2011年の世界の潮流の中で、日本は何を考えればいいのか

2011年1月19日

 放送第16回目の「工藤泰志 言論のNPO」は早稲田大学教授の深川由起子さんにインタビュー。2011年とは日本にとってどんな年か?世界の中の日本の位置づけなどを議論しました。
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「ON THE WAY ジャーナル
     工藤泰志 言論のNPO」
― 2011年の世界の潮流の中で、日本は何を考えればいいのか

 
(2011年1月19日放送分 19分40秒)

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「2011年の世界の潮流の中で、日本は何を考えればいいのか」

工藤: おはようございます。ON THE WAY ジャーナル水曜日。言論NPO代表の工藤泰志です。毎朝様々なジャンルで活躍するパーソナリティが、自分たちの視点で世の中を語る、ON THE WAY ジャーナル、毎週水曜日は、私、言論NPO代表の工藤泰志が担当します。

 さて、新年もまだ1月で始まったばかりですが、今日は少し大きなテーマで話をしてみたいと思っています。僕たちは、「日本の未来」についてずっと言ってきていたのですが、未来をつくるための戦略というものを、どのように考えればいいのでしょうか。実を言うと、僕たちのNPOでは、4年前にそういうことに挑戦したみたことがあります。その時は、1つの方法論がありました。まず、日本の生き様とか生きる道を考えるときは、世界がどういう風に変わっているのか、ということを考えなければいけないといった、世界の潮流の変化を考える。それから、日本の強さ、弱さをきちんと考えなければいけないわけです。そして、強いところを伸ばしていかないとダメなのですね。それから、最後は、日本としてどういう国になりたいのか、何をしたいのかということ。この3つがあって初めて戦略というものはつくられるのですね。僕たちは4年前に日本のパワーアセスメントということで、日本の評価ということをやりまして、それがかなり大きな話題になったことがありました。今回、僕は日本の未来ということを考えていますので、折角の機会ですから、世界の潮流を知りたいと思いました。つまり、世界では大きく何が変わろうとしているのか、その中で日本は何を考えなければいけないのか、ということを考えたいというのが今日のテーマです。

 そう考えていたら、僕の友達にぴったりの人がいたのですね。まさに、アジア経済の専門家で、早稲田大学の教授で深川由起子さんという女性です。非常にズバズバと言うので、初めて会う人はびっくりしてしまうのですが、かなり本質的な話をされる方なのですね。なので、色々と頼んでいたら、時間が取れて話を聞くことができました。彼女に話を伺って、それをベースに、「2011年、世界の中で日本は何を考えればいいか」ということを、今日は皆さんと考えてみたいと思います。

 では、早速、深川さんの話を聞いてみたいと思います。


2011年の世界は構造変化がはっきりしてくる

深川: 私は、2011年は世界が向かって行く構造変化がはっきりしてくる年だと思います。いわゆるG7はみんな経済苦境にあり、財政面での出口が見えない。日米欧が揃ってここまで悪い時期は稀でしょう。そこに新興の大国が台頭している。いわゆるBRICsはみんな大国意識が強く、しかもG7が仕切ってきた世界や国際秩序に歴史的な反発を持っているわけです。その他小規模な新興国も心情的には同様なところがあり、南北の対立が顕在化しがちです。南北対立は少しも動かないWTO交渉やCOPなどの環境関連に止まらず、通貨や領土や歴史問題にも及び、G7が仕切ってきた世界を変えたいという動きが表面化し、これまではグローバル化の中に埋没していた「国家」というものに焦点が当たる気がします。

 殊に財政危機の欧州各国が中国への支援を頼まないといけなくなる局面は多いでしょうし、アメリカが中国の資金フローに依存する構図も変わっていません。新興国とG7の力の交代が鮮明になってくると思います。そうすると、もともと経済力しかない日本という国の経済苦境はパワーの凋落に拍車をかけるでしょう。

 国際社会の中で大国として生きるか小国として生きるかではゲームが違いますが、日本は今までは(経済)大国だったわけです。国連の分担金はまだ2位です。しかし、経済停滞が続くうちに高齢化が進行し、この過程には「大」からダウンサイズしていく自主的な戦略がありませんでした。よって国際的には未だ「大」の責務だけが残り、それ故に国内には未だ「大」国だった過去のイメージを払拭できない二十世紀型自画像を持つ国民が残されました。「中」規模国家という自画像模索と、「大」国の残像の混在を整理し、自分がどれくらいのサイズの国として認識して勝ち組になれるところを見つけられるかが20011年の課題だと思います。それについて国民のコンセンサスをつくっていくということです。


