非営利組織評価基準検討会 報告

2010年6月08日

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 6月7日(月)、都内にて非営利組織評価基準検討会が開催されました。今回は、政府の税制調査会市民公益税制プロジェクト・チームが先般公表した中間報告について、その座長である渡辺周総務副大臣をゲストに迎え、議論が行われました。

 検討会には代表の工藤のほか、関尚士氏(シャンティ国際ボランティア会事務局長)、堀江良彰氏(難民を助ける会事務局長)、加藤志保氏(チャイルドライン支援センター事務局長)、片山信彦氏(ワールド・ビジョン・ジャパン常務理事・事務局長)、根本悦子氏(ブリッジ・エーシア・ジャパン理事長)、田中弥生氏(大学評価・学位授与機構准教授)が参加しました。


 まず、渡辺副大臣は今後の市民公益税制の動きについて、「新政権でも、中間報告書の内容をベースとして引き続き議論が行われ、参院選後速やかに具体化に向けて動き始める。この話が急になくなることはない。ただ、これまでは当事者不在の中で議論を行ってきた感があるので、具体化にあたっては、非営利組織の実情をきちんと踏まえ、皆さんの意見を聞きながら持続可能な制度を設計していく」と述べ、広く市民の意見を集めながら着実に実現させる意向を示しました。また、学校法人や社会福祉法人の取り扱いや認定NPO法人数の増加やそれに伴う自治体業務の関係など、制度の内容についてもいくつか論点を挙げ、「単純に対象を広げたり数を増やせばいいという問題ではない。運営の透明性を踏まえて、フェアで持続可能な制度を、慎重に、冷静に作り上げていきたい」と述べました。

 田中氏は渡辺氏の発言を受け、本検討会として、所得税の税額控除の導入についてはプラスに評価したいとしつつも、「そもそも、目的は認定NPO法人数を増やすことではなく、その先で市民による寄付が増えることだ」と指摘し、制度設計にあたり、非営利セクターに関する的確な現状分析が欠けていたのではないかと疑問を呈しました。その根拠として田中氏は、2003年の改正時に合わせてパブリック・サポート・テスト(PST)にクリアする団体を調査したところ、すでに33%がこの基準をクリアしているという結果を示し、「認定数が増えないのは、PSTの基準以外に原因があるのではないか、といった議論がなかった」と指摘しました。

 また、片山氏は、「PSTは、ハードルが非常に高いテストというわけではない。きちんと事業を展開していて、ある程度の市民からの支えがあれば、クリアできる基準だと思う。それに、認定NPO法人格を取ったとしても、それで自動的に寄付が集まるわけではない。常に自助努力は重ねていかなければならないわけだし、それこそが非営利セクターの健全な姿だ」と述べました。さらに関氏は、「ゴールは、寄附文化の向上と強い市民社会の設計にあるのであり、そのために我々自身も能力の向上を図り、制度設計に積極的に関わっていかなければならない」と述べました。

 これらの議論を総括し、代表工藤は「政府の制度設計に市民の声が入る余地があることを感じ、安心した」としつつも、「公共領域は営利と非営利がともに担うことができるが、いま問われているのは、受益者負担では提供できないサービスを誰が担うことができるのか、という点。それこそ市民やNPOの役割のはずで、それを側面支援することが前首相の国会演説の発言だった。新しい公共の対象はそこにこそあるのに、最後に脱線し、営利に傾斜した枠組み作りが目的になった。NPOの要件緩和に関しても、NPOの実態を調べてのことか、疑問がある」と指摘しました。そして、「私たちは強い市民社会をつくるためには質の向上を目指して、非営利の世界に競争を起こさないといけないと考えている。そうした枠組みづくりは、市民側からも提起したい」と述べました。

 渡辺副大臣は、参加者のこうした意見を踏まえ、「非営利セクターの中にも、信用できるというガイドラインが必要だ。それを当たり前にしないと、寄付者が寄付先を選ぶことはできない。これまで理想を掲げて設計してきたが、一方で現実、実態を踏まえないといけないと考えている。多くのNPO、NGOを対象として直接ヒアリングを重ねながら、軌道修正しながら、次の政権の中でも引き続きいい制度を作るためにやっていきたい」と述べ、より優れた制度設計に向けての意欲を示しました。

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