放送第19回目の「工藤泰志 言論のNPO」は、これまでに番組にいただいているリスナーからのご意見やご質問に、工藤が答えました。まだ春遠く感じる季節ですが、日本が「春」を迎えるために、何をすれば良いのか考えます。
ラジオ放送の詳細は、こちらをご覧ください。
「ON THE WAY ジャーナル
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「リスナーの質問に答える」
工藤: おはようございます。言論NPO代表の工藤泰志です。毎朝、様々なジャンルで活躍するパーソナリティが、自分たちの視点で世の中を語る「ON THE WAYジャーナル」。毎週水曜日は「言論のNPO」と題して、私、工藤泰志が担当いたします。
今、僕が非常に嬉しいことは、春が近づいて来たな、ということなのです。というのも、僕の住んでいるマンションは高台にあるのですが、日の出が見えるのですね。太陽が出てくるところが見えるのですが、冬になると目の前のマンションに隠れて太陽が出てくるところが見えなかったのですよ。でも、今日は太陽が見えたのですね。ということは、太陽の位置がだんだん春から夏の方向に向かい始めているという状況で、季節は間違いなく春に向かって来ているな、ということを実感して、非常に嬉しくなってきたのですね。この国も、ワクワクするようなそんな気持ちになれたらいいな、という風に思っている今日この頃です。
今日は、この間、ON THE WAYジャーナルの私のところに、メールとか便りが着いているのですね。そのメールや便りにお答えする中で、私が感じていることについて、少し話していきたいと思っております。
山崎: おはようございます。ON THE WAYジャーナル「言論のNPO」スタッフの山崎でございます。よろしくお願いします。
工藤: よろしくお願いします。
山崎: 今日は、工藤さんが今お話になられたように、皆さんからのメールをご紹介していこうかなと思っておりますので、お答えいただければと思います。まず、お二方のメールを紹介させていただきます。
一人目です。ラジオネーム"DR880さん"でしょうか、30代の男性の方からいただきました。いつも楽しく聞かせて頂いております。
工藤: ありがとうございます。
山崎: 『放送でよく聞く「財政破綻する日本」についてですが、その後、どうなるのでしょうか。今できる事は、何なのでしょうか。』
もう一方ご紹介させていただきます。ラジオネーム"やす"さん。
工藤: この方、僕の名前と同じですよ。パクッてるんじゃないんですか。
山崎: それはないんじゃないですかね。
工藤: ないと思います(笑)
山崎: 20代の男性の方から。男性ということで、工藤さんと同じということですね。
『僕は今23歳のサラリーマンですが、将来の事を考えると不安です。「時代の変化」とは言いますが、時代の変化に政府も対応できていないのではないでしょうか。僕たちの世代がこれからを支えていくにあたって、僕たち個人は何をしていけるのでしょうか。』
という、2つのご質問でございます。
自分たちが未来を考えるべき時期
工藤: このお二方の思っていることは、非常にその通りというか、正しい感想だと思うのですね。実をいうと、僕も昔は、政治家や社会の人たちがやることというのは、ちゃんと考えてやっているのではないかと思っていたのですね。だから、それを理解していけば、日本は何とかなるのではないかと思っていたことがあるのですが、僕もメディアの世界にいて、今は非営利の世界に入って世の中を見ていると、意外にみんな考えていないですね。考えていないというよりも、視野が日本の未来とか、国民レベルに広がってないのですよ。私、この前、ある人と会うために、首相官邸に行ってきたのですが、その時に言いたいこと言ってきたのですね。つまり、政治家の国会答弁、今、予算委員会とかやっていましたので、ずっと見ていると、お互い批判し合っているだけで、全然国民と向かい合っていないのですね。これは、なぜなのだろうかと思っていたときに、みんなが言っていたのは、政治家の視野が永田町ぐらいしかないということでした。官邸から見ると半径1キロ以内しか無いわけですよ。そこの中で、権力闘争をやって、自分たちの次の選挙にどちらが有利かとか、そういう感じしかないのですよ。つまり、政治が語っていることは、あくまでも自分たちのことで、国民に対して何かを言う、という感じがないのですね。そうであれば、僕たちが政治家とか何かに、全てを任せるのではなくて、今の状況や日本の将来について、自分たちで考えないといけないという段階にきたのではないかと思うのですよ。そういう意味では、非常にいいチャンスだと思うのですよ。そもそも、民主主義というのは、僕たちが一票を投じて政治家を選んでいるのであって、その時に、政治家に全部任せるから徹底的にやってくれ、というのではない。一回僕たちはそこに戻らなければいけない。つまり、政治家を選ぶ権利を、僕たちにもう一回戻さないといけない、という段階だと思うのですね。
