言論NPOは5月16日、東京都内のパレスホテル東京にて、岸田文雄・自由民主党政務調査会長をゲストスピーカーにお迎えして、「日本の民主主義の行方と日本が直面する課題をどう解決するか」と題してモーニング・フォーラムを開催しました。
今、民主主義に何が問われているのか
冒頭に行われた講演で岸田氏はまず、国内外の様々な課題に取り組む上でのキーワードとして、「持続可能性」を提示。そして、非効率性などの要因から世界各国で民主主義自体を疑問視する見方が増えているため、民主主義にもこの持続可能性が問われていると指摘しました。
日本国内に関しては、昨今の政治の混乱を政策の是非による対立ではなく、政治や行政に対する信頼が揺らいでいることに起因する対立であるとした上で、これは「これまでとは質が違う」危機であると指摘。そしてこの状況は民主主義の持続可能性にとって深刻な事態であると懸念を示しました。
その上で、「強い民主主義」を実現するためには、「民主主義という制度を使いこなす」ことが大事であり、そのためには政治と有権者の意思疎通による信頼の向上や、国民の自覚・自律、さらには適切に使いこなすための政治家の力量の向上などが不可欠であると語りました。
アジアや世界の秩序が変化する中、日本の役割とは
岸田氏は、中国の台頭やトランプ大統領の登場を機にアメリカが国際秩序の擁護者たる地位から手を引き始めていることを踏まえつつ、「第2位の国が第1位の国を猛烈に追い上げる」と「国際社会で力の空白が生じる」という2つの現象が同時並行的に起こっていると分析。それが国際社会の混乱や不透明感を生み出している背景にあると語りました。
その中で日本の果たすべき役割としては、自由や民主主義、基本的人権の尊重、法の支配、自由貿易など、これまで日本が擁護してきた基本的価値を引き続き擁護していくことに尽きるとし、そうした軸のぶれない外交を続けることこそが日本の外交的な存在感を高めることになると主張しました。
日本が現在直面している課題は何か
国内的な課題に関しては、「与党の政策責任者として」と前置きしつつ、岸田氏はまず経済政策を課題として提示し、具体的には働き方改革、少子高齢化対応などについて言及しました。
国際的な課題としては、北朝鮮への対応を挙げました。情勢が急変する中、メディア等でしばしば指摘されている「日本は蚊帳の外にある」との言説に対しては、言下にこれを否定。「関係各国にはそれぞれ担う役割や強みが異なる」とし、日本は日本としての役割を粛々と果たすべきであるとの認識を示しました。
また来年2019年には、日本が初めて議長国を務めるG20に加えて、アフリカ開発会議(TICAD)、さらにはラグビーW杯など世界から注目を集める国際的なイベントが目白押しであることに触れ、これらを成功裏に終わらせるためにも内政・外交共に安定したものにしていく必要があると述べました。
30年後、どのような日本を目指すべきか
まず昨年12月、自民党内で2050年の社会像を立案する政調会長の諮問機関「未来戦略研究会」を発足させたことを紹介。そこでの議論を振り返りつつ、「30年前、ポケットベルが普及していた頃、今のようなスマートフォンの登場を想像できただろうか」などとしながら、未来を予測することの難しさを率直に吐露しました。したがって、現時点では明確なビジョンはないとしつつ、それでも「不透明で先行きが見えないから悲観する」のではなく、「先行きが見えないということは可能性がたくさんあることだと解釈してチャレンジする」ことが大事であるとし、そうした発想に立脚しながら党内での議論を続けていくことの意気込みを語りました。
その後、参加者との間で質疑応答が行われるなど、活発な意見交換が行われ、盛況のうちに本フォーラムは終了しました。
※モーニング・フォーラムは、言論NPOメンバーを中心にした限定イベントです。各界からゲストスピーカーをお招きして開催します。