2007年11月1日、東京都千代田区の学術総合センターにおいて、第一回非営利組織評価研究会が行われました。
この研究会は、トヨタ財団の助成を受けて、自立した公共の担い手としてのNPOの可能性を探り、経営体としてのNPOの強化・発展の方途を探ることを目的としたものです。研究会には、言論NPO 代表の工藤の他、田中弥生大学評価・学位授与機構准教授、経済企画庁の初代経済研究所所長を務めた林雄二郎氏、大阪大学教授の山内直人氏、日本NPOセンター副代表理事の山岡義典氏が出席しました。第一回目である本日は、本研究会発足の背景、ミッション、研究体制等についての田中氏による報告の後、出席者全員による議論がなされました。
概要
まず、この研究会の代表を務める田中氏より、本研究会の背景や研究体制の概要についての報告がありました。その上で、本研究のミッションは、第一に「民間非営利組織が自立的にその事業と組織を営むモデルを模索すること」、そして第二に「このモデルをベースに『めやす』としての評価基準を作成すること」であるということが明らかにされました。そして、本委員会を様々な有識者へのヒアリングを行うことによって非営利組織に関する歴史的視点と国際的潮流をつかむための「基礎研究」の場とし、そのもとで「①財務的に良好なNPOの抽出」と「②イノベーションを可能にする条件」をテーマとする二つのワーキンググループを置くという研究体制をとることが述べられました。
田中氏による報告後、研究会のミッションや研究体制のあり方について、出席者による議論がなされました。
司会を務めた言論NPO代表の工藤は、まず、「非営利で言論の舞台に挑戦しようと決意して以来、動けば動くほど、非営利活動の可能性の大きさを痛感してきた。非営利組織であればかなりのことができると確信している。ただしこれは、持続的な仕組みという意味での『経営』という視点があればこそである。営利組織であろうが非営利組織であろうが、『経営』が必要であるということはなんら変わりはない。その点で、現在のNPOは逆の方向に行っているのではないか。強い意志を持ち、競争力のある経営体としてのNPOこそが、国の仕組みを変える可能性を持っている。まだまだ苦しい段階だが、この研究会の議論が、社会における共鳴なり、変化を引き起こす役割を担うことを願っている」と述べました。
その後の議論の中で、林氏は「営利企業の活動の場合は、『生産性』という尺度が明確であるが、NPOはそうではない。熱意や声の大きさに押されることのない形でのNPOの『生産性』の中身を明らかにしてほしい」と述べたのに対し、田中氏は「今回の研究会においては直接的にそこに焦点を当てようとは思っていない。それを生み出すための仕組み、条件を明らかにしたい」と述べました。山内氏からは、NPOの「持続性」をいかにこの仕組みの中に位置づけ、取り込むかという問題提起がなされました。これに対して工藤は、「必要なのは、ミッションを達成するための『持続性』であって、組織を維持するためのそれではない。財政的の安定と、良い事業に新たに挑んでいくダイナミックな動きを包括する意味があるのではないか」と述べました。
また研究体制のあり方については、山岡氏から「委員会は、オープンで、いろいろな若い研究者たちが参加することによってNPOについて議論できる場とすると良いのではないか。それによって、NPO研究の新しい潮流を作り出し、研究の新たなステップになればよい」との指摘がありました。
非営利組織評価研究会は、日本における自立した、競争力のある市民組織の研究の先駆けとなることを目指しています。言論NPOは、この議論形成に責任を持つ形で協力し、この研究会の成果および経過を随時報告していきます。
次回の研究会は、武田晴人東京大学大学院経済学研究科教授を迎え、2007年12月3日(月)に行われる予定です。
文責:インターン 山下泰静(東京大学)