分科会レポート/第4分科会 「歴史問題を乗り越える」(非公開)

2006年8月04日

 靖国問題、歴史教科書問題をはじめ、日中間においては、様々な歴史認識に関する問題が見られる。これらは両国間における実態認識の相違ないしは固定観念に基づく誤解によるものも少なくない。

 また、日中戦争に関しては、中国側から観れば、抗日戦争であるという明確な価値判断があるのに対し、日本側の認識からすれば、帝国主義間の戦争であると捉え、侵略戦争としての認識は乏しいといった相違が背景にあるとの見方が紹介され、日本側は、戦争へ向かった道がどこで誤ったのか、今後どのような道に進むべきなのか等、ナショナル・アイデンティティを再構築することが必要になるとの意見があった。これに関連し、中国側からは、日本は、歴史に対して責任を持つべきであり、被害者の心情を真摯に受け止めるべきであるとの指摘があった。一方、中国側に対しては、戦後60年間にわたる日本国民の平和への歩みを十分に評価し、徒に、両国関係を悪化させるような教育、プロパガンダ等を避けるべきであるとの指摘があった。

 中国側からは、靖国問題が歴史問題に関する現在の最大の課題として指摘され、靖国問題が日中関係に憂慮すべき状況をもたらしており、この解決なくしては、日中関係の健全な発展はありえないとの見方が示された。また、靖国問題が、日本の軍国主義化の象徴として、一部では捉えられていることが紹介された。これに対しては、日本側からは、総理が靖国神社に参拝することの是非はともかく、靖国問題ばかりを焦点にして日中関係を捉えることの問題点が強く指摘された。

 参加者からは、歴史問題は、政府間においても国民間においても容易に解決しない難しい課題で、問題を問題としていかに管理していくことこそが重要であるとの意見があった。総じて平等のパ―トナーとして両国が平常心を持って、冷静に対処していくことの重要性が指摘され、一国のリーダーがナショナリズムをあおるような対応は厳に慎まなければならないとの意見があった。また、歴史問題を乗り越えるためには、両国間で、問題を乗り越えようという意思を持つことが出発点であり、両国で非難を行うのではなく、自らの行動を見直すことが重要であるとの指摘があった。

 このような問題意識の下、日中間の歴史問題に関し、日本が軍事主義国となった時期などを、例えばアジア諸国の間の協調的な枠組みの中で研究を行うことで歴史認識の共通化へ向けて努力することで日中間のコンセンサスが醸成できないかとの提案や、歴史認識の共通化に至らないまでも、共通のデータ・ベースを構築することで、歴史認識の共有化に寄与するンフラ整備を行うことが提言された。更に、広い範囲の歴史研究ではなくとも、例えば孫文のような人物を共同で研究することは有益ではないかとの示唆もあった。

 また、これらの研究等を行うため、アジア諸国の中に、アジア・コモンハウスといったような形で、常設的なフォーラムを形成し、共通理解を促進していくことが有益ではないかとの提言もなされ、広い支持があった。このような歴史認識の共有化へ向けた努力のみならず、現実的な対応としての一歩として、両国間の共通の利益が見込まれるエネルギー、環境の分野で協力を促進するなど、共通の目標を持つことが、現実的な解決策につながるとの意見があった。また、幅広く日中友好関係の樹立のため、識者のみならず、幅広いレベルでの理解を促進していくことの必要性が改めて指摘された。