この財政についても社会保障についても、この今の日本の状況が、未来に向けて持続可能ではないということですね。このままいったら、未来が全く見えない状況なのですよ。で、実をいうと、政治家と話をすると、みんな知っているのですよ。
山崎: 状況が分かっているということですか。
政治家は課題解決の覚悟ができているのか
工藤: 分かっている。中には分かっていない人もいるのですが、自分たちが、何が何でも命がけで解決していく。国民にも、こういう状況だから理解してくれ、と説得していく。そういう人が少ないのですね。だから、選挙の時にはそれよりも、状況は知っているのだけど、今はこういうことを言うと、次の選挙で自分が危ないのではないかと思ってしまう政治家が多いわけです。
山崎: 多いですね、本当に。
工藤: でも、今のままいくと、間違いなくはっきりしていることがあるわけですよ。今のままが続いたら、日本の国は財政破綻しますよね。で、実を言うと、僕がメディアにいたときも、財政破綻のリスクは、色々な人たちが警告していたのですが、色々な理屈がついて、まだ破綻しないじゃないということになる。そんなこと言うから君はオオカミ少年だと言われたりしました。別に僕はオオカミ少年ではないのですが...。
バランスシートを見ると、負債はあるけど資産があるのではないか、だからそれで見合っているのではないかとか、そういう議論になってしまうのですね。実を言うと、このバランスシートで考えることは間違いで、バランスシートが仮に見合ったとしても...本当は見合っていないのですよ。年金ということの保障がないから、隠れ債務があったり、色々なことがありますから。でも、一番大事なのは資金繰りなのですよ。つまり、政府は、毎年国債を出している訳ですよ、来年度は44.3兆円。この前財務省が出した試算で見ると、このままいけば、24年度は49.5兆円、25年度は51.8兆円、26年度は54.2兆円。
山崎: どんどん膨らんでいく。
今の日本は持続可能ではない
工藤: どんどん膨らんでいくわけですよ。で、その時の借金よりも税収の方が遙かに少ないわけですね。つまり、家計でいえば、税収よりも借金がどんどん増えているということは、政府も認めているわけですよ。そうすると、問題なのは、国債を発行したときに、誰が買ってくれるのか、ということですよね。この前、S&Pというアメリカの格付け会社が、日本国債をネガティブにして、マイナスにダウンさせたのですね。そうしたら、マーケットがちょっと気にしたよね。で、世界的にもそうですし、日本の中でも金利が少しずつ上がっているわけですよ。
金利が上がるということはどういうことかというと、国債の価格が下がるということなのですよ。そうすると、国債を買っている金融機関とか何かが、自分の持っている国債という資産がどんどん目減りして、下がっていくわけですね。そうすると、これはもう買えないよとなる。それから、全ての国債のファンディングという調達を海外投資家も一部やっているわけですよ。そういう人たちが、格付け機関の判断にリスクを感じて買わなくなると、金利がまた上がってきて国債が暴落ということになる。実をいうと、財政破綻のリスクというのは、国債に対する信頼性によって決定するわけですよ。そうすると、市場に対する信頼性を確保するためには、実を言うと、政府がちゃんと財政再建に向けて取り組んでいること、何が何でもやるのだ、ということを示す必要があります。それだけではなくて、日本の潜在成長率を上げて、つまり税収が将来増えていくような形に取り組んでいくのだということを、強烈な覚悟でマーケットに伝えないといけないのですね。それを今の日本の政治ができないというところが、非常に厳しいわけですね。
そうなってくると、国債も厳しい。それから社会保障も、特に若い世代ですが、自分たちの老後に対してどうすればいいかということが見えないわけだから、すると自分たちが将来どうなるかわからないじゃないですか。そうなってくると、未来というのは、人に任せていられないはずなのですね。
山崎: そうですね。
自分らが主役だという意識が必要
