出演者:出演者:池本大輔(明治学院大学法学部政治学科教授)
内山融(東京大学大学院総合文化研究科教授)
吉田徹(同志社大学政策学部教授)
司会者:工藤泰志(言論NPO代表)
世界55カ国の民主主義の世論調査は、言論NPOがフランスのフォンダポール財団など7団体で昨年の夏に行ったもので、その分析結果が明らかになったことで、「世界の民主主義はなぜ信頼を失ったのか」をテーマとした言論フォーラムを開催しました。
議論には池本大輔氏(明治学院大学法学部教授)、内山融氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)、吉田徹氏(同志社大学政策学部教授)が参加し、司会は工藤泰志(言論NPO代表)が務めました。
今回の世論調査結果では、世界各国で民主主義の様々な機能に関して信頼低下が浮き彫りとなっています。
議論では、世界の民主主義の信頼が後退している背景に世界で進む経済的格差や分断の拡大に対して民主主義が解決策を提示できていないことや、その他にも、民主主義を支える規範そのものが壊れ始めていることや、SNSのエコーチェンバー現象が分断を拡大させていること、エリート層と一般層の相互不信などといった要因も提示されました。
その中でも、日本の傾向は際立っており、政党や議会、政府などへの信頼が世界55カ国やG7各国と比べても低いものとなっており、これらに関しては、日本では代表制民主主義の回路が目詰まりを起こしている、との指摘がありました。
議論では、こうした日本における政治不信と代表制民主主義の機能不全をどうするか、に議論が集まりましたが、調査結果では日本人の中に民主主義、それ自体に対する期待は根強く残っている、ことも明らかになり、民主主義の修復をどうするかは私たち次第だ、との意見が出されました。
ただ、日本の調査では、議会や政党の制度疲労だけではなく、学校や労働組合を含めた社会の制度自体が制度疲労していることも明らかになり、特に非営利組織に対する信頼度が低いという結果が着目され、「デモクラシーを支える自発的組織・結社の力が弱い」ことが民主主義の脆弱性にもつながっていると指摘され、「まず社会の中の横のつながりを作り直さないといけない」と、市民社会が民主主義立て直しのカギとなるとの発言が各氏からは相次ぎました。
その際に、市民社会に根差した組織政党が発達してこなかった政党側の改革についても発言がありました。その上で政治と社会をつなぐ多様なチャネルや、そのアクターを増やすための仕掛けづくりが必要であり、市民の政治参加の回路を増やすことが必要だとの提案も相次ぎました。
議論を受けて最後に工藤は、「分厚い市民社会をつくためにプラットフォームを作るべきとの指摘は非常に重要だ」と応じつつ、言論NPOとしてもそうした取り組みを今後も進めていく考えを強調。そのための作業を再開したいと語りました。
⇒世界55か国で実施した世論調査結果はこちら
⇒代表・工藤のインタビュー「強い政治不信 拭う決意を」(8月17日付・読売新聞朝刊)はこちら
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