2016年8月
調査の概要
※数値は小数点第一位、または第二位を四捨五入しており、合計が100.0%とならない場合がある。
自国の将来
自国の将来について、日本人の39.8%は、「悲観的である(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」と回答し、「楽観的である(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」の20.7%を大きく上回っている。
日本の有識者ではこの傾向はさらに大きく、悲観的と考える人は53.7%と半数を超えている。
インドネシア人では、65.3%の人が「楽観的である」と回答し、「悲観的である」は3か国で最も少ない8.0%だった。
インド人では、「楽観的である」との見方が75.9%と7割を超え、3か国で最も多い。「悲観的である」は19.5%だった。
将来に悲観的な理由
自国の将来を悲観する理由として、日本人で最も多いのは、「急速に進む高齢化と人口減少に関して、有効な対策が提示されていないから」の84.7%で、これが突出している。以下、「経済成長が停滞しており、今後の立て直しの道筋が見えないから」(51.0%)、「日本の財政破綻リスクが高まっているから」(45.0%)、「安心できる健康保険制度、社会保障制度が整ってないから」(42.7%)、「国際テロや難民の増加など、解決が難しい世界の課題があるから」(38.7%)の順で続いている。
これに対して、日本の有識者では、「政治がポピュリズムに傾き、政治リーダーや政党に課題解決の能力がない」という政治に対する不信が36.4%で最も多く、「急速に進む高齢化と人口減少に関して、有効な対策が提示されていないから」が21.2%で続いている。
インドネシア人で最も多い理由は、「未だ国内の経済格差が大きく、貧困問題が解決されないから」の51.3%が最も多い。次いで、「政治や行政の汚職が未だ常態化しているから」(46.3%)、「経済発展のスピードが落ちているから」(33.8%)となり、この3つに回答が集中している。
インド人では、「政府及び行政における汚職がまん延しているから」が16%で最も多い。これに「社会的及び経済的政策が貧困と格差是正に機能していないから」が13%で続いている。
なお、この設問は、日本とインドネシアが選択肢から2つまでを選び、インドは単数回答となっている。
自国の民主主義は機能しているか
日本の民主主義が「機能している(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」と考えている日本人は、46.7%と最も多いが、「機能していない(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」も20.1%存在する。
これに対して、「民主主義が機能していない」と考える日本の有識者は67.4%存在する。
インドネシアでは、47.1%と半数近くが、民主主義は「機能している」と考えている。「機能していない」は15.6%だった。
インドの民主主義が「機能している」と考えているインド人は65.0%となり、3か国の中で突出して高い。ただ、「機能していない」も28.6%と3割近く存在する。
民主主義が機能していないと思う理由
自国の民主主義が機能していないと考える人に、その理由を尋ねたところ、日本人で最も多いのは、「選挙に勝つことが自己目的となり、政治が課題に真剣に向かい合っていないから」の60.2%で、これに「政党が選挙公約を守らず、十分に国民に説明しないなど国民に向かい合う政治が実現していないから」が45.3%で続き、政党や政治家に対する不信が高まっていることを、浮き彫りにしている。
これに対して、日本の有識者では、「選挙に勝つことが自己目的となり、政治が課題に真剣に向かい合っていないから」が44.2%で最も多いが、「ジャーナリズムが商業主義となり、政治への適切な監視や健全な議論の提供者としての役割を欠いている」も40.7%と並んでおり、メディアに対する批判も強い。
インドネシア人では、「政治・行政側の腐敗や汚職が止まらないから」が63.5%で突出し、これに「国内での貧富の格差が大きいから」が35.9%で続いている。
インド人で最も多いのは、「政党が選挙公約を守らず、十分に国民に説明しないなど国民に向かい合う政治が実現していないから」と、「政治家や政治リーダーに汚職が多いから」の2つでそれぞれ22%だった。
民主主義発展のために解決すべき問題
民主主義を発展させるために解決すべきだと考える問題について尋ねたところ、日本人で最も多い回答は、「政党、政治資金制度」で47.6%が突出している。以下、「官僚機構、行政システム」(27.2%)、「有権者の姿勢」(23.0%)、「選挙制度」(20.5%)が2割台で続いている。
これに対して、日本の有識者は、「選挙制度」が47.7%で最も多く、「有権者の姿勢」が37.5%、「メディア報道」が33.5%で続いている。
インドネシア人で最も多い回答は、「司法制度」の39.0%で、次いで、「教育制度、識字率」が(23.3%)、「有権者の姿勢」(22.6%)、「政党、政治資金制度」(22.5%)が並んでいる。
インド人で最も多い回答は、「汚職、アカウンタビリティの欠如」の41.3%で、これが突出している。「経済の不確実性」の27.4%、「メディア報道」の17.6%、さらに「闇の経済活動」が14%で続いている。
自国の政党は期待できるか
自国が直面している課題の解決や経済発展を、自国の政党に期待できるか尋ねたところ、日本人では政党に「期待できない(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」が51.7%と半数存在する。「期待できる(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」は15.5%にすぎなかった。
日本の有識者もほぼ同じ傾向で、50.3%と半数が政党に「期待できない」と答えている。
他方、インドネシア人では、「期待できる」が58.3%と6割近くになり、「期待できない」の14.2%を大きく上回っている。
そして、インド人では85.9%と圧倒的多数が「期待できる」と回答している。
自国の選挙制度は公平か
