7月11日、毎日新聞社「毎日ホール」において第1回「エクセレントNPO大賞」の表彰式が行われました。
第1回目となる今回は応募総数163団体(本賞116団体、特別賞47団体)の中から、市民賞、課題解決賞、組織力賞の各賞において4団体が、特別賞には5団体がそれぞれノミネートされました。
このうち、市民賞ではYouth for 3.11、課題解決力賞では高木仁三郎市民科学基金、組織力賞ではスペシャルオリンピックス日本の各団体が選ばれました。また、東日本大震災復興支援賞は当初1団体を予定していましたが、多様な活動を1つの軸で評価するのは不可能と判断し、応募団体を複数の分類に分けて評価を行いました。その結果、ネットワークオレンジ、遠野まごころネット、MMサポートセンター、ゆめ風基金、セカンドハーベスト・ジャパンの5団体が「東日本大震災復興支援奨励賞」として選ばれました。なお、第1回目のエクセレントNPO大賞は、さらなる発展を期待するという意味から、受賞団体は「なし」となりました。
各賞受賞団体
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各賞ノミネート団体
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表彰式に先立ち、まず代表工藤が「『エクセレントNPO』をめざそう市民会議」の事務局長として主催者挨拶に臨みました。
まず5年にわたる「エクセレントNPO」という非営利組織の組織評価基準開発の取り組みを振り返りつつ、この評価基準が市民社会で機能するようになれば、「非営利セクターの間で課題解決に向け、よりエクセレントなNPOを目指そうとする競争が始まる」と述べ、さらに「そうしたNPOの姿が信頼されれば多くの市民の資源がそこに向かって動く良循環が始まり、非営利組織が強い市民社会の受け皿として機能する展望が見えてくる」との期待を語りました。
そして、今回の表彰式がこうした市民社会に目に見える確かな変化を動き出させるためのスタートになることを強調しました。
続いて共催者挨拶に立った毎日新聞社論説委員長の倉重篤郎氏は、なぜ毎日新聞社が今回、本賞を共催するに至ったのかということについて説明しました。
その理由として倉重氏はまず「強靭な市民社会を作るというコンセプトに共鳴した」ことを挙げました。その背景には永田町政治だけに国内の課題解決を任せていいのか、という問題意識があり、民主政治の欠陥を補完するためにNPOの果たす役割に対する期待を述べました。
さらにそのようなNPOの「良い活動」を表彰などでクローズアップしていくことで市民社会に「良い循環」が始まるきっかけになってほしいということをもう1つの理由として挙げました。
その後、審査委員紹介と審査説明を経て、各賞の表彰に入りました。
まず市民賞では、受賞団体となったYouth for 3.11の代表者は「東日本大震災の際、誰もが思った『力になりたい』という気持ちを大切にしたいと思ったところからこの活動が始まった」と述べ、「学生であっても社会に主体的に関わっていくことで社会を変えられるという意識は今後のボランティアカルチャーを変えていくのではないか」と今後の展望を示しました。さらに「これは日本の学生たちが貰った賞」であるとしてこれまでの活動関係者に謝辞を述べ受賞団体スピーチを締めくくりました。
市民賞部門の主査を務めた島田京子委員が欠席だったため、講評を代読した山岡委員は次のように述べました。
27団体のうちノミネートされた4団体が、事業報告、会計報告などの基本的情報開示とその内容の適格さはもちろんのこと、共通して高い評価を得た視点は、次の通りでした。
①ボランティアや寄付などに関して、市民参加の広がりと成長へのケアの工夫が的確になされ、その成果がみられていること、②それらの活動が、今後、市民性においてモデルとなりうる可能性が高いこと、③市民への理解促進のためのコンセプトが明快で、伝える工夫も的確になされていること、④評価基準に基づく、自己評価と審査会での評価の得点に差異がなかったことを指摘しました。
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次に、課題解決力賞の受賞団体である高木仁三郎市民科学基金の代表者は基金設立の経緯について説明した後、原子力発電を推進していた専門の科学者に対する疑問を例に挙げながら、「すべての決定を専門家に委ねるのではなく、最終的には市民が決定すべきだ」と述べました。そのためには「市民も科学を学ぶ必要がある」ことを指摘すると共に、「専門家も一市民としての意識を持ち、両者が互いに自分の経験や意見をぶつけ合うことでより良い市民社会にしていきたい」と今後の抱負を語りました。
まず、この課題解決力賞部門の主査を務めた田中弥生委員より講評がなされました。その中で田中氏は、今回の審査は大変難しい審査になったと冒頭で述べた上で、ノミネートされた団体、表彰された団体について、「課題をもっと深掘りして、深化させるということが顕著に4団体に現れており、かつ、自分達の課題のみならず、深化したらそれに合わせて自分達の課題の解決方法、つまり目的と計画というものをたくみに深化させ、自分達のミッションというものをよりシャープなものに仕立て上げたというところも高く評価した」旨、指摘ました。また、「ノミネートされた4団体の中には、自己評価を軽く評点を付けているところもあったが、そこから一体自分が何を得て、今後、どういう対処方法をとりたいのか、ということを明確に記して頂いていた点という者、高く評価」した旨を指摘しました。
