「ON THE WAY JOURNAL WEEKEND」において、工藤がゲストとして、「エクセレントNPO」について語りました。
(JFN系列「ON THE WAY JOURNAL WEEKEND」で2012年4月28日に放送されたものです)
エクセレントNPO年間大賞を通じてNPOのレベルアップを
谷中:ON THE WAY ジャーナルweekend、谷中修吾です。先週に引き続き、後半は、言論NPO代表 工藤泰志さんにお話を伺っていきます。
今週は、現在注目を集める「エクセレントNPO」について伺いたいと思います。まずは、このエクセレントNPOとは何か、教えてください。
「エクセレントNPO」を打ち出した背景
工藤:昔、マッキンゼーという世界的なコンサルティング会社が「エクセレントカンパニー」という概念を打ち出したことがあります。世界の企業社会におけるすぐれた会社を紹介し、何が望ましいのかを明らかにした上で、各企業はそれを目指して競おうというものでした。僕は、企業社会と非営利を直接に結びつけるのは、ちょっと飛躍かなと思ったのですが、ただ、非営利の世界に関しても、そういう競争が必要だと考えたのです。
僕は42歳でNPOを立ち上げました。それまではメディアにいて、それを辞めてNPOの世界に入ったのですが、NPOというのは、数は4万団体を超えているにもかかわらず、なんとなく玉石混交というか。
NPOが目指さなくてはいけないことは、社会の課題に対して自発的に挑んで、それに対して答えを出していくこと。つまり、自発性と同時に、その動きが市民に支えられなければいけないことなのです。だけど、課題解決と、それから市民に支えられるという点で、本当に、日本のNPOなり非営利セクターは十分なのだろうか、と。それが一番気になったのです。それで、5年前に、NPO、NGOの人たちも集まって研究会をつくり議論を開始しました。その結果、強い市民社会をつくるためには、NPOそのものが変わらなければいけないという話になりました。ただ、NPOが主役とは僕自身は思っていません。市民が主役だと思っている。つまり、市民が社会の大きな変革の担い手になっていくのですが、その市民の受け皿として、非営利組織がしっかり機能しなくてはいけない。非営利組織が社会の課題に対して、きちんと答えていく、そういう流れをつくるためには、NPOそのものが変わらなければいけない。とすると、何が足りないのだろうか。それを分析した結果、いろいろな構造が見えてきたのです。その構造を整理して、望ましいNPOはこれだっていうものを出しました。それがエクセレントNPOです。
3つのテーマと33の評価基準
というわけで、エクセレントNPOというのは、宇宙かどこかから出てきた言葉ではなくて、まさに、非営利セクターが抱えている課題から生まれてきたものなのです。さっきも少し言ったのですが、市民に参加してもらい、市民に支えられて、運動が構成されなければいけない。一方で、社会的な課題に関して自発的に、つまり、どこかから頼まれたり、行政から何かしてくれと言われて、それをやるとかではなく、あくまでも自発的にそれをやっていって、その成果を競わなければいけない。それから課題解決をするためには、きちっとした組織をつくっていかなきゃいけない。その3つの要因が、まだまだ不十分だとわかったのです。そして、その3つの要因を解決するために、どういうことが必要なのかということを逆に考えていって、エクセレントNPOのモデルを実現するための、3つのテーマと33の評価基準というのを提案しました。その3つというのは、市民性、社会変革性、そして組織の持続的発展性です。それに基づいて、33基準をつくりました。そして、その33基準を自分たちの経営に活かすための自己診断ツールまでつくりました。それが105項目あるのです。このように、エクセレントNPOというのは、実は大がかりな動きです。日本の市民社会を強くするための1つの起爆として、非営利セクターが強くなるための評価基準であると同時に、自分たちの非営利セクターそのものを強くするための自己点検のシートなのです。それを2年前に公開しました。今、いろいろな人たちに「エクセレントNPO」を目指しませんかと普及に努めているのです。
谷中:そういうことなのですね。逆に言うと、それまでは、そういう評価基準とか、そもそも、そういう見るポイントというのがクリアではなかった。
非営利組織と市民との間に良循環を
工藤:そうです。基準がなかったのです。この前、大震災のとき、被災地のどこかに寄付したいけど、どこに寄付すれば良いかわからないという声をいっぱい聞きました。海外のいろいろな人たちからも同じことを言われました。それから、義援金が4千億円くらい赤十字とかに集まって、それがなかなか被災地への見舞金などに流れなかったということが問題になったのですが、一方で、支援金という、被災地で活動しているNPOに対するお金も400億円くらい集まったのですけど、その後、総括してみると、国内の10団体にその90%が集中していた。つまり、どこに寄付すればいいかわからないから、日本なんとかとか、ジャパンなんとかというところに流れてしまうわけです。でも、それらの団体がそれをちゃんと使いこなしていないし、それをきちんと国民に説明しているとも思えない。これは非常にまずいと思いましたね。
