「日独シンポジウム『戦後70年―日独がめざす 平和と民主主義の新しい展望』」有識者アンケート

2015年6月04日

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調査の概要

 言論NPOは、6月4日開催の日独シンポジウム「戦後70年―日独がめざす平和と民主主義のあり方とは」に先立ち、有識者を対象にアンケート調査を行いました。調査は言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約6000人を対象に、2015年6月2日から6月4日の期間でアンケートの回答を依頼し、回答のあった200人の回答内容を分析しました。


回答者の属性

※各属性で示されている数値以外は無回答の割合。この頁以降、数値は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%とならない場合があります。


民主主義の成熟度について、6割の有識者が、ドイツの方がより優れていると回答

 まず、「民主主義の成熟度について日本とドイツのどちらが優れているイメージがあるか」と尋ねたところ、63.0%の有識者が「ドイツ」と回答した。一方で、「日本」と回答した有識者はわずか2.0%しかおらず、ドイツよりも日本の民主主義により多くの課題があると感じている有識者が圧倒的に多い。

【図表1 民主主義成熟度において、日独はどちらが優れているか】


6割が、政治教育の仕組みが整っているドイツから学ぶものがある、と感じている

 日本に示唆を与えるドイツの特徴的な政治や制度を複数回答形式で尋ねたところ、「民主主義の能力育成のため、連邦・州政府が政党や労働組合、教会などと連携しつつ、幅広い政治教育を展開していること」が58.5%で最も多く、多くの有識者は、政治教育の仕組みが整っているドイツから学ぶものがあると考えている。
 これに「憲法裁判所と『強い司法』」が48.0%、「議員の専門性が重視されること」が45.0%で続いている。

【図表2 日本への示唆になるドイツの政治・制度】


4割が民主主義の発展の可能性について、慎重な見方を示している

 世界において「民主主義の危機」がささやかれる中、日本の有識者は、今後のデモクラシーの展開をどのように予想しているのか。
その結果、「どちらともいえない」が41.0%で最も多く、日本の有識者は、デモクラシー発展の可能性について、慎重な見方を示している。一方、「発展していく」は22.0%で、「衰退していくと思う」の19.0%をわずかながら上回った。

【図表3 今後、民主主義は発展するのか、衰退するのか】

  • 「その他」を選択した方の記述回答


「個人の基本的な人権の尊重」を最重要視している日本の有識者

 そのデモクラシーの中で、最も重要な基準は何かを尋ねたところ、最も多かったのは、「個人の基本的な人権の尊重」で、37.0%だった。これに「三権分立」が続いているが、19.0%と2割を切り、以下、「法の支配」(9.5%)、「表現・結社・信教の自由」(9.0%)、「政治的な自由」(8.0%)と、いずれも1割に満たなかった。日本の有識者は、「個人の基本的な人権の尊重」を特に重要視していることが浮き彫りとなっている結果となった。

【図表4 デモクラシーの中で、最も重要な基準】


半数近くが、今後20年間で「日本は戦争に巻き込まれる、あるいは自ら戦争を行う」と予想

 日本の安全保障政策が大きく動き始めている中、「今後20年の間に、日本が戦争に巻き込まれる、あるいは自ら戦争を行うことがあるか」と尋ねたところ、「あると思う」(「どちらかといえば」を含む)は47.5%と半数近くにのぼり、「ないと思う」(「どちらかといえば」を含む)の27.5%を大きく上回っている。

【図表5 今後20年間において、日本は戦争に関わることがあるか】


6割近くが、ドイツの方がより近隣国との和解のための努力をしてきたと評価

 日本とドイツが、戦後70年を迎える中、これまで両国のどちらがより近隣国と和解のための努力をしてきたと思うかを尋ねたところ、「ドイツ」が58.5%でと6割近くにのぼり、「日本」の2.0%を大きく上回った。ただ、「前提条件が異なるので、比較することは妥当ではない」との見方も29.5%と3割程度存在している。

【図表6 近隣国との和解のため、日独はどちらがより努力して来たか】


8割の有識者が、日本も和解のために草の根の民間交流を進めていくべきと回答

 そのドイツは、近隣国(フランスやポーランド)と和解をしていくために、相互に青少年を一般家庭に受け入れ、数週間ホームステイさせるなどの地道な取り組みを約50年にわたり行ってきた。そこで、日本も周辺国(中国、韓国など)と、このような草の根の民間交流を進めていくべきかを尋ねた。
 その結果、「そう思う」(「強く」、「やや」の合計)が80.0%と8割に達し、「そう思わない」「全く」、「あまり」の合計)の12.0%を圧倒している。

【図表7 周辺国との和解のため、日本も草の根の民間交流をすべきか】


北東アジアで平和的な秩序をつくり出すために、「民間外交」の果たす役割に対して、9割の有識者が期待している

 昨年実施した「第10回日中共同世論調査」や、「第2回日韓共同世論調査」では、日中間、あるいは日韓間で互いに相手国に対する軍事的な脅威感が高まっていることが明らかになった。しかし現在、北東アジア地域では、「政府間外交」があまり機能していない状況にある。そこで、この地域において平和を構築していく上で、民間が行う外交である「民間外交」の役割に対する期待を尋ねた。
 これに対しては、「期待している(「どちらかといえば」を含む)」との回答が88.0%と9割近くに達した。一方、「期待していない(「どちらかといえば」を含む)」は8.5%と1割にも満たず、有識者は民間外交に対して強い期待を寄せている。

【図表8 北東アジアの平和構築のため、民間外交に期待しているか】