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組織力賞を受賞したスペシャルオリンピックス日本の代表者はまず「今年3月にNPO法人としては解散し、公益財団法人として新たなスタートを切った直後にこのような賞を受賞できたのは大きな励み」と謝辞を述べました。さらに、自治体から補助金を貰わずに資金調達を工夫してきた自らの経験を述べ、「NPOの資金調達にはさまざまな可能性がある」ことを指摘しました。さらに「自分たちの活動の魅力を生かしてより多くの市民を巻き込みながら活動していきたい」と今後の抱負を述べました。
組織力賞部門の主査を務めた武田晴人委員より講評がなされました。武田氏は、「組織の使命や目的を示す文書によって組織の課題が明確になっているか、それらの方針や、その方針に基づく事業の成果がホームページなどで公開されているのかなど情報開示、資金調達の多様性や透明性などの点を中心に、審査を行った」と説明しました。その上で、「今回の審査では、特定の資金源に依存する場合には、その資金供給側の事情の変化によって、その非営利組織の活動が継続不能に陥るリスクを伴っているという点から、資金面での多様性など組織が持続していくための条件を重視」した。一方で、「多様な資金源を獲得する努力を重ねていることは認められるとはいえ、その透明性に関する説明が不十分と考えられない組織についても、残念ながら候補から外すことになった」旨を指摘しました。
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東日本大震災復興支援賞部門の主査を務めた山岡義典委員より講評がなされました。山岡氏は、「この賞については、現地で活動している被災3県の団体と、日本各地から応援に駆けつけた団体でかなり正確が異なり」、かつ、「震災前から活動している団体と震災後に活動を始めた団体によってかなり違う要素がある」ことを挙げた上で、「それぞれの特徴を選ぶとどれが一番優れているのかを評価するのは難しく、また、そういう判断をするべきではないのではないか、という審査委員内での議論もあり、ノミネート団体を全て火が信本大震災特別奨励賞奨励賞ということで選出することにした」と説明しました。また、「現地のNPOは42件中15件で、震災前から活動している団体が8件、震災後に活動を開始した団体が7件。震災前から活動している団体は被災地で被災した団体と被災地の周辺にあって直接的な被害はなく、これまでの活動実績の強みを生かし、かなりしっかりとした支援をしている団体があり、どちらを優先するべきか悩んだ末、今回は被災地で壊滅的な状況の中から立ち上がって活動をした2つの団体を推薦することにしたと指摘しました。
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続いて東日本震災復興支援奨励賞の各5団体への表彰状授与が行われ、その後エクセレントNPO大賞の発表に移りました。
ここでは本年度は大賞について「該当なし」であることが発表され、その理由と講評にについて審査委員の武田晴人氏が説明を行いました。武田審査委員は「今回の受賞団体が大賞に値しないわけではない」と前置きをしつつ、今回の審査プロセスについての課題、改善点が多く見つかったことについて説明しました。
まず自己評価のあり方について、これは「点数の高さを競っているのではなく、自己評価の適正さを知るためのものであった」ことを周知徹底できなかった、そのために自己評価で満点をつけてくる団体が続出してきてしまったことを第1の問題点として挙げました。
次に資金調達の透明性や政治的中立性に問題があるとみられる団体については、本来ならば当該団体にヒアリングなどで追加説明を求めることが公正な審査プロセスであるところ、時間的な制約等によりそれができなかった事情を述べました。そして、そもそもこのような厳格な基準を持っていることや追加的な説明が必要なことは公募の書類には明記されていないので、応募団体にとっては落選理由や第2回目以降の選考に対する疑問も生まれてくる可能性があることを指摘し、そのような事情を考えると今回は「大賞」を選ばないことの方がむしろ審査の公正を保てるのではないか、と説明しました。
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審査委員長総評では小倉和夫氏は今回の表彰式で審査の過程が詳細に公表されたことに触れ、これによって「審査委員だけでなく、参加団体も自己審査をすることが可能になる」と述べました。また、各団体が自己評価をしていく過程でエクセレントNPOの示した客観的な評価基準も「それが本当に正しいか否か」が検証されていくと述べました。
このような双方向性から「これは表彰式というよりも皆さんと一緒に立派なNPOを作り上げていくための基準を考え、実行していくための会議になった」と述べ、会場に参加した団体対して今後のさらなる協力を求めました。
最後に閉会挨拶では國松孝次氏は自身も携わるNPO活動の経験から公的な資金を入れずに継続的な成果を挙げ続けることの困難さについて述べた上で、その成果を挙げ続けている今回の各受賞団体を称賛しました。その上で、「NPOにとって何らかの励ましになり」、自己評価基準をもっと定着させていくためにも、この表彰を今後も継続していく」方針を示しました。そして、今後の活動に対する支援を呼びかけて挨拶を締めくくり、第1回エクセレントNPO大賞表彰式は閉会しました。
今回の審査方法、講評の詳細については下記で公開しておりますので、ぜひご覧ください。
第1回「エクセレントNPO」大賞審査について
第1回「エクセレントNPO」受賞理由と全般の課題について
エクセレントNPO大賞 「市民賞」審査講評
エクセレントNPO大賞 「課題解決力賞」審査講評
エクセレントNPO大賞 「組織力賞」審査講評
エクセレントNPO大賞 「東日本大震災復興支援賞」審査講評
「エクセレントNPO大賞」に関する見解