やっぱり、良いNPOがまともに競い合って、それが市民にも見えること。市民が、このNPOだったらいいなと思って支持するとか、参加するというような、その非営利組織と市民の間に良循環が起こらなきゃいけないと思うのです。その良い循環が起こることによって、市民や市民社会が強くなり、非営利セクターが底上げできるというふうに思ったわけです。そのためには、やはり、非営利セクター側が自発的に、どういうNPOが望ましいのかということを考える必要があります。本当は、それ自体が大きな議論になって欲しかったのですが。
それはさておき、このような体系的な評価基準を提案したのは、多分、日本の市民社会の歴史上、初めてだと思います。ただ、歴史的にみると、ピーター・ドラッカーが、セルフチェックリストを提案しています。僕たちも評価基準をつくるときには、ドラッカーの教え子の田中弥生さんというNPO問題で結構有名な人が評価づくりに中心的に加わって、ドラッカーのセルフチェックリストもちゃんと見ました。それから日本の非営利セクターの課題の実態的な調査も行いました。その結果、いろいろな問題が見えてきたのです。例えば、日本のNPOの50%ぐらいは寄付も集めていない。ボランティアなんて集めていない。それから、企業とか行政がつくっているようなNPOもある。数は増えたのだけど、その実態には色々な問題があるのです。それを議論しようと思ったのですが、なかなか、そういう議論には市民社会のみなさん慣れていない。私は市民社会を強くするためには、やっぱり、非営利セクターそのものが、自分たちで自発的に動いていかないといけないなと思ったので、そういう評価基準の体系を、まず提案することにしたのです。
谷中:そうなのですね。まさに非営利セクターがどうあるべきかという、この議論が広がっていくと、良い意味で、ちょうど今回なされようとしている、エクセレントNPOの年間大賞、これをやっていくことそのものが、まさに新たな議論を生み出していくことにつながるのでしょうね。
「大賞」への応募・審査がNPOの存在を社会に知らせる
工藤:その通りです。私は、この間、広島や熊本など地方にも出かけて、非営利セクターの人と話しあったのですが、みんな、自分たちの経営をどういうふうに変えていけばいいか考えていますし、市民に支えられながら、課題に向かうことの大切さを知っています。非営利セクターの動きで一番大事なのは、市民の気づきだと私は思っているのです。自分たちの生活の中で、社会の中で、社会的な問題にぶつかり、自分も参加してみようと思って、では、どうしたらそれができるか、ということになり、それで、非営利組織ができる。また、非営利セクターもその原点に戻って、自分たちの活動をチェックする。それが自分たちの経営を見直すという契機になる。
今回、私たちは「エクセレントNPO大賞」の表彰を行う事になりましたが、この表彰の仕組みを提案したのは、みんなに応募してもらうことによって、自分たちの経営を見直すきっかけになってくれないかという思いがあります。
僕たちの審査員は日本を代表する学者とか専門家が参加していますから、コメントも出そうと思っています。一方で、この表彰のプロセスにメディアが参加しており、今回は、毎日新聞と共同通信がバックアップしてくれています。最近は、今日のこのON THE WAYジャーナルもそうなのですが、他のメディアもいろいろなかたちでNPOの活動を取り上げてくれる。ということは、市民社会をもっと見える化しようという動きが今の日本にはあるのだと思います。それだから、応募してもらうと、自分たちの経営の点検になるだけではなくて、社会に対して、自分たちの活動を知らせるチャンスになる。
表彰は、市民賞、社会変革賞、組織賞と3つあります。ただ、今回は特別に、震災特別賞というのをつくります。震災のなかで、被災地のために一生懸命やったり、そのなかでNPOができたりとかしているので、そういうNPO団体にも賞をあげさせていただこうと思っているのです。それで4つの賞をつくるのですが、選考にあたって、ノミネート団体として、その3倍くらいをつくろうと思っています。すると、3かける4で、12団体くらい。この12団体そのものを、いろいろなかたちで紹介するつもりです。