日本は「中」レベルの国に見合った戦略を考える時期

工藤: 日本はもう「中」規模国家なわけですね。いつ頃から「中」になったのですか。

深川: 象徴的には中国に抜かれた2010年ですが、あるいは東アジア危機について期待されたリーダーシップをとれなかった2000年ぐらいなのかもしれません。この頃に購買力平価では既に中国に抜かれつつあったわけですから。

工藤: 国民とそういうことをベースにして議論し、どういう風に日本が生きていくかということを提示しないといけない段階にきているわけですね。そうすると、2011年ですが、EUは厳しくなるのですか。

深川: EUは厳しくなると思います。財政危機からの出口がみつからず、新しい成長戦略やイノベーションも目立たないままです。景気のバッファーだった移民との摩擦も起きています。人権につながる福祉社会は欧州の価値観そのものだから看板は下ろせないし、厳しい調整が続くでしょう。

工藤: つまり、G7が崩れ始めてくるわけですか。


日米欧はババ抜きゲームの段階

深川: EUは財政危機。アメリカは、ずっと体力はあるが失業率の高止まりが社会を揺るがす点で変わらず、財政危機が先に来るか、基軸通貨の危機が先に来るか、両方一緒に来るか分からない。日本は言わずもがな。日米欧で誰が一番危ないのかというババ抜きゲームが続いている気がします。

工藤: EUが崩れればどうなっていきますか。

深川: 失敗すれば統合EUは分解するのでしょう。アイスランド、アイルランド、ギリシアぐらいならまだしも、スペインやポルトガルが危機になれば統合の維持は難しいと思います。小国はEUから離脱すれば通貨は切り下げられますし。ここで問題となるのは分解するか、連帯責任を続けるかの政治的決断ですね。今はまだドイツが頑張っているので、政治的意思が堅いわけです。しかし、ドイツ国民が「やめた」となれば分解圧力は増すでしょう。

工藤: 分解すればどうなりますか。

深川: 分解すると、一部はまた小さい国々に戻るのでしょう。ギリシアとかアイルランドとかは、多分通貨が暴落して、その中で輸出振興や観光振興などを考えてもらうしかないでしょう。しかしEUにとっては域内の不良債権を切り離せることの意味は大です。財政統合はしていないが、金融だけは統合されているという矛盾は大きいと思います。

工藤: すると、日本がそんな国際政治上の中でダウンサイズするには、どうすればいいんですか。


日本の課題は、一人あたりの所得をどう上げるのか、だ。

深川: トータルのGDP規模が中国より小さくなるのはどうでもいい話で、問題は1人当たりの所得を世界の中でこれ以上貧しくしないようにすべきです。バブル崩壊前は2位でしたが、そこからヨーロッパが上がりましたので、今はOECDの中でやっと中位でしかない。また、格差ばかりが話題になりますが、維持不能な財政支出で短期の格差を埋めるより、機会の平等の維持を図ることが重要と思います。

工藤: それを最低限維持するということですか。

深川: これ以上は落とせません。むしろ上げないといけない。当たり前ですが、1人あたりの所得は生産性を上げ、成長し、雇用が増えれば上がるわけで、その大前提はデフレ解消ということでしょう

工藤: そのためにはどうすればいいのですか。

深川: やはり思い切った構造改革と経済連携の組み合わせしかないと思います。。
工藤: 後は、日本の構造改革ですね。


軸は経済連携

深川: ヨーロッパの一人当たり所得が上がった過程をみると、ドイツやフランスが1カ国でやっていても、あんなに上がるわけはありません。みんながEUという枠組みで5億の市場を作り、為替リスクのないビジネスを拡大したから上がった面が大きいと思います。この経験をみれば日本と国内体制が比較的近く、価値観が似た国、例えば韓国、台湾、香港と、ASEANの上位国、この辺とはもっと深い統合を追求すべきです。関税を引き下げるだけではなく、日本も農業を開放しなければいけないし、結びつきの強いサービスとか人の移動をもっと自由にする。しかし、深い統合には競争条件とか人の移動による社会不安の問題もあるので、相手がある程度共通の体制も持っていて、犯罪の取り締まり協定とか、国内の制度面が整っている国から結束を高めていくべきだと思います。そうすれば、大体5億人位の市場ができ、やっとEUと同じくらいになります。後は「事実上の」統合が進んでいる中国とインドが加われば、日本は欧米に比べてさえ、ずっと地政学的に恵まれたポジションにあると思います。となり、中国の13億、インドの10億も統合が深まることになります。


