日本の政党政治を考える

2012年2月27日

2012年2月8日(水)
出演者:
梅村聡氏(民主党参議院議員)
平将明氏(自民党衆議院議員)
西村康稔氏(自民党衆議院議員)
森山浩行氏(民主党衆議院議員)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)


放送に先立ち緊急に行ったアンケート結果を公表します。ご協力ありがとうございました。
 2月8日の言論スタジオでは、梅村聡氏(民主党参議院議員)、平将明氏(自民党衆議院議員)、西村康稔氏(自民党衆議院議員)、森山浩行氏(民主党衆議院議員)の若手政治家4名をゲストにお迎えし、「日本の政党政治を考える」をテーマに議論が行われました。

 まず代表工藤は、先日言論NPOが公表した「野田政権の100日評価」の有識者のアンケートでは、既存政党にはこれ以上期待できないという声が6割を超え、こうした状況を打開できる主体として、有権者と若い政治家、への期待が半数を超えていた。こうした有識者の期待が正しいのか、間違っているのか、若手政治家の皆さんと議論していきたい」と述べ、今回は①若い政治家の力で現在の政党政治の混迷を変えることはできるのか、②すでに信頼を失っている民主党と自民党を立て直すことは可能か、③今の政治家がこの国の課題解決に取り組まないのは何故か、などについて突っ込んだ議論が行われました。


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 まず、先の有識者アンケートで「若い政治家」に期待が多かったことについて、自民党の平氏は「小選挙区では多くの支持を得るために独立性が高まり、自分の判断で行動し、発言する議員が増えてきている」と指摘し、民主党の森山氏は「若手は、ベテランの政治家と比べて、これまでの政界や党の支持基盤に縛られていくことが少ない、それが可能性と感じられているのでないか」と述べました。

 これに対して工藤は「若手は選挙に弱いため、大衆に迎合するだけで、自分の見解を積極的に発言し、国民を説得する、という役割を果たせないのではないか」と質問。これに対しては、平氏は「小選挙区では既得権益を持つ団体だけフォローしていても当選できない。そこで制約されるよりも自由に発言できる議員の方が強い」と述べ、梅村氏は「一度過去にやったことを時には否定する場面が出てきたときに、そこできちんと線を引けるかどうか。ここに若手とベテランの大きな違いを感じる」と答えました。

 また、「若手は、しがらみがなく活動できるというが、すでに民主党、自民党も信頼を失っている、若手は存在感を示せていない」と代表工藤が問うと、梅村氏は「民主党は党内融和を優先する際に年功序列に偏り過ぎた点はあり、それが活力をなくしてきている」と指摘。西村氏も、「自民党は全体として頭でっかちになっている部分はある。若手の出番は出てきてはいるが、全体の意思にはつながるかどうかがこれからの課題だ」と述べ、各党ともに、党内の組織固めを優先していることが、党内の活力を失っていることを示唆しました。


 次に代表工藤は、「民主党も自民党も政策を軸にまとまっておらず、党内対立のために意思決定できない。つまり烏合の衆の状態で、これでは組織政党とは言えない」と現在の政党政治の問題点を指摘しながら、いまの政党を変えることができるかについて迫りました。

 森山氏は、「大きな政策で党内がまとまらず、合意をすることが難しい」と、党として政策をまとめ上げていく仕組みが脆弱な事情を説明し、梅村氏は、「政党が人材育成機能を持ったうえで小選挙区を導入しないと、「反与党」「反権力」というだけでどんどん政権交代が起こってしまう」と述べ、まずは政党の人材育成機能強化が不可欠との見解を示しました。

 これに対して自民党の西村氏は、「民主党は党内をまとめるシステムがなく、閣僚やトップが好きなことを言っていることが問題。一方の自民党は、調整過程がしっかりできているのだが、そこでなかなか意見がまとまらず、思い切ったことができない」とそれぞれの問題点を明らかにし、「党内でいかに早く意見集約して大きな方向性を決め、それをトップが示すかが重要」と、党内ガバナンスの重要性を指摘しました。また平氏は、「党内団結を優先する谷垣さんを総裁選で選んだ時点で、大きな組織改革はできない」としたうえで、「リアリティのある政策パッケージとビジョンを出し、その競争が始まらなければならない」と述べました。梅村氏もその点には賛同し、「そのときに若手が手を取ることが必要で、そのためも、きちんと議論する場を普段から持っておくことが必要だろう」と語りました。


 次に、日本が岐路に立ち、答えを出さなければならないときに、「日本の政治家は本当に課題解決ができるのか」という論点をめぐって議論がなされました。代表工藤が「なぜいまの政治家は結果を出すことができないのか」と問題提起すると、西村氏は一つの要因として、政策に関わる人材層の厚みがない点を指摘。政党助成金を活用してでも、政策秘書をはじめとするスタッフの機能強化などを図らないと、「政策本位での勝負にはならない」と強調しました。一方の平氏は、「国家をマネジメントする観点から、マクロで見る司令塔が不在」であることが課題解決できない大きな要因とし、そのためには仕組みと人材の双方が不可欠としました。
 工藤はその後、「民主党は国家を運営する自信があるのか」と本質的な問題に迫りました。これに対して梅村氏は、「いま日本が持っているパワーを(政治が)ダムのようにせき止めている感はある」と自身が抱える危機感を率直に語り、そこへの対応が急務だとの認識を示しました。


 最後に工藤は、これまでの議論を総括して、「民主党と自民党は本当に変われるか。もうそこから脱出したい、と思わないか。率直に伺いたい」と尋ねました。これに対しては、「今の政党の中で、小選挙区制度の下で一翼を担う政党として自民党が比較的マシだと考えている。自民党と乗っ取って変えていくというのが、一番リアリティのある処方箋だ」(平氏)、「多様な人材の中で、若い世代が力を付けていけば、自民党が変わるチャンスはあると思う。最後まで頑張りたい」(西村氏)と述べ、森山氏は「二大政党では、両方とも良くならないと、課題解決にはつながらない」との考えを強調しました。そして、梅村氏は、日本の政治が課題解決に向かうためには、「政治家個々人が自分の能力を伸ばして、価値観を磨いて、知識を増やして、闘う術を身につける努力をするのが重要であり、政党はその結果だ」と述べ、「一人ひとりの政治家が有権者の期待に応えて成長を続けていく。このことに尽きる」と語りました。

 言論NPOは今後も、「強い民主主義」をつくり出すため、こうした政党政治や民主主義そのものの問題についても、議論を深めてまいります。どうぞご期待ください。

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