「シリーズ日本の民主主義について考える ―地方議会は機能しているのか」有識者アンケート

2015年4月09日

議論「地方議会は機能しているのか」をみる
調査の概要

 言論NPOが、今年、シリーズでお届けしている「日本の民主主義について考える」。3回目の今回は、「地方議会は機能しているのか」と題して、有識者を対象にアンケート調査を行いました。調査は言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約6000人を対象に、2015年4月4日から4月6日の期間でアンケートの回答を依頼し、回答のあった152人の回答内容を分析しました。


回答者の属性

※各属性で示されている数値以外は無回答の割合。この頁以降、数値は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%とならない場合があります。


地方議会が地方政治の中で十分な役割を果たしていないとの回答が約6割

 今年4月12日と26日に実施される統一地方選挙に先立ち、現在の地方議会が地方政治の中で十分な役割を果たしているかを尋ねたところ、「役割を果たしていないと思う」(56.6%)との回答が約6割に迫った一方で、「役割を果たしている」(9.9%)との回答は1割にも満たなかった。



地方議会は、地域の課題解決に向けて政策機能を果たすべき

 地方議会の果たす役割として重要なことは何かと尋ねると、「国会の立法機能に準じる形で、地域の課題について条例制定などの政策機能を果たすこと」(38.2%)との回答が最多となり、「予算案や条例案の審議を通じ、首長の提案など自治体行政を監視すること」の30.3%を上回りました。有識者は、地方議会の果たす役割として自治体行政の監視役にとどまらず、地域の課題解決に向けて、政策機能を果たす役割に期待していることが分かります。

 一方、「地域の要望を実現すること」は9.9%にとどまっています。


現在の地方議会において、地方議員の質が伴っていないとの回答が半数を超え、今回の統一選で「政策立案能力」を候補者に求めるとの回答が最多となる

 昨年は地方議会において、不透明な政務調査費の使用やヤジの問題など様々な問題が噴出しました。こうした問題が頻発することに対して、「地方議会のどこに問題があると思うか」と尋ねたところ、「そもそも議員の質が伴っていない」(50.7%)との回答が半数を超えて最多となりました。この他、「議員に政策立案能力がない」(27.0%)との回答も約3割に上りました。


 では、今回の統一地方選挙において「地方議員の候補者に求めていることは何か」と尋ねたところ、「政策立案能力」との回答が半数を超え最多となり、有識者は、地域が直面する課題に対して議員が政策を立案し、十分な役割を果たすことに期待していることが明らかとなりました。


人口減少が進む中、地域の将来を見据えた街づくりの実現について、
地方議会には「期待できない」という意見が半数となる

 昨年5月、「2040年には896の自治体が人口減で消滅の恐れ」との推計が出されました。人口減少が加速する中で、「地方議会が各自治体の未来を見据えた魅力ある街をつくっていくことに期待できるか」どうかを尋ねました。「期待できない」(50.0%)との回答が半数に達した一方で、「期待できる」(12.5%)との回答は1割程度にとどまりました。
一方、「どちらともいえない」との回答も32.2%となり、現段階では判断を保留している層も一定程度存在しています。


議員の政策立案能力を向上させると同時に
地域の多様な人材が議会に参加できる仕組みが必要との回答が半数を超える

 「地方議会が課題に対する答えを出していくために、改善すべき点は何か」と尋ねたところ、「議員の政策能力の向上」(69.1%)が最多となり、ここでも多くの有識者は、地域の課題に答えを出していくためにも、地方議員に政策能力を向上させることが必要だと回答しています。

 「政策能力の向上」に続いて、「兼職を可能とし、勤労者が議員になれるような制度づくり」(66.4%)、「休日・夜間の議会の開催、通年議会の採用など、住民参加の機会の増加」(52.0%)が上位にくるなど、有識者は、より多様な人材が地方議会に参入できる仕組みを構築して、様々な視点から政策を吟味できる体制を整えることが重要だと認識していることがわかります。

 また、「政務活動費の使途や議員褒章などの情報公開の推進」(51.3%)や、「インターネットやテレビ中継など、住民に開かれた議会の開催」(46.1%)との回答も半数近く存在するなど、有識者の多くは、現在の地方議会では、十分な情報が開示されていないと考えていることが明らかになりました。


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