「モーニング・フォーラム/ゲストスピーカー 石破茂氏(自由民主党)」報告

2018年6月06日

IMG_4311.jpg 言論NPOは6月6日、東京都内のパレスホテル東京にて、石破茂氏(自由民主党)をゲストスピーカーにお迎えして、「日本の民主主義の行方と日本が直面する課題をどう解決するか」をテーマにモーニング・フォーラムを開催しました。 


国家主権の三要素とは

 石破氏は問題の本質を鋭く突くことで知られますが、今回の講演でもその姿勢が色濃く出ました。石破氏は、父・二朗氏(元自治相)から勧められた哲学者、田中美知太郎氏の著作「市民と国家」(絶版)を通じて、国家とは、国家主権とは、を考えさせられ、果たして日本に国民主権は存在するのか、と問いかけられた気持ちになったそうです。しかし、慶應大学法学部の法律学科だった石破氏でも国家について学んだことはなく、東大出身者でも同じことだったと言います。

 石破氏は、国家主権の三要素を、①国または国に準ずる組織とは結局、領土を有し、②アイデンティティを共有する国民を有し、③統治機構を具備しているもの、と指摘。そして、これを守るのが国家の独立であり、それを守るのは軍隊で、国民の生命や財産、公の秩序を守っているのは警察と説明します。

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日本に国民主権は存在しない

 国家主権を習っていなくても、小学校の時から国民主権というのは教わり、日本国憲法の三大原理は、国民主権、基本的人権の尊重、そして平和主義となっています。しかし、田中美知太郎氏は著作の中で、「日本に国民主権なんか存在しない」と、挑戦的な議論を展開していきます。

 石破氏は、「国民主権というからには、議員選挙とか首長選挙で権利を行使する時に、自分が為政者の立場だったらどうするか、ということを考えて、意思表示ができなければいけない。それがなければ、国民主権ではない」と指摘した上で、本当に主権者たる国民は、主権者になりえているのだろうか、せめて選挙の時くらいは考えてほしい、と石破氏は呼びかけます。

 また、石破氏は、投票率の低下についても、民主主義が機能するためには、それに参加する権利を持つ者が、可能な限り多く参加することであり、投票を義務制にすることを考えたほうがいいのではないか、とも提案しました。

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300年後の日本人は423万人、どうなる日本

 さらに石破氏は、日本の将来について、財政の健全化を考えないのは無責任の極み、と反省を求めました。日本の人口は、2100年には5200万人、300年たつと423万人にまで恐ろしく減るとの予測を紹介しながら、人口構成が昔と違い逆三角形となる中、どのようにして財政や社会保障を維持するのか。これを追及するのが日本の一番の課題であり、「選挙の時にバラ色みたいなことばかり言って、有権者はぎりぎりまで考えずに選ぶということで、民主化が機能するのか」と鋭く迫りました。


でたらめな憲法議論

 一方、憲法改正の議論は、「でたらめ」と口を極め、自民党の改憲案に対して石破氏は、「陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊は戦力ではない。戦力ではないから軍隊ではない。なぜ、戦力ではないのかと聞くと、必要最小限度だからだという。必要最小限度というのがどうしてわかるのか。北朝鮮に対して必要最小限度のものが、中国、ロシアに対して必要最小限度なのか。必要最小限度なので戦力ではない。戦力ではないから、軍隊ではない。ということを、聞いてわかる人が一体どこにいるのか」と語り、防衛相を務めた人の広く深い知見から指摘しました。


議員が忠誠を誓うのは、総理官邸、党本部ではなく、主権者の国民

 最後に石破氏は、「私たちが忠誠を誓うのは総理官邸、党本部でもなく、それは主権たる国民、自分の有権者に対して本当に誠実であるかどうかだけが、政治家に求められるものだ」。そして言論というものを、どう生かすかは、政治といかにコラボするかであり、言論の力へ信頼を寄せました。

 そして、政治と有権者の間に緊張感を取り戻していかなければ、民主主義は本当に根底から崩れ、「かつて日本という国があった」という日が来てしまうという危機感を示し、講演を結びました。

 その後、参加者との間で質疑応答が行われるなど、活発な意見交換が行われ、盛況のうちに本フォーラムは終了しました。

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※モーニング・フォーラムは、言論NPOメンバーを中心にした限定イベントです。各界からゲストスピーカーをお招きして開催します。

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