審査はエクセレントNPOの評価基準に基づいて行います。特に良いところには、年間のアワード、エクセレントNPO大賞を出します。ただ、言論NPOもそうなのですが、自分たちを審査してみると、まだあまり評価基準に達していない点がいっぱいある。そうなので、エクセレントNPO大賞の該当団体があるのか、まだ分からないのですが、どういう団体なのだろうと楽しみです。しかし、これに挑んで、それが報道され、色々な人たちの活動が見えるようになって、競い合っていくというプロセス、また、そういうことが尊重される社会。非営利セクターも自分たちが課題解決で競争している、なかなかすごいぞと社会で認められる。そのような動きになっていったら、たぶん市民社会に新しい、目に見えるような変化が始まるのではないかと僕は思っているのです。
谷中:この見える化はすごく健全だと思います。先ほど、何か支援したいけど、どこに頼んだらいいかわからないというのも、たぶん見える化していきますものね。
非営利セクターの組織評価は初めて
工藤:言い忘れましたが、政策評価をやっている人はもう気づいているかもしれないけど、今までのNPOは活動内容が評価されていました。君はいいことをやっているね、と。これは事業評価です。しかし、このエクセレントNPOは、組織評価なのです。つまり、良いことをやっていても、その組織がしっかりしていないと活動が続かない。しかも、社会的な課題解決とは成果を出し、市民に支えられて、しかも組織経営もちゃんと行われているかということが、全部問われます。非営利の世界に組織評価を導入するのは、世界でも初めての試みかも知れません。日本の企業は、当然、組織評価を行います。株主がそれに対して判断していく。日本の非営利セクターも、いよいよ組織評価に耐えられるようなNPOなりNGOが求められる、ということです。
表彰対象はNPO、NGOだけに限定していません、非営利であれば、組織形態は問いません。
谷中:非営利組織ですね。
工藤:いろんな活動を非営利でやっている組織が応募できるのですが、組織評価に耐えられる団体でないとなりません。この団体は、良いことやっているのだけど、変な団体からお金もらっているとか、組織がバラバラでは活動が続きません。むしろ、これを機会にこの評価に挑んでほしいのです。そういう動きが日本の市民社会に出てくれば、今までの市民社会論から一歩、バージョンが上がる段階に入ります。そこを目指していかないと、日本そのものが変わらないと私は思うのです。
実を言うと、僕もON THE WAYジャーナルを水曜日に担当しているのですが、市民が変わらないと、この国は未来に向かって動かないと何度も皆さんに伝えています。日本の未来に虚しさを感じている方もいらっしゃるでしょう。この状況を変えるためには、市民が大きく動かなければいけない。単に行政とか、政府だけにお任せするのではなくて、自分たちで課題解決していくという流れが今もありますが、もっと強くなって、それが尊重されるような社会というのは、すごく素敵な社会です。そういう流れを、このエクセレントNPOをきっかけにつくれないか、ということなのです。
谷中:すごく楽しみです、それは。
工藤:でしょう。だから、いろんな人たちが参加してほしい。いろいろな団体に応募してほしい思っているのです。
谷中:たとえば、地方に行くと、自治会的な組織がいろいろありますね。そこが、実は団結力もあって、課題も解決していて、しかも組織としてしっかりしているかもしれない。この非営利組織という観点から見れば、それに準ずるような、NPO法人じゃなくても、十分、応募資格がありますか。
自主的に動く市民の受け皿になれるNPOに
工藤:ええ、あります。この前、僕の知り合いの大学生が、名前を忘れたのですが、1万2千人くらいのボランティアを被災地に送った。すごいですね。僕らは彼らにも、必ず応募しろと言っているのです。別に僕は審査員じゃないので、彼らに賞を出せるかわからないけれど。ただ、彼らから聞いた話ですが、被災地のNPOにボランティアを受け付けてくれと言ったら、うちはちょっともう対応できないと断られた。NPOはこれでいいのか、という話をしていました。たぶん、被災地の特別な事情もあったと思いますが、市民の動きが、先週も言ったように、世界的にも始まっているのです。それに対して、受け皿になれるような組織そのものが、ちゃんと機能しているかということが、今の日本の市民社会に問われているのだと思います。
私たちが提案している「エクセレントNPO」というのは、NPOの原点に戻ろうということでもあるのです。
阪神淡路大震災のとき、もともとボランティアも参加して、ボランティアのエネルギーを活かす法律的な適格性を持つ組織をつくろうということで、NPO法ができた。市民が自発的に参加するエネルギー、それがちゃんとした課題解決に向き合っていく、しかもその活動が市民に支えられていく。これは阪神淡路大震災のときから始まったNPOの原点そのものだったのです。エクセレントNPOの評価基準というのは、その原点そのものを組織評価の体系にしたもので、しかも、僕たちは課題に向かい、競争することによって、社会にその活動を見える化する、社会化をしていくという、たぶんそういうプロセスを提案しているだけなのです。
