座談会「望ましい非営利組織とはなにか」報告

2011年2月02日

 2月2日、都内にて、言論NPOは「望ましい非営利組織とはなにか」についての座談会を開催しました。この座談会は、「「エクセレントNPO」をめざそう市民会議」による「エクセレントNPO」の提案を受けて、「望ましい非営利組織とはなにか」の議論を広げていくために、各界からゲストをお招きして言論NPOが開催するものです。第一回目となる今回は、代表工藤が司会を務め、コモンズ投信株式会社会長の渋澤健氏、市民会議共同代表で横浜市芸術文化振興財団代表理事・専務理事の島田京子氏、同理事の田中弥生氏(大学評価学位授与機構准教授)がゲストスピーカーとして参加しました。

工藤泰志 まず代表工藤は、今回の座談会の趣旨について、「日本が未来に向かうために、今こそ市民社会が強くならなければならない。そのために、いま、市民の受け皿となるべき非営利セクターについて真剣に考える時期に来ている。『エクセレントNPO』を社会に提案しながら、『望ましい非営利組織とはなにか』についての議論を深め、非営利の世界に目に見える変化を起こしていきたい」と述べ、これから始まる議論のスタートとしての位置づけを語りました。

 対談ではまず、「強い市民社会」が求められる背景やその中でNPOに求められる役割について議論が行われ、
渋澤健氏渋澤氏は「現在の日本のような逆ピラミッド型人口構造の社会では、ともすればツケをどんどん将来に回していく仕組みになりがち。より良い明日をつくるという未来指向の民主主義を貫くためには、一人ひとりの市民が、社会の持続性のためにどういう判断をしなければならないのかが問われる」と述べました。

島田京子氏 また島田氏は、「現代の社会の多様性を担保するのは、政府でも企業でもなく、一人ひとりの市民やNPO。一人ひとりの価値観が問われる時代にあって、一人が動いても大きな力にならないときに、その受け皿となるべきなのがNPOだと思う」と述べました。

 また、「非営利の世界になぜ、評価基準が必要なのか」については、工藤は問題提起として「企業社会においては、ある程度、利益をベースとして評価が可能になっているが、では非営利組織はどうかと考えると、どういう団体が優れた活動をしているかが極めて見えにくい。企業活動のような対価性がなくても、優れた活動というものもある」と述べました。これに対して渋澤氏は、「どんな世界にも評価する基準は必要」としたうえで、「NPOや社会起業家に魅力を感じるのは、彼らがパッションを持っているから。NPOの評価においては、そうした数値化できないが見えないところをどう評価するかという点が大切だ」と指摘しました。田中氏は、「NPOは本来多様な存在だが、そうは言っても何でもあり、というのが行き過ぎると問題。どこかで律するものが必要だと考えた」として、今回の評価基準策定の原点を語りました。

 その後、望ましい非営利組織像やエクセレントNPOの評価基準についての議論が行われ、
田中弥生氏まず田中氏は「寄付とボランティアは、市民が社会の課題に向き合い、参加するための重要なツールだが、残念ながら寄付を募ったりボランティアの協力を得ないことがプロだという人達もいる」として、日本の非営利組織像の中で抜け落ちてしまっているのが市民参加であるという点を指摘しました。これに対し島田氏は、「まだ形になっていないことを形にし、社会の課題に答えを出していくような、プロとしてのNPOが求められている。そうしたプロとしての組織であれば、組織としての責任があり、自分たちのミッションやプロセスをきちんと社会に伝えることが必要だ」としました。渋澤氏は、「寄付と募金の大きな違いは、寄付は『キャッチボール』だということ。ドナーとしては、投げたんだから、投げ返すなり打ち返すなりして欲しい。企業でIR活動があるように、非営利組織は、どうやったらドナーに対する満足度を高められるかという視点を常に持たなければならない」と述べました。

 最後に工藤は、今回の議論を総括して、「突破する人がいてそれを目指す人がいる。そういう変化をつくりだし、自分たちが社会の当事者であり、主人公なのだという気付きを多くの人々に感じてもらいたい」と述べ、今後こうした議論を活発に行なっていく意気込みを語りました。