工藤: だから、自分たちが考えないといけない。僕は、今のお二方の質問や、意見に関しては、だからこそ自分たちが問われているのではないか。自分たちが当事者として、社会をもっと見ていくとか、変なことには騙されないとか、自分たちでも考えていくということが必要だと思います。その中で、自分たちの投票行動に結びつけていく、というサイクルが日本の社会の中で始まればいいのですよ。今、何が問題かというと、若い世代のみなさんが、投票していないことです。僕は政治家と話をすると、若い世代は全然恐くないというわけですよ。恐くないというのは何かというと、投票しないからだと。それでは話にならないわけで、やはり今の時代のこの状況というのは、まだまだ変えられるのですよ、僕たちは。だから、自分たちが主役だということに気付く必要がある。これは、当たり前の議論のような感じがするのですが、それに気付く、目を覚ます契機になっていくという状況が必要な段階なのだと思います。
あとは、騙されないというところで見ると、メディア報道だけでは無理だと思いますね。さっき言った、官邸から見て1キロぐらいしか政治家の視野がないということは、メディアも結構それに近くて、政治部の人たちと話をしていると、やっぱりそういう発想になってしまうわけですよ。権力闘争というか、政局の話ばっかり。なので、国民のレベルから見てどうすればいいか、ということを考えなければいけない、そういうメディアが今後必要なのですね。だから、やっぱりメディアだけではなくて、自分で考えるために、色々なものを見たり聞いたりするようなことを、意識的にやっていくしかないと僕は思っています。
山崎: なるほど。やっぱり、国民として、もう一回個人としての意識改革が必要だということも含めて、今後の政治、日本をよくするために、政治家選びというところも、一つひとつ興味を持って望んでいただきたい、ということも一つです。
工藤: そうですね。僕が小さいときに、よく田舎で「長いものには巻かれなきゃダメなんだよ」っていつも言われていたのです。でも、巻かれていたらダメになっちゃうから、やっぱり自分で目を覚ますしかない、というのが僕の気持ちです。だから、このON THE WAYジャーナルでは、徹底的に本質というか、背景をきちんと説明していくように努力をしますので、ぜひそれを聞いて、また意見を寄せていただければと思っています。
有権者側に、日本の変化の覚悟はあるのか
山崎: あとお二方、簡単にですがご紹介させていただきます。
お一人目。ラジオネーム"Kさん"。「国政選挙の結果には、浮動票と呼ばれる人たちが大きくかかわっています。それを動かすのが有識者であると思いますが、生活の中で深刻に悩み、研究し、特定の専門的基礎をもっているわけではない薄っぺらな有識者と呼ばれる人たちの発言、特にジャーナリスティックな発言がメディアに乗せられて一時的に世論を左右する現状に、私は危機感を持っています。隠れている賢人を発掘してリーダーや参謀に育て、努力することも、このようなNPOの一つの役割になるのではないでしょうか。」
もう一方。ラジオネーム"Wさん"。この方は、イギリスのロンドンからメールをいただいております。海外から日本を見ていらっしゃるということで、「私は、今海外から日本を見ていますが、仮に龍馬のような人間が出てきても、本当に日本を変えられるのか、やっぱり、社会の隅々で既得権を持っている人間がそれを若い人や女性に譲る覚悟がないとだめだと思うのです。今しかないけど、今政界にそういった人材(小泉さんのような人)はそんなにいるとは思えません。民間にもあまりいそうにないのが、もっと悲劇なのでしょうか。」とうご質問です。
工藤: 僕も全く同じように感じていまして、最近よく思うことはオピニオンリーダーという人たちが日本の中にいるのだろうか。つまり、何か日本が変わったり、困難になったときに、健全にこういうことを考えなければいけないのではないかとか、そういう声がなかなか聞こえなくなってきましたよね。やはり、単なる批判だけという感じになってしまっていて、官僚が悪い、政治家が悪いとかですね。今のお二方の発言は、その状況、風潮を結構言っていると思うのですね。健全な社会には、健全な議論が必要なのですが、ただ議論している人たちが、もう少し目覚めなければいけないわけですよね。例えば、日本の社会には、知的な人たちが本来、沢山いるわけですよ。政治家もそうだし、大学の先生もそうだし、色々なひとたちがいっぱいいるじゃないですか。その人たちが、経済界も含めて、どういう主張をしているのだろうと思うのですが、あまり聞こえてこないと思うのですね。つまり、日本の社会の論壇なり、メディアの役割が非常に形骸化してしまっている。ただ、一方で、その人たちが全てかというと、社会の中にはもっとこれからのリーダーになりそうな人たちが、結構いるのですよ。
山崎: そうですか。