自国の選挙制度は適切に民意を反映できる公平な制度だと思うか尋ねたところ、日本人では「そう思わない(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」が39.7%となり、4割が「公平ではない」と感じている。「そう思う(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」は27.4%と約3割だった。ただ、「どちらともいえない」と評価しかねている人も32.6%いる。
日本の有識者では、48.6%と約半数が、「公平ではない」と感じている。
これに対して、インドネシア人では、「そう思う」が52.5%と半数が自国の選挙制度が「公平」だと考えている。「そう思わない」は25.1%だった。
なお、インドでは本設問に関する調査を実施していない。
【インド世論のみ】インドの民主主義
インドではその代わりに以下の2つの設問を調査で聞いている。
まず、「インドの民主主義にとって上院の役割は重要か」と尋ねたところ、80.8%が「そう思う(「非常に」と「どちらかといえば」の合計)」と回答している。
次に、「強い政党と政治は強い民主主義を促すか」と尋ねたところ、79.7%が「そう思う(「非常に」と「どちらかといえば」の合計)」と答えた。
この10年間の世界の民主主義の状況
過去10年間における、世界の民主主義の状況をどのように見ているか尋ねたところ、日本人では「特に変わらない」が33.8%で最も多く、「発展した(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」は26.5%でした。「後退した(「どちらかといえば」を含む、以後同様)」と判断している人も17.7%、「分からない」も22%だった。
これに対して、日本の有識者では、世界の民主主義は「後退した」と判断する人が56.5%と6割近く存在する。
他方、インドネシア人では、「発展した」が61.1%で、「後退した」は7.3%にすぎない。
そしてインド人では、「発展した」が79.5%と8割に迫っている。
民主主義は望ましい政治形態なのか
民主主義は望ましい政治形態なのか尋ねたところ、日本人の47.0%が「民主主義はどんなほかの政治形態より好ましい」と回答している。ただ、「分からない」と判断しかねている人も30.8%と3割存在する。さらに、「一部の環境や状況によっては、非民主的な政治形態が存在しても構わない」も17.3%いる。
これに対して、日本の有識者は、「民主主義はどんなほかの政治形態より好ましい」が77.4%と8割近くになっている。
インドネシア人では、「民主主義はどんなほかの政治形態より好ましい」が55.1%で最も多い。「一部の環境や状況によっては、非民主的な政治形態が存在しても構わない」は21.3%だった。
インド人では、「民主主義はどんなほかの政治形態より好ましい」が57.6%で最も多く、3か国の中で最も高い割合である。ただ、「一部の環境や状況によっては、非民主的な政治形態が存在しても構わない」(34.5%)の割合も3割以上存在する。
強い政治リーダーは必要か
現在、世界ではグローバル化や国際秩序の不安定化の中で、強い政治リーダーを国民が求める傾向にある。その中で、自国の政治指導者のリーダーシップはどうあるべきか質問した。これに対し日本人では、59.7%と6割が、「あくまでも民主的な制度の範囲で強いリーダーシップを発揮すべき」と回答している。ただ、「自国の経済や社会がより発展するのであれば、多少非民主的でも強いリーダーシップを持っても構わない」と考える人も17.2%と2割程度見られる。
これに対して、日本の有識者は92.1%と9割を超える人が、「あくまでも民主的な制度の範囲で強いリーダーシップを発揮すべき」と回答している。
インドネシア人でも同様の傾向が見られ、「あくまでも民主的な制度の範囲で強いリーダーシップを発揮すべき」が65.4%と6割を超えている。ただ、「自国の経済や社会がより発展するのであれば、多少非民主的でも強いリーダーシップを持っても構わない」が22.9%あるほか、「強いリーダーシップこそが重要であり、民主的であるかは重要ではない」が、7.9%存在する。
インド人も同様で、「あくまでも民主的な制度の範囲で強いリーダーシップを発揮すべき」が62.6%と6割を超えるが、「自国の経済や社会がより発展するのであれば、多少非民主的でも強いリーダーシップを持っても構わない」も26.0%ある。「強いリーダーシップこそが重要であり、民主的であるかは重要ではない」も6.8%存在する。
民主主義はアジアや世界で今後も普及するか
今後、民主主義というシステムを採用する国が、アジアや世界でさらに広がっていくと思うか尋ねたところ、日本人では「現在とさほど変わらない」との見方が46.8%で最も多く、「増えていく」は28.4%と3割に満たない。「分からない」が21.9%である。ただ、「逆に権威主義的な国が増え、民主的な国は縮小していく」は2.8%にすぎない。
これに対して、日本の有識者では「増えていく」が、38.4%と4割近くある。
インドネシア人では、「増えていく」との見方が最も多く、58.3%と6割近い。「逆に権威主義的な国が増え、民主的な国は縮小していく」は2.9%にすぎない。
インド人でも「増えていく」との見方が59.8%で最も多い。「逆に権威主義的な国が増え、民主的な国は縮小していく」は5.7%である。
世界におけるアメリカの役割をどう考えるか
最後に、アメリカの世界における今後の役割について聞いた。アメリカと同盟関係にある日本だが、「アメリカは過去同様に覇権国としてアジアをはじめ世界の問題に関与し、影響力を行使すべき」は27.9%と3割未満である。これに対して、「過去数十年のアメリカの役割は過剰であり、他の地域のことはその地域の国々を中心に進め、あくまでも補完的役割としてのみ関与すべき」との回答が38.9%で最も多い。ただ、「今後アメリカは他の地域のことに関与すべきではない」は3.5%にすぎない。
これに対して、インドネシア人では、「今後アメリカは他の地域のことに関与すべきではない」が38.7%で最も多い。続いて、「過去数十年のアメリカの役割は過剰であり、他の地域のことはその地域の国々を中心に進め、あくまでも補完的役割としてのみ関与すべき」も33.3%あるなど、合わせると7割以上がこれまでのアメリカの世界の役割に対して否定的な見方をしている。
インド人は、逆に「アメリカは過去同様に覇権国としてアジアをはじめ世界の問題に関与し、影響力を行使すべき」が63.7%で突出している。