12月27日、言論NPOは記者会見を行い、「菅政権100日評価」及び「緊急アンケート結果」を公表しました。会見には、言論NPO代表の工藤のほか、言論NPOのマニフェスト評価委員で日本総研理事の湯元健治氏、同主席研究員の山田久氏、同主任研究員の西沢和彦氏、東京大学大学院農学生命科学研究科長の生源寺眞一氏、京都大学大学院地球環境学堂教授の松下和夫氏、そして、大学評価・学位授与機構准教授の田中弥生氏が参加しました。
まず、代表工藤が「緊急アンケート結果」について報告しました。100日評価とあわせて行っているこのアンケートは安倍・福田・麻生・鳩山政権に続き5回目になりますが、今回は最多となる508人が回答しました。工藤は、今回の調査では、歴代政権と比較して菅政権の評価が極めて厳しい評価となったことを指摘しました。まず、首相の資質や政権の実績に関する評価では、「人柄」や「指導力」など8項目の平均で1.8点となり、歴代政権の中で最も評価の低かった麻生政権と同じ水準となりました。とりわけ、「実績」に関する評価は1.4点と歴代政権の中で最低点となっています。また、100日時点での支持率は15.9%で、支持しないとの回答(64.4%)を大きく下回る結果となっており、発足時と比べても「期待以下」との回答が58.5%と半数以上にのぼっています。その他、43.7%の有識者が日本の政治の現状を「国家危機の段階」と判断していること、そして政治の混迷を打開する主体として「有権者」に期待すると答えた人が55.3%に上ったことを挙げ、有権者の責任と重要性を強調しました。
次に、田中弥生氏による司会の下、言論NPOが行った「菅政権100日評価」についての説明が行われました。
最初に、工藤から全体的な説明が行われました。評価は経済、年金など12分野で行われ、実績評価、実行過程、そして説明責任の観点から評価がなされています。評価の結果、菅政権の得点として実績評価が13点、実行過程が6点、説明責任が2点であり、総合得点が21点にとどまったことが発表されました。この結果は、100日時点で35点の評価だった鳩山政権(実績評価20点、実行過程9点、説明責任6点)と比較しても極めて低く、有権者の厳しい見方が表れています。
引き続き、同席した評価委員から、100日評価における分野別の詳細について説明が行われました。
まず、「年金」と「高齢者医療」について西沢氏から説明が行われました。西沢氏は「年金」について、年金一元化と歳入庁の創設が2009年マニフェストのポイントとして挙げ、前者は議論が進捗していない状況を指摘しました。また、後者についても文言が消えており、現在も歳入庁の方針が残っているのか不透明である現状に触れ、「政権としての方針を文書として提示すべきだ」と述べました。また、「マクロ経済スライドがいまだ機能していないなど、政権与党として求められるはずの現行制度を安定的にメンテナンスすることさえできていない」とし、厳しい評価となった理由を説明しました。「高齢者医療」については、皮肉にも官僚主導であったことにより情報公開が的確になされた点が比較的高い評価につながっている点を指摘しました。
次に、山田氏から「雇用」に関する説明がありました。山田氏は雇用に関して、雇用の受け皿とセーフティネット、労働市場の再設計の3つを軸として挙げ、「補正予算等で個々の政策は実現しているものも多く、形式的には評価できるが、明確な目標設定と期限がみられず、中途半端になっている」とし、実質要件上は高い評価は与えられないと述べました。
「農業」を担当した生源寺氏は、将来の担い手と国際化への対応という観点から、「政策としてブレが大きい。また、規模加算はこれまでの小規模農家維持の維持との間に矛盾があり、説明が果たされたとは言えない」と評価しました。とりわけ説明責任については、「TPPへの参加検討と競争力向上についても各省の試算がバラバラで、十分な説明が必要である」としてその不足から改善の必要性を訴えました。
続いて「経済」について、湯元氏から説明がなされました。経済の視点としては、マクロ経済政策運営と、中長期的な成長戦略の二つの観点から評価がなされました。前者については、政府公表の数字は大きいが、既存の延長や需要の先食いが多く、日銀の金融政策に依存していることを指摘しました。そして、後者の成長戦略については、長期スパンの話が多いことや、マニフェストとの関係性について触れ、「緻密な情報開示、決定プロセスの説明ができているように見えない」と述べました。
松下氏からは、「環境」に関する評価の説明が行われ、鳩山政権時と比較するとから環境政策が大きく後退したことに触れ、温暖化対策基本法案が廃案になり、国内排出量取引制度も凍結されるなど、首相のリーダーシップが発揮されていない現状を強調しました。
田中氏からは、「新しい公共」の評価結果についての説明がなされました。菅政権では鳩山政権の方針を受け継ぎ、形式的には税制や予算など進捗しているものの、各省の予算取り合戦に陥っていることや、その後のトレースができていない状況を挙げ、内容面では問題が多いことを指摘しました。
最後に、工藤から「財政」の説明が行われました。その中で工藤は、財政規律の健全性に問題がある現状の中で、キャップ水準が高すぎて一般会計の規模が膨大であることや、補正予算も本来であれば本予算計上すべきものが含まれていた可能性に言及し、「財政規律を徹底するという点で極めて疑問が残る」と指摘しました。そして、「すでにマニフェストの広範な修正が行われている以上、政治の意思として、何を実現して何を断念するのかを国民に説明すべきだが、現時点ではそうした姿勢は見られない」として、説明責任に対して評価が決定的に低くなる点に触れ、今回の100日評価を総括しました。
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