新しいリーダーとは何なのか
工藤: そのリーダーって何なのだろうかと思うのですね。この前も言ったのですが、課題解決をしている人たちなのですよ。大きな話ではなくてもよくて、地域でもいいし、色々なことについて自分で何かしないといけないということに関してある意味で志を持ったり、給料が安くても働いて、何かを変えていく、まさにチェンジメーカー。何かを変えられるという人たちが結構いるのですね。ただ、その人たちは表には出ていない。なので、その人たちをもっと出さないといけないと思っているわけですね。つまり、民主主義というのは非常に大事なのですが、民主主義とか自由な社会というのは、ただお任せしていたらダメになってしまうのですよ。つまり、僕たちが守らなければいけない自由な社会というのは、色々な選択肢を選べる社会だと思います。こういう生き方ができるのではないかとか、こういうことをしてみたいとか。それを自由に自分たちが決めるという社会が、僕は大事だと思うのですね。
つまり、全てが政府なり国だけがやってしまうという社会は、非常に不自由な感じがしているのですが、その自由な環境を守ろうと強い意志を持っている人たちが、まさに挑戦していくとか、新しいビジネスをやったり、社会の中で色々なことをやったり、そういう人たちのドラマの連続の中で、日本が変わっていくわけですね。
だから、やはり一般の人たちもそうだけど、そういう人たちはなおさら責任感を持って、今の日本は未来にこれから立ち向かわなければいけないわけだから、今度はもっと発言を強めなければいけないと思うのですね。やはり民主的な仕組みを自分たちで使いこなしていく。そういう強い意志を持つ人たちがいないといけないし、その意志を持った人たちが突破していかなければダメなのですね。突破していくと、それを見て誰かが、あの人たちかっこいいなとか、がんばっているなとか、俺たちもできないだろうか、といってどんどん循環が始まるじゃないですか。そのサイクルとか...「良循環」と言っているのですが、それが日本の社会で起きてくると、多分、目に見えて、日本が変化したということを感じることになると思います。さっき、ロンドンからメールをくれた人も、龍馬だけじゃダメでみんな変わらないといけないのではと。つまり、有権者が変わらないといけないという話をしているのであって、そういう流れを、起こさなければいけないタイミングにきているという感じがしているのですね。そして、その主役は僕でもないし、色々な専門家や、政治家だけでもなくて、皆さんなんですよ。皆さんが、まず主役なのだという時代に入ったということだから、そういうことを考えて動いて、そのいいことが成功体験として色々な形で伝わっていく、「見える化」していくという社会が、これから始まろうとしているので、ぜひ皆さんには挑戦してほしいと、私は思っています。
僕らがまず突破する
山崎: ある意味、国民からしたら、本当に一つのチャンスでもあるということですよね。これからの日本を、自分たちが担っていく、後世に残していくための一つのチャンスであるということですよね。
工藤: だから、その人たちには、どんどん活躍してほしいし、守る姿勢ではなくて、自分たちが攻めていって、この可能性を現実にすることによって、日本が新しい転機を迎えるので、だからそういう形になってほしいし、僕のこのON THE WAYジャーナルも、そのお役というか、何かお手伝いをしたいと思っています。実は、メールやお便りがまだまだ届いているのですが、日本のメディアだけ見ていたら、こんなこと分からなかったという声が結構あるのですよ。それが、やっぱり僕たちの責任だし、僕たちもそういう形での議論をしますので、もっともっと声を寄せてほしいと思っております。今日、ご紹介できなかった人はごめんなさい。また、色々な形で紹介したいと思っております。
ということで、時間になりました。今日の内容は、言論NPOのホームページでも見ることができます。また、どんどん意見を寄せていただいたら、それをまた、必ず紹介して、僕と皆さんで対話できるようなチャンスをつくっていきたいと思っています。日本の未来は、みんなで考えよう、ということで、これからもやっていこうと思っております。今日は、どうもありがとうございました。
(文章・動画は収録内容を一部編集したものです。)
放送第19回目の「工藤泰志 言論のNPO」は、これまでに番組にいただいているリスナーからのご意見やご質問に、工藤が答えました。まだ春遠く感じる季節ですが、日本が「春」を迎えるために、何をすれば良いのか考えます。
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