2009年「第4回非営利組織評価基準検討会」 報告
7月9日、「第4回非営利組織評価基準検討会」が都内で開催され、片山信彦氏(ワールド・ビジョン・ジャパン常務理事・事務局長)、加藤志保氏(チャイルドライン支援センター事務局長)、多田千尋氏(東京おもちゃ美術館 日本グッド・トイ委員会代表)、堀江良彰氏(難民を助ける会事務局長)、田中弥生氏(大学評価・学位授与機構 准教授)、工藤泰志(言論NPO代表)が参加し、議論が交わされました。
これまでの研究会では、「望ましいNPOの条件」として「社会変革」「市民性」「組織の安定性」の3つが挙げられていますが、今回は前回に引き続き、主に「市民性」に関する討議が主として行われました。まず田中氏が、「参加」を「市民性」のキーワードとすることを確認し、それにかかるより具体的な構成要素の案を示しました。それは「ボランティア」「寄付者」「受益者」「理事・評議委員」の4項目からなっており、各々について更に踏み込んだ議論をすることとなりました。
「ボランティア」の項目に関して、片山氏は「国際的な活動の場合、ボランティアは補助的な作業中心になってしまう。現場を見てもらうなど、成果を実感できるようにすることが重要だ」と述べ、また多田氏から自己実現や当事者意識の重要性について指摘があり、個々人によって活動への関わり方も様々であるという意見が出されました。加藤氏は、参加することでボランティアに何らかの変化が生まれることを重視したいと発言しました。その後も参加の実感、関わり方の多様性、ボランティアの自己実現・成長といった観点についてさらに議論が交わされました。
次に「寄付者」について、田中氏は「寄付者の場合、ボランティアに比べて成果の実感を得るのが難しい」と問題提起しました。加藤氏は、チャイルドラインの活動の意義を寄付者にも実感してほしいと語り、片山氏と堀江氏は、電話や手紙、説明会などで成果を説明し、感謝の気持ちを伝えるなどの方法を挙げました。ボランティアだけではなく、寄付者もまた参加によって変わり、成長していくのではないかとの観点も示されました。田中氏は一連の議論を、「(寄付者に)成果を伝える、問題を共有する」「寄付者に安心してもらう」という形で整理しました。
「受益者」について堀江氏は、受益者の思いを汲み、受益者の参加と自立を促していくことが重要であることを述べました。田中氏は「受益者が貢献者になることもあるのではないか」と指摘し、大切なのは受益者への一方的な説明ではなく、活動への参加というプロセスを通じて知ってもらうことなのではないかとまとめました。
最後に残ったのは「理事・評価委員」の項目です。参加者の発言からは、経営戦略・運営方針の立案やより実行に近いものなど、NPO理事の役割にも様々な形態があり得ることが浮かび上がりましたが、「最低限の参加は必要だが、その先のあり方は多様である」という点で概ね同意が得られました。また、理事・理事会の問題は、3条件のうちの「組織の安定性」にも関係するのではないかとの指摘もありました。最後に社会変革をNPOの「成果」として評価可能なものにするためにはどうすればいいのかなど、次回以降の研究会につながる議論が交わされました。
言論NPOでは、今後もこの検討会などを通じて非営利組織や市民社会のあり方に関して議論を重ね、その内容を随時ホームページにて発信していきます。
インターン 楠本純(東京大学)