民主主義を発展させるために、アジア各国が議論する場の重要性が指摘された ~「第3回アジア言論人会議」レセプション報告~

2017年9月05日

AR1_0498.jpg 9月8日、丸1日にわたって議論が展開された「第3回アジア言論人会議」の公開フォーラム終了後、議論に参加したパネリストや言論NPOの関係者が集まりレセプションパーティーが開催されました。

AR1_0495.jpg 最初に、言論NPO代表の工藤泰志が開会の挨拶に立ち、「言論NPOの目標は民主主義を強くすることだが、今回の対話の場が、民主主義の課題を解決するためのプラットフォームになるだろう」と語り、今後もこの対話を続けていく決意を語りました。


多くの参加者から今回の対話の成功と、次回の対話に期待が示された

名称未設定-2.jpg 続いて、パネリスとして参加した松本剛明・衆議院議員(自民党)、牧山弘恵・参議院議員(民進党)に加え、上田勇・衆議院議員(公明党)が挨拶を行いました。3人に共通していたのは、今回のような対話の場が、民主主義の強化やアジアの相互理解促進に大きな役割を果たしており、対話を続けていくことの重要性でした。加えて、松本氏と上田氏からは、言論NPOが行っているマニフェスト評価についても発言があり、政策論争を活発にし、民主主義を強化する上でも非常に重要であり、今後も続けてほしいと言論NPOの活動への期待が示されました。

AR1_0528.jpg その後、アリヒム・タスリフ駐日インドネシア大使が登壇し、「第3回アジア言論人会議」の成功に祝辞を述べるとともに、言論NPOの活動が、日本やインド、インドネシアといったアジアの民主主義国間の連携を強化していることに、大きな期待を寄せました。

 さらに大使は、アジアの民主主義国について、各々問題を抱えているものの、それぞれの国が民主主義を実践し、発展させようとしてきた。そうした事例を持ち寄り、議論する今回のような対話の場が、アジア、世界の民主主義を強くしていくだろうと、「アジア言論人会議」の重要性や意義を強調しました。 

 最後に大使は、民主主義のさらなる発展と、各国が共に繁栄できることを祈念して乾杯の発声を行いました。
 
 参加者間での歓談後、さらに挨拶が続きます。
AR1_0605.jpg まず、上智国際関係研究所代表で、言論NPOのアドバイザリーボードの一員でもある藤崎一郎氏からは、言論NPOの今後の活動への支援が呼びかけられました。


民主主義を下支えする市民社会が連携し、経験を共有していくことが重要

AR1_0620.jpg 続いて、伊藤信太郎・衆議院議員(自民党)は、民主主義というものは一つのフレームワークによって上から規定できるものではなく、様々な過程の積み重ねによって生じてくるものであると語り、今回のような対話の場がそうした過程の一つになるだろうと期待を込めました。

AR1_0636.jpg 逢沢一郎・衆議院議員(自民党)からは、民主主義というのは人間が構成する社会そのものであり、様々な歴史的・社会的背景があり一筋縄で捉えることはできないとして、民主主義についての議論の難しさを指摘しました。その上で、私たちはこの困難に対して、歴史的・社会的問題に一つずつ向き合っていくしかないと強調しました。さらに逢沢氏は、ドイツの地域社会が難民に対して寛容な態度を取っている例を引き合いに出し、違いを認め合うという柔軟な態度を日常から実践していくことが重要だろうと述べました。

AR1_0642.jpg インドネシアのパネリストとして参加したアティ・ヌルバイティ・ハディマジャ氏(ジャカルタポスト副編集長)は、今回の対話の意義を強調した上で、民主主義の発展のためには違いに向き合うことが必要であり、様々な人と触れ合うことの重要性を指摘しました。

AR1_0656.jpg マレーシアのパネリストとして参加したムルデカセンター共同創設者のイブラヒム・スフィアン氏は、マレーシアは民主主義の伝統がまだ浅く、主にイギリスの影響を受けているが、今回の対話で日本人から民主主義についての意見や経験を聞けたことは「極めて新鮮だった」と振り返りました。加えて、それぞれの国の状況を比較できたことは有意義だったとし、アジア地域では皆が高い質の民主主義を求めているということを再確認できたことは重要であり、今後の対話により多くの国が参加することに期待を示ししました。

AR1_0661.jpg 立命館大学国際関係学部教授の本名純氏は、アジアの民主主義を研究する立場から、各国の専門家による対話の場の重要性を指摘しました。さらに本名氏は、日本はアジアの中でも民主主義が早くから根付いており、この価値をアジアに広げていく上で日本の果たす役割は大きいと指摘。その上で、「アジア言論人会議」の場などを通して、様々な民主主義国とパートナー関係を築いていく必要性を強調しました。

AR1_0671.jpg 最後に、ジェトロ・アジア経済研究所東南アジア研究グループ長代理の川村晃一氏は、インドネシアの民主化について、同国の民主主義は日本から何かを学ぶという段階から、日本と経験を共有するという段階に来ている、として民主主義を下支えする市民社会が連携し、経験を共有していくことが大事になってきていると指摘しました。

 その後も歓談が続けられ、レセプションは盛況のうちに終了しました。

文責:松田大輝(言論NPOインターン)

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