だから、ぜひ、みんな応募してほしい。これは毎年やるつもりです。それから副賞も出ます。お金が50万円ずつ出る。しかも、メディアにも登場するのです。ただ、この50万円は僕たちが寄付で集めているのです。特定の団体からお金をもらっているわけではない。頑張っている人や組織を少しでもエンカレッジしたい、何かをしてあげたいと思っているので、僕たちも寄付集めをしながらやっています。
まだ賞金に充てるお金がちょっと足りないので、これから集めなきゃいけない部分もありますが、ちゃんと出します。ある意味で手作りみたいなところもあるので、ぜひこういう流れ、即ち新しい変化を起こす動きにみなさんも参加していただけないかと思っているのです。
谷中:まさにお話を伺うと、そのプロセスを点検するだけでも、そこにまず価値がありますよね。
工藤:価値あります。地方に行ってエクセレントNPOの自己点検をしていたのですが、皆、面白がっていましたよ。なんか、黒板に書いて、うちのリーダーはだめだとか、みんなでいろいろ言い合いながらやっていましたね。そういう議論が大事でして、実を言うと、言論NPOも、自分たちで点検をするために合宿をやりました。合宿をやって、スタッフでやったら、みんな面白がって、これ、だめだとか、他のNGOとか、世界のNGOをインターネットのホームページで見て、うちには足りないんじゃないかとか、そういう点検をしていきました。だから、非常に自分たちも勉強になりました。そういうプロセスが非営利の世界に必要だと思います。これは良いチャンスだなと思ったら、ぜひ応募して欲しいなと思います。
谷中:すごく興味深い。特に、さっき挙げた3つの大きいかたまり、市民性、それから課題解決、もう一個は組織。それぞれ、さっきNPOの原点とおっしゃいましたけど、まさにそう見えます。特に、すべてそれぞれ大事なのですけれども、日本では、結構、NPOの人は組織でよりも自力でなんとか頑張っちゃうことが多かったのかなという印象があるのですけど、どうでしょう。
収入源を多様化しないと持続しない
工藤:本当にそうなのです。言論NPOも全くそうなのですが、はじめは、リーダーの役割が大事ですね。NPOはミッションだから、使命感を持ってこれをやろうとする言い出しっぺが必要です。ただ、僕もそうなのですが、組織が固まっていかないと、安定的に課題解決ができない、自己満足で終わってしまう可能性があるのです。はじめはまさに一人の思いから始まったドラマが、今度は組織化をしていって、それが多くの市民に支えられていって、その中で、だんだんバージョンを経て大きく発展していくのだと思う。だから、NPOも進化するのだと思いますね。僕たちは絶えず前進して行かなきゃいけない。今の動きに満足するのではなく、常に社会に対する自発的な課題解決にこだわらなければいけないのです。そのためにも、組織をちゃんと整えるというのは大事なのですね。この組織の基準では、収入多様性ということも評価基準の1つとなっているのですが、その評価基準を生み出すために、2000万円の収入を持つ団体を7年間追跡調査したのですね。そして、それをパネル分析していくと、やっぱり収入多様性をしていかないと、組織の持続性はないのです。どこかで落ちてしまったりです。
谷中:そういう結果が見えるのですね。
工藤:はい。だから、今回の僕たちの評価基準というのは、いろいろな調査とか、分析を踏まえて、そのなかで組織の安定性をどう図れるのか、とかに答えを出しながら進めて行ったのです。なんとなくの思いつきでやっているわけではなくて、かなりいろんなことを研究し、今の課題を乗り越えるための方法を生み出す中で、評価の体系を提起しているのです。ぜひ、経営のひとつの診断ツールとしても使ってもらえれば、何かを発見できるのではないかと思っています。これは締め切りがありまして、5月8日までです。
谷中:5月8日まででしたが、その後、5月31日まで応募期間を延期しましたので、まだ間に合いますね。よろしくお願いします。
工藤:まだ間に合いますので、ぜひ出していただければと思います。問い合わせは、言論NPOが事務局をやっているので、そちらにどうぞ。
谷中:一番簡単なのは、まずホームページにアクセスしてみることでしょうかね。ホームページはエクセレントNPO大賞、で検索すればいいですね。
工藤:エクセレントNPO大賞で検索すれば出てきます。
谷中:念のため申し上げますと、電話番号は03-3527-3972。こちらは、平日9時半から17時半まで受け付けていらっしゃるということです。番組を聞いて、うちもちょっとやってみたいけど、これどうなのという方に、URLはこちらです。www.excellent-npo.netですね。
工藤:そうです。インターネットからも応募できますので、ぜひ、挑んでいただければと思います。
