エネルギー・環境問題への対応
1.日中のエネルギー・環境問題における事実の再確認
・エネルギーは国民生活・経済活動に不可欠であるが、その資源量は有限であり、多くは地域的に偏在。また、エネルギーの燃焼はCO2を排出し、地球温暖化等の地球規模・全人類にとっての問題に繋がるため、国際協力による解決が不可欠。・日中は、ともにエネルギーの消費大国、輸入大国、大CO2排出国であり、エネルギー問題に関する利害関係は共通。
・定量的には、一次エネルギー消費量の将来見通しにおいて、日本が少子高齢化により伸びが鈍化する一方、中国の消費量の伸びは著しく、世界全体での伸び率を大きく上回る。CO2の排出量見通しにおいても、2000年~2030年の30年間での増加分の54%がアジア、かつアジアの増加分の56%が中国。
・中国における石炭のエネルギー源に占める割合は将来にわたっても大きく、石炭の有効活用が喫緊の課題。一方、日本においては、石油・石炭への依存度が低下し、天然ガス・原子力の割合が増加する傾向。
・中国を正しく理解するためには、①政府の関与度合い、②どの発展段階にあるか、③総量でなく一人当たりのレベルを見る、といった視点も必要。
・中国における低いエネルギー効率の要因の一つとして、非効率な小規模製鉄所の統廃合が雇用等の問題もあり進んでいない点もある。
2.エネルギー安全保障・資源獲得競争
・世界の石油埋蔵量のうちメジャーのシェアは20%にも満たず、大半は産油国のNOC(国営石油会社)が保有。NOCが保有する鉱区を開放させ、上流部門への投資を活性化させることにより、石油の戦略商品性を薄め、長期的には市況商品とすることが重要。日中共同での第3国における上流開発投資も一つのアプローチ。・中国による産油・産ガス国への投資、巨額の経済協力が批判的に捉えられることがあるが、中国におけるエネルギー安全保障の位置づけや政策、個々の企業のビジネス戦略を客観的に分析することが必要。
・シベリアのパイプライン、カスピ海沿岸(アゼルバイジャン、カザフスタン)のパイプライン等を巡る日中間の思惑の相違は、事実認識が正確に行われていないことに起因するものが大きい。双方が正しく事実を認識した上で、グローバルな視点で意見交換がなされることが必要。
3.省エネ・新エネルギー
・GDPあたりのエネルギー消費量やCO2排出量において、中国の改善の余地は大きく、効率的なエネルギー使用やクリーンエネルギーの活用に関する日中協力が重要。・第11次5ヵ年計画において、GDPあたりのエネルギー消費量の20%削減、エネルギーと環境の調和の取れた発展、鉄鋼・電力産業等における構造改革、再生可能エネルギー(風力、バイオマス、太陽エネルギー等)の活用等が掲げられた点は、従来の中国におけるエネルギー政策からの転換として、評価に値する。
・オイルショック、高度経済成長期の公害等を経た、日本の省エネ技術、公害対策技術は、中国においても有用であり、日本による知的支援が期待。
・再生可能エネルギーについては、一次消費エネルギーに占める割合は大きくなく、象徴的な域を超えないとの見方もある。むしろ、石炭の有効活用や技術革新が、中国の拡大するエネルギー需要への対応としては有効。
4.市場メカニズムの導入
・中国のエネルギー分野における外国からの投資活動を推進。市場メカニズムに基づくリターンが適切に確保されることが必要。・京都メカニズムにおけるCDM(クリーン開発メカニズム)を活用し、日本の技術を活用した中国における環境改善を、マーケットベースで活性化させる。
・パイプライン等の輸送インフラの整備は、自国のエネルギー安全保障の観点ではなく、市場へのエネルギー資源の供給を可能とするという、グローバルなエネルギー安全保障の観点から重要。
・ODA卒業が迫る中、膨大なオイルダラーのアジアへの還流を図るべく、日中が協力してイスラム金融に参入し、オイルダラーを資金源として活用することを検討してはどうか。
5.今後の日中協力に向けた方向性
・戦略的な対話、交流を通じた相互理解を深めた上で、日中エネルギー・環境協力のgrand design、それを実現するためのroad map作りを実施。方法論としては、Breakthrough project(例:日中共同備蓄基地、日中共同上流開発投資、エネルギー・環境分野における日中共同研究等)を一つ作り上げることを通じて、協力の中身をより具体化させていくアプローチが重要。・「競争」ではなく、エネルギー・環境協力の分野における日中「協力」を進めることにより、「政冷」状態を改善させることが、21世紀の新しい日中関係のテーマに繋がる。
・エネルギーと地球環境問題は、表裏一体の問題として、同時解決が必要。
・日本から中国への資金供与・技術供与という従来型の協力ではなく、partnership型の協力へのパラダイムのシフトが必要。
・今後、細目を詰めるための専門家によるsub groupを立ち上げ、事実認識に基づく検討を進め、来年の第3回フォーラムの場において議論を深化させる。
・2008年は、日本がG8サミットのホスト国となるほか、北京オリンピック、米大統領選挙、京都メカニズムの第一約束期間の一年目が重なる節目の年。2008年に向けて日中共同のメッセージを届けるべく、建設的な議論を進める。