2022年1月27日、言論NPO代表の工藤泰志は、日本記者クラブが主催する記者会見で講演を行いました。この会見には、日本記者クラブに加盟するメディア各社の記者、論説・編集・解説委員、外国メディアの在京特派員、各社OBのフリージャーナリスト等、オンラインも含め、約60人が参加しました。
この中で工藤は、石橋湛山の遺志を継ぎ、活発な政策論争を起こすため雑誌『論争東洋経済』の編集長を務めていたこと、その雑誌が20年前に休刊する際、「言論不況」という言葉を掲げ、日本が直面する課題を先送りし、未だに日本の針路を描き切れないのは政治の責任であると同時に、メディアにも責任がある、と自戒の念を込めて問題提起したことを紹介。言論側にいる自分たちが、課題解決の意志を持たなくてはと考え、非営利で議論の舞台をつくろうと言論NPOを設立した経緯を語りました。
課題解決の意志を持つ、言論の重要性は今も変わってない
工藤は20年を迎えた言論NPOのこれまでの活動として、まず政治と有権者を繋ぐ取り組みである、マニフェスト評価を振り返り、自身が行った幾つかの世論調査にも言及。代表制民主主義の仕組み自体に市民が期待を失い始めており、こうした傾向は日本だけではなく世界的にも同様だと指摘し、バイデン米大統領が語った「民主主義の有用性」を引き合いに出し、民主主義という仕組みは私たちが直面する課題の解決や不安に役立っているのか、その有用性や信頼を回復するための努力がこの日本でも必要だ、と訴えました。
また、アジアや世界で繰り広げる民間外交では、地政学的な対立に加え、感染症や気候変動などの危機が様々に関連しながら同時に進んでいることを指摘し、世界の分断をこれ以上悪化させず、世界が協力すること、アジアでの紛争を回避するためには、民間の取り組みが、これまでにも増して必要になっている、と語りました。
その上で工藤は、民間外交の役割は、政府間外交の環境づくりだと当初は考えていたものの、作業を通じる中で、国境を越えた様々な課題では、解決に向けたアジェンダ設定や合意の形成に、政府とは別の発想を提供していくことが、本来の民間の役割ではないかと気が付いた、と語りました。
この局面で民間が勢いを失うとしたら、致命傷になりかねない
最後に工藤は、インターネットの発展など言論環境は様変わりしたが、米中対立下で国家を軸にものを考える風潮が高まる状況下だからこそ、課題解決の意志を持った言論の重要性は変わっていないとの認識を示し、こういう状況で民間の動きが勢いを失うとしたら、致命傷になりかねない、と語りました。
その上で、課題に正面から向かい合い、課題を解決していくためには、市民こそが、世界の変化や日本の課題を、自分自身で考えていく力を身に着けることこそ重要であると指摘。言論NPOはそのために、「知見武装」という取り組みを提案し、様々な材料を提供していくことへの強い決意を語り、講演を締めくくりました。
その後、いくつか会場・オンラインから質問が出され、記者会見は終了しました。
この会見の模様は、youtubeで全編がご覧いただけます。