工藤: 日韓のFTAやASEAN先発国の高い水準で完成させながら進むわけですね。その場合は自分も農業を開放すると。それに合わせて日本の構造改革をやれるかどうかですね。

深川: アジアに対しての農業市場開放は向うも大した生産性ではないので、今、TPPで議論されている米国への開放に比べれば大したインパクトはないはずです。しかし、アジアの皆さんに一番先に開放しますということは、政治的にはパフォーマンス効果があるわけです。そういうことを、政治家がやらないといけないわけです。


工藤: それができると、その次はどうなるのですか。

深川: 日本自身も、他のアジアも既に中国との経済的紐帯は濃密なので、結局は中国を視野に入れることになります。日中は、経済統合の制度化はどうあれ、もう今更別れられない関係です。特に経済界は。しかし他方で、中国の自己主張願望に基づく一国主義を修正するには、もはや今の日本の力では足りず、必ずアメリカとの関係も必要なわけです。昔みたいに世界第2の経済大国ではなくて、中規模に過ぎないんですから。一方で、欧米に向かっては、日本をゲートウェイにするというアイデアは未だある程度は有効だと思います。上海や北京など空気悪いところに行きたくなければ、東京か九州に駐在して、物流も自由なのでいいですよという政策を打っていく。

工藤: 国を開くということはそういう考えですね。
深川: と、私は思っています。
工藤: それに対して、政治の動きはそうなっていないわけですね。

深川: 経済連携のゲームは3通りしかないと思っています。大・中・小と。「大」は大のゲームがあり、市場の大きさを求めてFTAは向こうから言ってくるので、自分が働きかける必要はあまりない。日本もついこの間までそうだったので、ロードマップはありませんでした。他方、韓国は「小」もしくはせいぜい「中」だったので自分から言わないと誰もやってくれないわけですから、ロードマップ作って一生懸命やっているわけです。さらに、「小」のシンガポールはむしろ失うものはないので、フリーハンドを最大限活用し、好きなようにやればいい、ということです。日本の場合は「大」のゲームをしているつもりだったら、いつの間にか「中」になっていたので、国民が日本はもう「大」ではないという事実を直視できていない。政治家のFTA議論を見ているとそれを痛感します。自分のゲームリーグが決まれば、FTAもやり易くなると思いますよ。


工藤: 今の深川さんの話はかなり本質的で、つまり経済規模を競い合うような時代ではなくて、日本は既にそこから見れば落ちていると。しかし、日本の1人あたりの所得をきちんと守ろうよ。また、それを拡大するために、日本の経済体制を変えなければいけないのだと。ただ、それを日本の政治ができるかどうか、ということがポイントだと言っているわけですね。その部分について聞いてきましたので、お聞きください。


日本の政治は構造改革ができるのか

工藤: 政治家1人ひとりは構造改革を意識している人はいますが、今の政治全体では構造改革という流れではないですよね。選挙対策政治。

深川: 構造改革などという全体像はほとんど感じられません。あるのは、このところいつも選挙に勝てるか勝てないか、小出しで連携性のないアイデアだけ。もはや有権者の方が政治家の平均よりは、多分、上なのだから、有権者が投票して自分の意思を示すしかない。だから、言論NPOが大事なのですが、相変わらず政治的無気力とポピュリズムだけで浮動層は動かない。これについては、メディアも悪くて、昨年の最大の話題は、名目GDPで中国に抜かれることより、購買力平価で見た1人当たりのGDPが台湾に抜かれ、さらに5年から6年で韓国にも抜かれつつある、ということだと思うのですが、そんなことも報道されていないことです。

