市民的発想による参加性の強い有償サービスをどう評価するか
1.審査過程
前回までは3つの賞のどれに該当するかは予備審査の段階で決めていましたが、今回から応募者の自己申告によることにしました。市民賞への応募は23件で、このうち予備審査を通過したのは16件でした。第1次審査委員会で議論の結果1件を落としましたが、1件を復活としたため、同じく16件を第2次審査の対象としました。私と堀江委員が市民賞を担当することになり、2人はこれらすべての応募書類とホームページを詳細に検討して評価、順位をつけて第2次審査委員会に提出し、それぞれの評価の考え方を説明しました。それを受けて審査委員全員で議論を重ね、5件を市民賞のノミネート団体とすることにしました。その後、各審査委員は3賞のノミネート団体すべてについて検討し、各賞について推薦順位をつけて第3次審査委員会に持ち寄り、それぞれの考えを報告して議論を重ね、3つの受賞団体を決めるとともに、それらのうちから大賞を決めました。
2.審査結果
市民賞の受賞団体は、多くの審査委員が1~2位に推薦した「ママの働き方応援隊」に決まりました。子育て経験をもつ女性が7年前に、「子連れがメリットになる働き方」が母親だけでなく社会にとってもよい影響をもたらすとの発想から立ち上げた組織で、2年前には市民的で独創的な発想による赤ちゃん先生プロジェクトを開始、すでに全国の200人余りのママたちが赤ちゃん連れの講師として学校や企業で活躍しています。会員登録と有償サービスの提供による参加性の高い活動として各地に展開しつつあることから、市民賞に相応しいと評価しました。中小の地域の企業への呼びかけも熱心で、その参加性も評価できるでしょう。
惜しくも受賞には至りませんでしたがノミネートされた団体は、受付番号順に次の4件です。課題発見や事業計画への市民参加が熱心に行われ、活動自体の発想や内容が市民性の強い海外協力組織「アクション」、東日本大震災発災直後に避難所で立ち上げ、多くの共感を集めながら仮設住宅での多様な活動を発展させてきた「石巻復興支援ネットワーク」、有償ボランティアや介護保険事業によって相互扶助の仕組みを確立して地域に密着した活動を継続するとともに、福島原発事故後は広域避難者の支援にも取り組んできた「たすけあいの会ふれあいネットまつど」、医療に限られない産後ケアの重要性という個人の経験的な問題意識から生まれて発展し、サービスの受けにくい人のためのマドレ基金を立ち上げるなどのユニークな事業展開がみられる「マドレボニータ」である。
3.今後の課題
受賞団体を含むノミネート団体の特徴としては、若者の個人的な発想から出発した団体、自分の経験に基づく当事者性の強い問題意識から生まれた団体、一般的な寄附やボランティアによる市民の参加だけでなく会員登録と有償サービス提供という市民の参加に工夫がみられる団体、などの存在があります。これらの特徴をもつ団体は今後も増えてくると思いますが、これらは必ずしも寄附やボランティアとしての参加だけで市民性を評価するのは難しい面もあり、発想の市民性や有償サービスの市民性をどういう表現で現在のエクセレントNPOの評価基準に反映すべきか、その見直しも必要ではないかといった議論もなされたことを付記しておきたいと思います。