設立17周年記念パーティー 報告

2018年11月22日

⇒ オープニングフォーラム 報告
⇒ 第1セッション「代議制民主主義の危機をどう見るか」報告
⇒ 第2セッション「民主主義への信頼をどう取り戻すのか」報告


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 設立17周年を迎えた言論NPOは、設立日の11月21日に17周年記念パーティーを開催しました。パーティーには、午後から開催されていた記念フォーラム「代表制民主主義は信頼を回復できるのか」に登壇したパネリストや言論NPOの議論にご協力いただいている関係者約60人が参加しました。

YKAA2170.jpg 開会の挨拶に立った言論NPO理事の近藤誠一氏は(近藤文化・外交研究所代表、元文化庁長官)、「行き詰まり始めている民主主義だが、それに代わるシステムはなく、それをどうやって地道に変えていくか、本来の民主主義の機能を果たせるようにするためには何が必要か、そういったことで様々な議論ができた」と午後に行われたフォーラムでの議論を振り返りました。そして、言論NPOが設立当初から主張してきた「民主主義を強くしたい」という思いが、今や世界中に民主主義の議論の輪が広がっていることに喜びを示しながら、これまで言論NPOの活動に協力していただいた参加者にお礼を述べて、記念パーティーの開会の挨拶に代えました。

YKAA1973.jpg 次に、言論NPOのアドバイザリーボードを代表して大橋光夫氏(昭和電工株式会社最高顧問)が登壇し、民主主義を強くするということで立ち上がった言論NPOが、17年も続いてきたことは非常に大きな財産だ、と語りました。その上で、大橋氏は、国際情勢が大きく動き、民主主義が不安定になっていく時だからこそ、日本人が持っている精神を活かして、民主主義の今後をどうするか、また世界の情勢をどうやってまとめていくのか、日本が大きな役割を果たす時期に来ているとの見解を示しました。そうしたことを実現するためにも、言論NPOはこれまでの財産を活かしながら、頑張ってほしい、とエールを送りました。

YKAA2183.jpg 続いて登壇した西村康稔氏(内閣官房副長官)は、世界情勢が先行き不透明な状況の中で、自由な貿易、通商の仕組みが変わっていくのではないか、という不安を世界中が抱いている。そうした中で、日本として、これまでの秩序を守り、自由で公正な通商の仕組みを維持していくためにも、TPP11や日欧EPAの妥結に取り組んできたことを紹介しながら、日本はアメリカとも交渉をし、中国にも質すべきところは質していきたい、と政府の立場を強調しました。そして、世界が、日本が平和で豊かであり続けるためにも、言論NPOの議論も参考にしながら、日本政府としてしっかりと努力していきたいと語りました。

IMG_0695.jpg その後、乾杯のあいさつに立った、言論NPO代表の工藤泰志は、北東アジアの平和、世界の課題解決、民主主義を強くするという、言論NPOが取り組んでいる3つの活動について説明。中でも今回のテーマである民主主義について、熱く語り始めました。

 工藤はまず、日本の政治は、世界やアジアに目を向けなければいけないが、それをしっかりと受け止められる民間の舞台があまりにも少ない、と指摘。そこで、言論NPOが世界とアジアのネットワークをつくりながら、日本の政治家にも参加してもらい、「自由や民主主義の規範を守りながら、世界のために役に立つ日本の環境づくりをしていきたい」と今後の言論NPOの展開を説明しました。

 一方で、日本で選挙や国会、政党といった代表制民主主義の中で必要不可欠な仕組みに対する国民の信頼が低下し、国民が政治に対して距離をおいているという状況を説明。

 こうした状況を打破し、日本の民主主義を立て直していくためにも、日本の代表制民主主義の信頼を取り戻すためのプランをつくり、日本の政治にぶつけていきたい、との目標を示し、会場に集まった国内外の参加者に協力を呼びかけ、乾杯の発声を行いました。

YKAA2230.jpg 続く藤崎一郎氏は(言論NPOアドバイザリーボードメンバー、日米協会会長)、言論NPOの「NPO」を「無いんだよ、ピーピーしている、お金くれ」とユーモアたっぷりに説明し、昨年から始まった「ふるさと納税制度」を活用した寄附を含め、言論NPOへの支援を呼びかけました。

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 歓談の後、11月21日・22日の2日間にわたり参加しているパネリストの挨拶に移りました。

YKAA2240.jpgデニス・マクシェーン(元イギリス欧州担当相、元下院議員)
世界では中国の影響力が拡大しているが、日本は世界の進歩、世界の平和にどの国よりも貢献してきたと思う。イギリスはヨーロッパから離脱するので、日本と一緒になるということを表明したい。

YKAA2255.jpgドミニック・レニエ (仏政治刷新研究基金代表、パリ政治学院教授)
民主主義をテーマにして、現状の課題をあぶり出し、将来を議論することは非常に重要だ。今、日本を含めた42カ国を対象とした世論調査が最終段階にきている。こうした調査結果を踏まえながら、今日のように、協力し合って将来に向けて、民主主義の議論ができることを楽しみにしている。

YKAA2266.jpgギデオン・ラックマン(フィナンシャル・タイムズ・外交問題コラムニスト)
フィナンシャル・タイムズで政治の記事を書いているが、アメリカやブラジル、EUなどで起こっている民主主義の現状についての記事も書いている。今回こうしたテーマで議論することは非常によかった。

YKAA2280.jpgハッサン・ウィラユダ(元インドネシア外相)
日本は発展し、成熟した民主主義国家だ。一方で、我々が済むアジア太平洋地域は民主主義の大きな赤字を抱えている。アジア太平洋地域の55カ国のうち、民主主義と呼ばれる国は28%しかない。また、民主主義には至っていない国が32%、残りの国は民主主義とは全く言えない状況だ。だからこそ、アジア太平洋地域で、民主主義についての議論を行うフォーラムがつくられているということは大変価値のあることだと思う。
 これまで、民主主義について日本はあまり前面にでてこなかったが、日本が積極的に動き始めたことは非常にうれしいこと。日本はアジアの地域にとって、民主主義の強化、そして平和と安全のパートナーになれると思っている。

YKAA2298.jpgイェニー・ワヒド(インドネシア・ワヒド研究所所長)
民主主義が変化していく中で、民主主義についてもっと議論し合い、次世代の人たちが育っていくことは重要だ。言論NPOが17周年を迎えた今回のフォーラムやパーティーのように、節目の時にはお祝いに駆け付けたいと思う。

YKAA2317.jpgトム・ヴィラリン(フィリピン下院議員)
ドゥテルテ大統領は民主主義を使って選挙に勝ち、自分の権力を固めようとしている。民主主義のツールであった選挙というものがハイジャックされ、独裁者のツールとなってしまった。しかし、それは私たちの責任でもある。なぜ、民主主義の重要なツールであるものを独裁者に渡してしまったのか。そして彼らが、このツールを使って民主主義を攻撃するのを許しているのか、ということを真剣に考える必要がある。


 こうしたパネリストからの期待と共感の声を受け、最後の挨拶に立った工藤は、「今回のフォーラムを機会に、国内外の多くの人たちに日本にこうした活動を行っている団体が存在していることを知ってもらいたい。同時に、いろいろな形で協力し合って、我々が大事にしている民主主義や自由の規範を守るために一緒に努力したい」と語り、挨拶を締めくくりました。