1月28日、都内にて、「『エクセレントNPO』をめざそう市民会議」が主催する市民会議フォーラムが開催されました。今回は、代表工藤が司会を務め、同会議共同代表の國松孝次氏(救急ヘリ病院ネットワーク理事長)、小倉和夫氏(国際交流基金理事長)、島田京子氏(横浜市芸術文化振興財団代表理事・専務理事)の他、同会議理事の片山信彦氏(市民会議理事、ワールド・ビジョン・ジャパン常務理事・事務局長)と田中弥生氏(大学評価学位授与機構准教授)の二氏がパネリストとして参加し、約100名の参加者とともに議論が行われました。
まず、代表工藤は、「今こそ市民社会が強くなるための大きな変化を作りたい。そのために昨年私たちが公表した『エクセレントNPO』の評価基準について、なぜ私たちがこれを社会に提案するのか、私たちが思い描く『強く豊かな市民社会』とはどんな社会なのかということを皆さんと語り合いたい」と述べ、今回のフォーラムの開催趣旨を説明しました。理事の片山氏からは市民会議の組織についての説明が行われ、同じく理事の田中氏からは、この評価基準の開発の背景や、評価基準自体の説明が行われました。
そして、共同代表から評価基準の提案の背景、その意義についての発言がありました。
小倉氏は、「いま世界的に、政治に対する不信が高まっており、その理由の一つは、政治と市民の距離が乖離していることにある。その責任は市民にもあり、連帯して自らの責任を自覚するプロセスが必要だ」と述べ、「強い市民社会」の必要性を指摘しました。また、「NPO活動そのものが市民を育てるために重要であり、意識改革の手段でもある」とする一方で、「日本の非営利セクターの大きな問題の一つは規模が小さいこと。何が理想的な姿なのかが見えないと、NPOの影響力は大きくはならない」と述べ、今回の評価基準への期待感を表明しました。
國松氏は、理事としてNPO法人の運営を手がけている自身の経験に照らし合わせ、「自己判断だけではなく、社会的な仕組みとして評価のモノサシが定着し、優れたNPOが税制優遇の恩恵が受けられるようになることが望ましい」と述べました。
島田氏は、20年前に企業で社会貢献活動を立ち上げた経緯に触れ、「当時社会が大きく変わり始めた時期だったが、いま、第二の大きな変革が起こっていることを実感として感じる」と述べ、市民社会が大きな岐路にあるとの認識を示しました。一方で、「この20年間、非営利セクターがどのくらい成長したのか、疑問に思うこともある。強い市民社会を創り上げるためには、NPO自身が積極的な情報開示を行い、市民と向かい合う必要がある。ここで一つの評価基準をつくり上げ、市民や企業に対してその意義を伝えていく役割を担う必要があると思った」と述べ、自身がこの活動に参画した経緯を述べました。
また、今回は、前内閣でNPO税制の骨格作成に携わった渡辺周衆議院議員(前総務副大臣)も参加し、「多様化するニーズに応えるのは、非営利組織だ。まだ課題はあるが、まずは新しいNPO税制をスタートさせ、色々なご意見を伺いながら非営利の新しい展開をつくりたい」と述べました。
その後、会場の参加者との議論が行われました。会場からは、個別の評価基準についての質問が数多くなされたほか、市民会議の今後の展開などの踏み込んだ意見交換がなされました。参加者の一人は、「NPOは今までのようにアマチュアではなく、プロフェッショナルとして課題解決をしていかねばならず、その観点からは、この評価基準は市民セクターを強化するための押さえどころを突いていると思う」とする一方で、「財団などの資金の出し手に対して、市民会議はどう働きかけていくのか。また現在、地方議員とNPOの協働が活発になっているが、政治との距離感についてはどう考えるか」との質問がなされました。さらに、「今回の評価基準でNPO側の課題は浮き彫りになると思うが、一歩進んで、こうしたエクセレントなNPOを育てるに資する行政の在り方についても基準を設けていくべきではないか」との意見も出されました。
これら会場からの積極的な意見に対し、代表工藤は、「この評価基準は多くのNPOや助成機関、行政にも活用してほしいが、それだけではなく、これを契機に望ましい非営利組織とは何なのか、について市民レベルでも大きな議論を起こしていきたい」と述べ、NPOに限らず、行政や財団に対してもこの基準を提起して、刺激を与えていきたいとしました。
理事の片山氏は、「40,000団体のうち10%の4,000団体がこの基準を活用して自ら変われば、非営利セクターに大きな変革が起こると思っている。普及していくために中間支援組織や地方のNPOの皆さんとも積極的に連携していきたい」と述べ、市民会議として今後この活動を全国規模で展開していく旨を説明しました。
また、政治との関係については、田中氏から「活動を行なう中で、制度や慣習の問題に行き着くことは多々あるだろう。その際にアドボカシー活動が必要になるが、自分の団体や業界の利益ではなく、広くベネフィットが共有されるようなものこそが、社会正義のアドボカシーだ」との発言があったほか、代表工藤は、「政治的な中立性とは、プロセスの中立性であって、結果の中立性ではない。アドボカシーの際には、初めから特定の政党や利害に偏重するのではなく、透明性を持って徹底的に議論することが必要」と指摘しました。
最後に代表工藤は「望ましい非営利組織とは何かという議論をどんどん広める必要がある。課題に向かい合っている人たちを表に出すことで、『自分もやってみたい』という人達が増えて、市民社会に関わるすべての人達に波紋を広げていきたい」と述べ、今後も言論NPOとして市民会議の議論形成に積極的に参画していく意向を示しました。