「政権公約からなぜNPO政策が消えたのか」(主催・日本NPO学会)のパネルディスカッションが3月17日、言論NPOの工藤泰志代表を司会に東京都内で行われました。
パネルディスカッションには、逢沢一郎(自民党)、辻元清美(民主党)、松田学(日本維新の会)の3氏がパネリストとして参加、NPO学会関係者ら約70人が出席しました。
ディスカッション冒頭で日本NPO学会会長の田中弥生氏が、2012年に行われた衆院選において各政党のマニフェストでNPOの政策が言及されていなかった事実を指摘し、なぜ言及されなかったのかと、問題を提起。
工藤は、昨年の選挙に際して言論NPOが実施したマニフェスト評価においても市民社会に関する点数が各党とも低かったことを紹介し、マニフェストで市民の位置づけが明白でなかった理由や、各政党が市民社会に対してどのようなイメージを持っているのかを問いました。
自民党の逢沢氏は、明確には理由はわからないとしながらも「政権奪還を目指していた政治状況から、経済政策や外交政策に関心が向いていたのではないか」と説明。また、NPO税制や認定制度の改定などを実現し「一山を超えた雰囲気がある」ことも理由の一つに挙げました。逢沢氏は続けて、かつてよりNPOに対する認識は改善されてきており、「どう市民社会を発展させるか、政策の中でどうNPOを位置づけるかが今後の鍵である」とし、自民党の目指すべき社会として自助を基本に共助・公助のバランスのとれた社会が不可欠であると述べました。
民主党の辻元氏は、これまで各党にNPO政策に熱心な政治家がいるものの党内の影響力が十分になかったことを指摘し、「少しずつではあるが、認知度が上がりつつある」と現状を紹介しました。先月、策定した民主党の綱領は個人の自立を基調とし、民主党政権ではNPOを巻き込んだ政策を実施してきたことを紹介、「個人を尊重し、共に生きる社会」を目指していると述べました。
日本維新の会の松田氏は、日本維新の会は大政党とは違い「ベンチャー政党であり、NPO政策について言及する余裕がなかった」と率直に語り、維新の会の理念に「独立自尊」の考えがあることを紹介しながら、「現在の依存型社会を自立型の社会に変えることを目指している」と話しました。
議論の後半では市民社会の課題について、多くの意見が交わされました。
逢沢氏からは、政治家の間ではNPOの存在は市民権を得つつあるが、国民全体としてはまだ不十分であり、市民の受け皿として機能するためには、一層の努力が求められている、ことを指摘し、海外でも通用するNPOやNGOの出現を期待しました。
また、辻元氏は、これまで規制の緩和や税制の改正、NPOへの予算の配分などの政策を実行したことを踏まえて、「今は政治側というよりはNPO側にボールがあるのではないか」と問いかけました。さらに、NPOに予算をつけることによって「既得権益化」する問題にも触れ、「NPOと行政との契約関係に対する新しいルールが必要になっている」と指摘しました。
一方、松田氏は昨年の衆議院選挙での実感から「有権者の意識が当事者意識へと変わりつつある」とし、「課題解決型の市民活動」を実現する局面に来ていると指摘。そうした活動を支援するために政府は、市民がNPOに対して「寄付という投票行動」ができるようなシステムをつくるべきだと述べました。
その後、会場からも寄付税制に対する財務省の見解を問う質問や規制緩和や制度改正による弊害をどのように考えているかなどの質問が飛び交いました。
最後にNPO学会の田中氏から「市民が強くなっていかないと市民社会は機能しない」という問題意識は共通認識ではあるが、「そのために何が課題であるのか、どうしたら良いのかがわからなくなっている」と総括しました。そして「NPOだけではなくて、市民社会を強くするという原点に戻って、今後議論を重ねていく必要がある」と締めくくり、閉会しました。