工藤: この流れを変えないといけないわけですね。


日本は衰退し、大国でなく、多額の借金がある

深川: だから「私たちは衰退している、大国でもない、借金を多額に持っている」ということを徹底して認識してもらうしかない。政治家や問題先送りインセンティブの大きな高齢者など、都合良く、みんな忘れていますよ、この3つ。単に悲観することと現実を直視することは明確に違うはずなんですが。

工藤: さっきの1人あたりの所得を上げながら衰退していくというシナリオは、今のままでは無理ですね。

深川: 問題先送りのその場しのぎでは衰退は衰退でしかない。でも成長しなかったら、誰が、どうやってあの900兆円の借金を返すのですか。返せませんよ、やっぱり。

工藤: まだ間に合うのですか。

深川: 全体像を描いた上でパズルを組み直し、出来ることをやるしかない。しかし戦争に負けたわけでもなし、日本は市場の持っている能力は非常に高いので、ポテンシャルはあります。農業だって、物流だって、恐らく公的セクションの改革だって、知恵があるところではいろんなアイデアが生かされている。生産性が上がる余地はまだまだいろんなところにあると思います。

工藤: 市場が持っている能力というのは具体的には何ですか。
深川: 技術力、複合的な付加価値力、それにある種の社会資本などです。最近の流行でいえば、それに文化力が加わるということでしょうか。
工藤: ということは、それらで勝てるようにするための障害はなんですか。


深川: まず、最低、企業には国際的にみて公平な競争環境を与えるべきです。日本企業は六重苦以上を背負っています。例えば、法人税も高く、無策を反映した為替レートの変動に翻弄され、環境負担、厳しいコンプライアンスに耐え、FTAもなく、ゆとり教育の失敗が本格化しつつある人材不足など。短期的にはもうデフレを何年もやっているので円高は財界が言うほどでもなく、そう円安になることは期待できない。これだけ世界全体が混乱した中で、勝ち残れる国は自分が比較優位なことを徹底して、しかも着実にやる国だと思います。やはりヨーロッパの中でドイツが一番強いのは、金融だけに踊らず、EU市場や世界市場への輸出、特に中小企業輸出を強化して製造業を捨てなかったからです。日本は製造業をほとんどアジア圏に撒いてしまいました。だから、もはやアジア圏をみんな外国だと思わず、みんな日本の経済の一部と思わないとだめです。企業もみんなアジアに出ていってしまいましたから。また、若い人は大会社や公的セクターなら食べさせてもらえるだろう、といった甘えを根本から捨て、個人として組織に依存せず、自立してグローバル化社会を生きる、という発想で人生設計をしないと、非常にみじめになると思います。

工藤: そうすると統合っていうのが追いついていないということですね。
深川: 制度化が追いついていない。あとはアジアの重要性を認識して、日本が折れる姿勢を持たないと先は開けないでしょう。
工藤: 折れるというのは、さっきの大から中ということですか。

深川: 「中」に過ぎないのだから、農業の交渉でアジアに対しては思い切って折れる。自分が折れることなく相手に一方的に要求できるのは「大」国のゲームであり、「中」ではそうはいかないからです。それでもアジアの競争力や成長力を欧米以上に取り込めるのであれば、プラスマイナスで言えば、圧倒的にプラスの方が上回ります。

工藤: でも今のことは有権者が投票しないといけないとかありますが、そこまでの決断は...


メディアは日本の状況を何も語っていない

深川: それはメディアが何も言わないことも大きく影響していると思います。みんな、都合のいいことばかりを書いてきたわけです。GDPが世界第3位になる時は言いましたが、台湾や韓国に負けていくことはつい最近まで、報道してきませんでした。報道はこれが現実だと、もっとリアルに言わないといけないと思います。結局、「大」だった額縁が壊れて自分の自画像を入れる額縁の大きさが分からなくなっているから、どうしたら政策をその中にパズルで入れるのか、優先順位がつけられなくなっているのです。それが今、政治がやっていることのように思えます。

工藤: 政治をそういうふうに向けさせるためには、どうすればいいですか。


日本の現実を知るところから始めるしかない

深川: だから額縁の大きさの現実を思い知るしかない。日本はこの額縁の大きさの中でしかゲームができないということを、国民にもきちんと言って、国民がその額縁の中で一番合った政策を示す人を選ぶという、当たり前のことをやるしかないのでは。少なくとももう大国ではないことを知ってもらうことから始めるしかないと思います。実際、かなりの国民は気づいているが認めたくない、という人が一番多いのではないかと思います。

