手国の状況を分析し、あくまでも自分の問題として向かい合うための素材を提供することを目的している」とこの世論調査の意義について述べました。


 その後、世論調査結果についての説明に入りました。工藤はまず、日韓の国民の相互理解の基本的な構造について、「状況は昨年の調査と構造は基本的に変わっていない。国民間では相手国への渡航経験や知人の有無など、直接交流の度合いがまだまだ乏しく、相手国に対する認識や理解は、自国のメディアの報道に大多数が依存している」と述べました。そのために、お互いの認識がかみ合わず、対立を助長する形で世論が醸成されやすく、その結果、事実と異なるお互いの理解が形成される傾向がある、という問題点を指摘しました。

 その一例として、相手国の現在の社会や政治のあり方に関する調査結果を挙げ、日本人の半数近くが韓国を「民族主義」と、韓国の人は半数以上が日本を「軍国主義」、と見ており、互いに相手国を「民主主義」の国と見ている人は2割程度しかいないことを紹介しました。

 さらに、日韓国民間の感情対立の背景に、両国のメディア報道の問題があるか、という質問に対して、日本では62.1%、韓国では63.6%と、それぞれ6割を超える人が、「メディア報道の影響はかなり大きい」との回答結果を紹介しました。この結果を受けて工藤は、「問題はメディア報道だけではなく、相手国に対する認識形成をメディア報道に依存する構造である」と指摘しました。そして、この問題を考える上での重要な手がかりとして、相手国に直接の交流のチャネルを持ち、情報源が多様化している両国の有識者調査結果では、相手国に対する印象に関する質問で、日本では41.7%、韓国では51.7%がそれぞれ相手国に「良い印象を」持っていると回答しているなど、一般世論と逆の結果が出ている点を挙げました。

 以上のことから工藤は、「国民間の直接な交流がお互いの健全な認識や理解に決定的に大事になっている。そしてメディア報道の責任がとても大きい」と指摘しました。


 続いて、今年の調査で見られた新しい変化として、工藤は「政府間の対立が継続する中でも国民や市民レベルで相手国に対して冷静な目が存在している」ということを指摘しました。今年の調査では、「今の国民感情の状況をどう考えるのか」との設問を新設しましたが、これに対しては「望ましくない状況であり、心配している」あるいはこの状況を「問題であり、改善する必要がある」という回答が、日本では61.2%、韓国では69.7%となりました。この結果を受けて工藤は、「それぞれの国の声は多様であり、政府や政府の首脳の発言だけがワンボイスでその国の声になるのではない。政府間の対立をナショナリスティックに熱く加速させる世論ではなく、政府間の問題を相対化して見る冷静さが、両国の国民レベルにはあるということである」と述べ、さらに「まだこうした国民間の冷静な認識が、今の両国関係を切り開く一つの具体的な流れにはなっていないが、その可能性があることを今回の調査は示している。どうやって今の状況を改善するか、それを国民間も真剣に考える局面に来ているのではないか」と問題提起をし、調査内容の説明を締めくくりました。

⇒工藤の発言の詳細は「『日韓共同世論調査』を日本側はどう読み解くのか」をご覧ください

140710_03.jpg その後、日韓のメディアから様々な質問が寄せられ、活発な質疑応答が交わされました。特に予定時間終了後も、多くの報道関係者から質問が相次ぐなど、日韓関係、さらにこの共同世論調査への関心の高さをうかがわせる会見となりました。


 最後に、EAIの事務局から7月18日の「第2回日韓未来対話」の概要について説明がなされ記者会見が終了しました。

 7月18日に開催される「第2回日韓未来対話」については、言論NPOのホームページで随時公開していきます。

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