言論NPOは、「どのような政権も、発足後100日を過ぎれば有権者による厳しい監視にさらされなければならない」との考えから、政権の100日時点(4月4日)での評価アンケートを有識者対象に行い、4月20日に結果を公表しました。回答したのは企業経営者、メディア関係者、学者・研究者、公務員等の401人。この調査は、2006年の第一次安倍政権から、福田、麻生、鳩山、菅、野田の各政権で行われ、今回の第二次安倍政権は7回目となります。
100日時点の支持率は53.1%で、これまでの6政権と比べて極めて高い水準に
まず、安倍政権の100日時点での支持率は53.1%と、それまでの6政権の100日時点と比べてきわめて高い水準となりました。これまで最も高かったのは、野田政権の33.9%でで、第一次安倍政権は24.0%に過ぎませんでした。また、この100日時点で安倍政権を「期待以上」と見る有識者は42.9%で、「期待通り」を合わせて64.8%となっています。この「期待以上」と「期待通り」を合わせた評価でも、これまでの政権で最も高いのは野田政権の25.2%でかなり高い評価となっています。さらに、100日後の政権運営についても、「期待できる」は39.2%と4割近くありました。
「首相の資質」に関わる評価は5点満点中3.3点―歴代最高得点
次に、首相としての資質を、「説明能力」、「チームや体制作り」、「実績」、「指導力や政治手腕」、「見識、能力や資質」、「基本的な理念や目標」、「政策の方向性」、「首相の人柄」の8項目を5点満点で見たときの平均は3.3点となり、これまで最高得点だった野田、鳩山政権の2.4点を大きく上回り、7政権では最高得点を記録しました。第一次安倍政権は2.2点でした。8項目も、「首相の人柄」では野田、鳩山、福田政権と同水準になりましたが、そのほかは過去最高であり、他の6政権を大きく引き離す高評価になっています。とりわけ、「指導力や政治手腕」が3.6点と高い点数となっています。
安倍政権が手懸ける34項目では100日時点で評価はまだそう高くない
一方、これまで安倍政権が打ち出した政策や政権対応の34項目のそれぞれに対する評価を聞いたところ、「うまく対応できた」と「うまく対応できていないが、今後期待できる」という回答の合計が50%を越えたのは8項目で、「緊密な日米同盟の復活」は71.8%、「TPPへの交渉参加」が69.4%、「日銀との共同での2%の物価目標への取り組み」が64.5%、「アベノミクスによる経済成長」が63.4%でした。
逆に安倍政権の100日では、「対応で来ておらず、今後も期待できない」と答えた有識者が40%を越えた政策は12項目あり、「社会保障制度の改革」が51.6%、「地方分権改革」は51.9%、「電力システムの抜本改革」が47.4%、「財政健全化」が43.9%でした。
「尖閣諸島の問題の解決」などアジアの外交課題に関しては設問の多くで、「今後は期待できる」、と「今後も期待できない」がほぼ同数となり、意見が分かれています。
国民に説明が不足しているのは、財政破綻の回避、エネルギー政策、社会保障改革
また安倍政権が、国民に説明を求められている課題で、その説明が十分でないと有識者が感じている政策課題で最も多いのは、「日本の財政破綻をどのように食い止めるかの道筋」の46.1%で、続いて「原発再稼働に向けた道筋と日本のエネルギー政策」の32.4%、「社会保障制度をどのように持続的なものにするか」の30.9%が並んでいます。
既存政党への期待が回復
現在の日本の政治について、前回の野田政権時の100日評価では「国家危機の段階」や「既存政党の限界が明らかになり、政策を軸に政界再編に向かう過渡期」と判断する人々がそれぞれ4割近くになっていましたが、今回は両方とも半減。代わって、「新しい国や政府、社会のあり方をまだ模索している時期」が43.6%で最多となりました。また、既存政党に対する評価を問う設問でも、「期待している」が10.8%だった前回調査に比べ、「いくつかの政党には期待している」が44.6%を占めるなど既存政党への期待が回復してきています。さらに、日本の政党政治の今後については、「自民党を中心とした政治が長期化し、一極化する」が36.4%で最多となり、「政界の再編や混乱が繰り返され、政党政治自体が信頼を失う」という回答は15.2%にとどまりました。
安倍政権は2013年4月4日に発足後100日を迎えました。どのような政権も、発足後100日を過ぎれば有権者による厳しい監視にさらされなくてはなりません。そうした考えから、言論NPOではマニフェスト評価の一環として2006年の安倍政権から、「100日評価アンケート」を有識者を対象に行い、その結果を公表しています。
今回の安倍政権の「100日評価」は、安倍政権(第一次)、福田政権、麻生政権、鳩山政権、菅政権、野田政権に続き7回目になります。
アンケート調査は言論NPOの活動にご参加、あるいはご協力をいただいている各分野の有識者、ジャーナリスト、企業経営者、官僚などを対象に2013年4月上旬から約2週間の日程で調査票の郵送やメールの送付によって行われ、2013年4月15日までの回答者である401人分を集計し、分析しました。回答者の属性は、男性が88.8%、女性が11.2%となっています。年齢別でみると、10代が0.0%、20代が2.8%、30代が7.3%、40代が15.0%、50代が29.8%、60代が29.5%、70代が13.2%、80歳以上が2.3%です(それ以外は無回答。以下同様)。回答者の職業は、企業経営者・幹部が17.5%、会社員が15.5%、メディア幹部が1.5%、メディア関係者が11.3%、国家公務員が2.6%、地方公務員が3.9%、国会議員が0.3%、地方議員が1.0%、NPO・NGO関係者が8.5%、学者・研究者8.5%、各団体関係者が8.2%、学生が0.5%、自営業が5.7%、その他が12.1%となりました。