工藤: その前に財政破綻しませんか。

深川: いまは単に延命されているだけですからね。本来ならもっと先に市場からの死刑宣告がきていたかもしれませんが、アメリカと欧州が同時に崩れているから、安全な資本の投入先が円しかなかっただけです。都合良く使われているだけですよね。

工藤: つまり、彼らがもっと困っているから、日本が...。

深川: 相対的な問題ですから。中国は人民元を切り上げたくないし、他に受け皿がないのですね。

工藤: ということは、実体的には日本は破綻しているのだけれど。
深川: だから、「JGBバブル(国債バブル)」と呼ばれているのではありませんか。バブルは所詮、泡でしかない。
工藤: 延命されているわけですね。今のやり方は全体的にばら撒いてその中でいいものを引っ張り出すという、温室的な発想ですよね。


これ以上ばら撒いても、ただ衰退していくだけ

深川: これ以上ばら撒いても、ただ衰退していくだけ。でも、最後にはバラ撒く麻酔が効かなくなりますので、突然苦しくなり、非常に痛ましい光景が繰り返されていくことになる気がします。集中配分し、現状を突破し、成果を分配するサイクルを見いだせない限りは。

工藤: しかし国民にも矛盾があるわけですね。分かっているならそれが投票行動に結びつくはずなのに。つまり政治を自分たちが思っているものを選んでいない。

深川: しかも、責任を回避しているということですよね。有権者には政治を監視する義務と権利があるのです。しかしどこかで誰かが何とかしてくれるのではないかと甘えている。この点ももたれ合い社会の悪さが露呈しています。

工藤: それで2011年と2012年を考えた場合、2011年の意味というのは何でしょうか。


2011年はもう最後だ、という意識が大事

深川: だから2011年は色んな意味で最後のチャンスだと思います。日本が自分たちで考えて自分たちの将来を選択するという許された時間は多分、比較的平和な2011年ぐらいしかない。2012年には次第に出口のなさが表面化する先進国の財政危機の問題とか、非常に異形な大国になってきている中国とかエマージングパワー(新興勢力)の人たちの現状、秩序、変革、意欲というのが政治現象となって噴出する気がします。何しろ、2012年は米国だけでなく、ロシア、韓国、台湾と揃って選挙ラッシュの年です。中国も政権交代となります。各国とも政治の年を迎え、極端な事件が起きやすくなるでしょう。だから自分だけで動ける余地は少なく、2011年が自分たちだけで答えを出せる最後の年になるような気がするのです。

工藤: 2011年、日本の政治が次に何を迎えるかの基礎ができないとだめですね。2011年、最後のチャンスですね。

深川: そうですが、これまでも最後だという意識がないのでいつまで経っても駄目なのです。ずうっと問題の先送り。小さな問題を先送りし続けて、最後に統制不能な巨大リスクを背負い込む、その危険性を直視して国民が行動するしか、この閉塞を突破する道はないと思います。国民に示す必要があると思います。


困難が大きくても乗り越えるしかない

工藤: 深川さんの話を聞いて、新年なのですがかなり緊張感が増してきたと思います。今年が最後のチャンスだと。ただ、今自分たちが考えなければいけないということが、彼女が言っていることからも、かなり伝わってきたと思います。国際政治も、国内の課題も本当はかなり難しい段階にきているのですが、それでもこの状況を僕たちの力で乗り越えなければダメなのですよ。なので、私たちは議論の力でこれをどうしても乗り越えて、日本の未来をつくり出したいと思っています。まず、僕たちが一歩前に踏み込む、というところから、今年の1年をがんばっていこうかなと、今日思った次第です。今日も熱い、というか、かなり本気の議論になりましたが、この形でまた続けていきますので、皆さんもご意見があればお寄せください。今日は、どうもありがとうございました。

(文章・動画は収録内容を一部編集したものです。)

【 前編 】

【 後編 】

 放送第16回目の「工藤泰志 言論のNPO」は早稲田大学教授の深川由起子さんにインタビュー。2011年とは日本にとってどんな年か?世界の中の日本の位置づけなどを議論しました。
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