政党のガバナンスをチェックし、政党の質を高める
武藤:色々問題があるからといって二院制を一院制するような大掛かりな制度改正を現実にやろうとしたら成功しないと思う。それよりは現在の仕組みの運用を工夫する余地はたくさんある。例えば、国会運営の日程を事前に決めておき、初めから中身を議論することが必要である。また、衆議院で先議するとか、参議院は後からだとかは、より柔軟に対応する必要がある。さらに、審議に関して今6カ月以上9カ月近く国会を開いているが、その間閣僚が拘束される。こういうことをしていると政治がなかなかきちんとしたことを出来ない。他方で、マニフェストについては公正な評価機関をワンセットで作らないと、マニフェストは事実上の詐欺行為に近くなる。最後に申し上げたいのは政党のガバナンスをチェックする、政党が何をやりたいか、何をやりたいかをどのように決めたか、やれないときはどうするのか、人材をどのように登用しているのか、そういう企業で言えばガバナンス、これをチェックした方が政党の質が向上する。よりしっかりした政策を作るとか、政治家がしっかりすれば国民がよくなるというのはその通りだが、本当の前進に何がなるかといったら政党のガバナンス、これが最も必要である。
宮内:今、武藤さんが言った通りだと思う。長く続いた自民党はオールラウンドな政党になり、非常に多くの人を抱えた。それに対抗するために現れた民主党ももっと広い、かつ綱領のない政党という考えられない政党が出来た。やはり、私はしっかりした政党作りが重要だと思う。何を主張する政党なのか、これだけは明確にすべきだ。それに連なる人がその政党の候補者として選挙民に応えるという一番基本のところが、残念ながら日本に特に現在の民主党に全く見られない。その結果、国民を失望させているのが現実である。だから、政党はしっかりしているのか、政党間の対立軸は何なのか、をはっきりするのが大事である。その中から国民の責任で自分の支持する所をしっかりと支持して、選んだ後、それこそ「白紙委任はしない」という意味に関わるが、監視を強める、これが一番重要であると思う。その監視の結果を次の選挙で示す。これを何度も繰り返していけば、政党もしっかりしていくし、選挙民も自覚が出来てくる。だから、こうした選ばれた人と選んだ人との相互作用が必要である。
また、政党はこういう形で国をリードすると国民に示さなければならない。現在の国民の大部分が政権与党にだまされたと思っている。これが日本の現在の悲劇だと思う。だから、残念ながら、だまされたという所からもとに戻さなければならないという、低レベルの民主主義になってしまった。これを早く高いレベルの民主主義に持っていきたい。
工藤:先ほどのアンケートでは、選挙とは「国民との約束の場」か、それとも「白紙委任出来る政治家を選ぶ場」なのか、を訊いています。これは極端な選択肢なので真ん中あたりに答えが集約されると思っていましたが、実際は「国民との約束の場」という人が約6割いました。また、マニフェストを軸とした政治が必要か、と改めて訊いてみると、67.6%の方が「必要だ」と答えました。次に、選挙の時に何をあなたたちは参考にするか、と聞くと、57.6%が「マニフェスト」と答え、圧倒的でした。私はここに武藤さんや宮内さんの言及した政党のガバナンスを入れればよかったと反省しましたが、その代わり、気になったのが政党よりも政治家個人の考え方を知りたいという声が2割ぐらいあったことです。これは、「選挙とは約束の場だ」、「マニフェストを機能させなければならない」と考えているが、今の政党を信用できない。だから、その中にいる政治家一人一人をチェックしないと信用できないという層もいるという事です。増田さん、こうした声に関してどう思いますか。
増田:白紙委任はしないというか、スーパーマン頼みみたいなことは駄目だ。何かの手がかりで選ばなければならないので、一人一人の考え方を確認するという事は政党がいかに機能していないか、いかに政党が政党の形になっていないか、ということである。細かな数値目標ではなく、何をやる政党なのかをはっきり出して、候補者の資質とかを政党の責任で揃えてもらわなければならない。いくつかの提示された選択肢の中で私はこの党、私はこの党と決めるというごく当たり前のことをもう一回復活させる。そういう場であってほしい。私は今回のアンケート結果を見てなるほどと思う事が多いし、今の政治を変えていくために政党側から働きかけていかなければならない。
工藤:今、増田さんの言ったことが非常に重要で、確かにそうです。代表となる政党が、代表になる候補者を立てる義務があります。だから、政党の機能は全てにおいて問われていますが、今の政党が本当に取り組むのかという問題があります。
武藤:政党ではなく、政治家で選ぶという議論があれば二大政党制は無理である。もう一つは政党が望ましい政治家を必ずしも選んでないということである。その原因は自分たちのメンバーをどのように決めるかに関して十分に議論しない仕組みになっていて、有権者からみると変な人が立候補しているということにあると思う。この問題では政党のガバナンスということが試されているけれども、総じて民主主義を徹底した結果、民主主義が機能しないというのが現状だと思う。民主主義が傷ついているのではなく、ルールが必要である。政党がどのように運営をされるか、政治資金は政党の基本中の基本だからこれがどのように調達され、どのように配分されるか、人はどのように選ばれるのか、リーダーは誰なのか、ということを、こういう手続きでやっていれば信頼できるだろうという枠組み、そういうルールがあれば国民はもう少し異なる投票行動になれるだろう。そこが最大のポイントだと思う。
宮内:結局、民主主義が行きつくとてんでんばらばらとなる。そうではなくて、社会を動かすためにはてんでんばらばらでは駄目でそのために政治がある。やはり政党が何をするかが非常に大事である。どの政党は何を主張しているか、ということをはっきり出してそれをゆるぎなく進めていく。あるいは、それを少し変えるときには国民にしっかり説明するという政党の行動をしっかりしないと民主主義は本当に変なものになる。
工藤:今日は3人の議論で民主主義の非常に大きな問題点、またそれをどのように変えていけばよいかの論点を明確に提起出来ました。言論NPOの「私たちは政治家に白紙委任しない」というこの決意はスタートです。この決意から私たちが民主主義をより機能させるために変えていかなければなりません。そのために有権者と政治家とのカウンターバランスを取り戻す、特に有権者は現状について当事者意識を持って、考え、行動しなければならない局面にいます。是非私たちの呼び掛け「有権者は政治家に白紙委任をしない」という賛同の環を広めていきたいです。つまり、この呼び掛けから日本の大きな変化を作りだしていきたいと思います。
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