谷中:うちもエクセレントNPO目指したいのだけど、と言って、どこからやったら良いかと、むしろその点検にもなると思うのですが、日本の非営利組織をみていて、一番このへんが難しいのではないかと思われる点は何ですか。
工藤:僕が驚いているのは、市民とのつながりが弱いということです。さっきも言いましたが、やっぱり、市民がそこに参加して、市民の支持を得るということが、非常に大事です。市民もそこに参加することによって成長するわけですから、その市民性というところが、僕は大事な評価ポイントだと思っています。あと組織の評価基準のところというのは、かなり、自分たちの組織がこれでいいのだろうかということを考えさせられる。今回の市民賞、課題解決賞、組織賞というのは、それぞれが今の非営利セクターに必要な要素なので、当然そこのなかで選ばれるということは、十分自慢できるような感じがします。
谷中:今回、特別賞として、東日本大震災復興支援賞がありますね。
工藤:ここは、エクセレントNPOの評価基準を全て提要するのでは、まだできたばかりのNPOもありますので、難しいと思います。だから、そのなかの10項目だけを書いていただいて、その代わり、みなさんにドラマを書いてもらう。何を達成したのかとか、特に被災地の方には、何を実行したか、を文章で書いてもらって、そういうことを総合的に判断することになっています。
谷中:折しも、復興からちょうど2年目に入りますけれども、ちょうどこのNPOの在り方が見直される、すごく良いタイミングですね。
工藤:そうです。多くの人たちが善意でつながって、震災という困難に、市民が、みんなが連帯し合う。これは世界も驚いていました。僕が海外に行ってきて感じたことですが、一方で、なかなか政府が機能しないという問題もあるのですが、やはり市民の力というのが、これからの日本の未来を考える決定的な要素になると思うのです。なので、これを機会に僕たちは強い市民社会を目指していきたい。多くの人たちが、強い市民になって、主人公になってほしいと思っています。
谷中:そして、言論NPOとしても、次のステップ、その進化を続ける新たなかたちとしての組織のイメージというのもあるかもしれませんが、そこはどうでしょう。
工藤:私は、市民を、社会を強くするための議論のインフラをつくろうと思ってやってきました。あともう一つ、僕たちは重要なテーマがあって、強い民主主義をつくるということが僕たち言論NPOの大きなミッションです。このミッションを実現するために、僕は、健全な輿論をつくりたいのです。健全な輿論というのは、なんとなく情緒的な雰囲気ではなくて、きちんと責任ある議論をして、それで政治に対してものを言う。そして、僕らが、未来を自分で決断するような、そういうふうな民主主義のプラットフォームを対話の力でつくりあげたいと思っています。今準備をしているところです。
谷中:それを聞いてもいいですか。
工藤:いや、それが、今、実現するかどうかのかなり大詰めの作業を行っています。今まさに、それが大変なのです。僕は、強い民主主義をみんなでつくろうと、みんなでこの国の未来を考えようという流れをつくっていって、僕たちはその運営を担う、ひとつの触媒役になれればいいなと思っているのです。言論NPOは立ち位置を市民側において、強い市民社会のために貢献したいと思っています。
谷中:今、時代のスピードが早いので、まさに、一個ボタンのスイッチを押していくと、急速に変わる可能性はあるでしょう。
工藤:あります。そのためには、僕たちがちゃんと自分で決断すること。決断するためには、勉強もしなきゃいけないのですが、ただそういうふうな緊張感のある民主主義をつくっていかなきゃいけない。それは当事者性、当事者意識だと思うのです。自分たちが動かない限り、日本は変わらないのだ、ということを、どれだけ多くの人たちが、考え、思うかで、たぶん日本の将来は決まると思います。だから、みんなも、ラジオを聴いている人たちもそういう意識になってほしいなと思っています。日本は今、非常に大きな局面に立っているのです。未来に向かう、大きな変化を今から動かさないといけないと思っています。ぜひ皆さんもそういう意味では言論NPOのサイトも見てほしいし、また私のON THE WAYジャーナルも再開しますので、ぜひ、みんなで一緒に議論をつくっていきたいと思っています。
谷中:では結びに、今年、本当にやることいっぱいの一年になるのかなと思いますけれども。
工藤:そうですね、今年は勝負だし、スタートだなと思っています。でも、これは日本のスタートよりも、自分たちの人生のドラマのスタートだと思っています。
谷中:ぜひ、このエクセレントNPOを通じて、エクセレントジャパンをつくれるように、ですね。
工藤:そうですね。そういうかたちでやりたいと思っています。
谷中:はい。工藤さん、2週にわたってのお話、ありがとうございました。
工藤:どうもありがとうございました。