言論NPO設立15周年記念フォーラム オープニングフォーラム
「民主主義の将来と言論NPOの役割」

2016年11月22日

言論NPO設立15周年パーティー
言論NPO設立15周年記念フォーラム アドバイザリーボード公開会議
セッション2「日本は民主主義と自国の将来像をどう描くか」
セッション1「リベラルデモクラシーの行方:揺れる世界秩序と台頭するポピュリズム」

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 設立15周年を迎えた「言論NPO」(代表・工藤泰志)は11月21日、都内のホテルで記念フォーラム「民主主義の将来と言論の責任」を開催しました。

 オープニングを飾るフォーラムでは、工藤が日本テレビ「NEWS ZERO」のメインキャスターを務める村尾信尚氏(関西学院大学教授)の質問に答える形で、課題解決に挑む新しい動きをつくってきたこれまでの15年を振り返りながら、「『トランプ現象』に見舞われた今こそ、自由・民主主義を考える大きなチャンス」と語り、これからの5年に向けた抱負を語りました。

YKAA0230.jpg まず、工藤は15年前の立ち上げ時を振り返りながら、「主権者は市民であり、自分たちの将来は自分たちでつくっていこうという視点から、政党のマニフェスト評価を開始し、有権者と政治家との間に緊張感ある関係をつくり、市民が強くなって課題解決を迫っていくような政治を目指したい」と語り、言論NPO立ち上げの初心を説明しました。

 一方で、工藤は2005年に開始した「東京-北京フォーラム」や2013年から実施している「日韓未来対話」など民間外交の取り組みについて、「政治外交が立ち行かなくなった時には、民間・市民が動くしかない」との思いから立ち上げたと語りました。それから月日が経ち、「様々な閉塞感がある中で、今ある危機をどう乗り越えるか、という問題意識から大きな流れをつくることができた。同時に、課題解決に向けた対話を一緒に挑んでくれるネットワークも広がり始め、15年必死で活動を続けてきたことで、ようやく土台が固まってきた」とこれまでの活動を振り返りました。

YKAA0086.jpg この話を受けて村尾氏は、「緊張関係にある東アジアでは、特に民間対話が重要だが、言論NPOは日本だけでなく、韓国、中国でも世論調査をやっているが、難しいことは何か」と疑問を呈しました。これに対して工藤は、中国側は最初、中国で世論調査を行うこと自体「絶対ダメだ」と主張していたものの、「学術調査なら」という形で世論調査が実現に至ったことを紹介。その上で、2005年の初めての調査結果で一番驚いたこととして、中国人の64%が、今の日本を軍国主義だと思っていたこと、また、日本からのODAを知っている中国人は1%にも満たないという結果だったことを紹介。その背景として、「メディアの影響力があまりにも大きく、まず、両国の交流以前に、お互いの基礎知識を高めないと、相互理解のベースがつくれない」と感じたことを紹介し、中国との対話を行っていくことの難しさを語りました。

YKAA0082.jpg 次に村尾氏は、「民主主義が最も輝く時が選挙だが、米国ではその結果、暴言を吐いてきたトランプ氏が当選した」との話題を振りました。これについて工藤は、「民主主義とは基本的に多数決であり、その仕組みを使ってヒトラーが生まれ、虐殺が行われた」ことを振り返りつつ、「民主主義は完全ではないし、危ういものであるが、それを乗り越えて多くの人たちが、自由になることができた」と語りました。さらに工藤は、今回の米国大統領選の結果を受けてニューヨークタイムズが反省文を載せるなどしていることを紹介し、「多くの知識層はこれまで危機と向かい合ってきたのか」と問題提起。その上で工藤は、「課題解決が出来ない民主主義は脆弱なものだと気づくことができた米国大統領選こそ、民主主義を活用して課題に挑んでいく、再スタートのタイミングではないか」と述べ、「トランプ現象」が、民主主義を考える上で1つの契機にしていくべきとの考えを語りました。

 さらに工藤は、日本は政治との距離が遠く、8月に行った世論調査では、日本人の約4割が将来に不安を感じていること、その背景として、急速な高齢化と人口減少を挙げていることを紹介しました。この結果を受けて工藤は「日本人が、ここまで将来に対して不安を抱き、自分たちのリーダーに不信を抱いていることは問題であり、ジャーナリストも含め、いろんなところで日本の将来に対する対話を始めないと問題は解決しない」との認識を示し、警鐘を鳴らしました。

YKAA0137.jpg 最後に、言論NPOのこれからの5年について工藤は、「グローバリゼーションが進み、自由と民主主義がぶつかり合っている。民主主義は完全ではないが、民主主義を機能させるための議論を我々はしなければならない。こうした思いを共有する土台はできており、知識層だけでなく、一般の人たちも巻き込みながら課題解決の目標をつくり、こうした動きを次の世代に繋げていきたい」と語り、オープニングのフォーラムを締めくくりました。

 その後、海外の識者を招聘して行われた第1セッション「リベラルデモクラシーの行方:揺れる世界秩序と台頭するポピュリズム」に議論は移りました。