内山融
(東京大学大学院総合文化研究科教授)
回答者の49%とほぼ半数が「代表制民主主義は日本で機能していない」と答えていることは、日本の有権者が政治家のことを自分たちの「代表」として信頼していないことを意味する。実際、「日本のどの機関を信頼しているか」との質問では、国会や政党への信頼が著しく低くなっている。衆議院は英語で"House of Representatives"(直訳すれば「代表の院」)だが、その名前に見合った役割を果たしていないということである。
代表制民主主義が機能していない理由として 「選挙のときしか国民を見ておらず、国民に向かい合う政治が実現していない」と答えた回答者が69%を占めている。このことは、日本の民主主義における「熟議」の不足を示している。選挙のときだけでなく、常に有権者との熟議を重視する態度が政党・政治家には欠かせないだろう。
二大政党化と政権交代のしやすい選挙制度よりも、多様な民意をより正確に反映する比例代表制度を重視する人が49.3%と半数近くにのぼっているのも注目される。小選挙区比例代表並立制という現行選挙制度が政党システムの断片化を生んでいることを考えても、選挙制度のあり方を再検討する時期に来ているように思われる。
吉田徹
(同志社大学政策学部教授)
「日本の代議制民主主義は機能しているか」という問いに、実に49%(前年比27ポイント増)が否定的回答をしていることに大きな危惧を覚える。機能していない理由としては、政党が国民に向かい合う政治が実現しておらず、課題解決能力も持っていないこと、政治参加の意識が低いということが挙げられており、民主主義の根幹をなす「競争」と「参加」の2つの次元で日本政治が期待に添えていないことがわかる。
日本国憲法は前文で「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」と謳っているが、そのような理念がもはや空文化している状況にあるといえよう。
日本の政治不信は、これまでも他先進国と比べても決して低い水準にあるとは言えず、最近の地方政治での展開もこうした政治不信と無関係ではない。
代議制民主主義が機能するには、様々な中間団体(NGO/NPO、労働組合、宗教団体/組織)の介在が必要だが、これらに対する信頼も薄い。
他方で、統治形態としての民主主義に対する期待は依然として高い。日本は制度的には民主主義国として十分な資格を備えている。これからは、いかに実質的な民主主義を作り上げていくことができるかがますます問われていくことになる。