第5話 安倍首相はご自身の流儀で行くべき
今までは、「チーム安倍」も横の連絡がうまくいっておらず、ばらばらというイメージを与えていますが、それぞれ一生懸命やっていますし、総理自身も慣れてくれば、官邸にいろんなものをつくったのですから、その使い方も上手になるでしょう。安倍政権はスタート時点では若さもあるし、閣僚経験も余りない人が多いので慣れない点があったのも無理からぬところがありますが、だんだん慣れてきているのではないでしょうか。
官僚も含めて、今の官邸のやり方はうまくいかないのではないかという疑念を持っている人が多いということですが、大事なのは全体をコントロールするところです。具体的に言えば官房長官です。後藤田さんのときには、各省の役人が後藤田官房長官に呼ばれると、それは緊張していました。変なことを言えない雰囲気で、閣僚すらもそうでした。官房長官は、そういうすごみが出てこなければなりません。閣僚や官僚がそれぞれ勝手な議論をしているのをほうっておくようではいけません。後藤田さんのような官房長官がいれば内閣はぴりっとすると思います。内閣が強くなるのも弱くなるのも官房長官次第なのです。だから、塩崎さんには頑張ってもらいたいのです。頭も人柄もいい人なのですから。
官房長官は内閣の大番頭ですから、誰かがわがままを言ったら、総理になりかわってわがままを言わせないだけの開き直りが大事です。補佐官と各省がうまくいっていないのであれば、官房長官が乗り出してそこのところを調整すべきです。
今回、総理補佐官として広報担当補佐官ができたのは初めてのことです。これまでは役人としての内閣広報官に、内閣のスポークスマンとしての役割が期待されていましたが、やはり役人ですから、どうしても限界があって、特に記者会見は専ら官房長官がやっている。内閣広報官は出る幕がありません。私が官房副長官をしていた頃は、内閣広報官にある程度のことをやらせようとしたことがありましたが、外務省が全く協力しませんでした。外交案件は官房長官には報告するが、報道については外務報道官がやるので結構ですというスタンスでした。
ですから、今でも外交問題になって世耕さんが話すと、外務省は嫌がっているでしょう。そこが課題です。内閣のスポークスマンであれば、それは外交問題を含めて、どこまで官房長官がやり、どこまで広報官(補佐官)がやるかという役割分担も考えるべきです。わかりやすく言えば、例えば、午前の記者会見は官房長官がやるが、午後は補佐官がやるということにすれば、出番がはっきりする。今は、午前も午後も官房長官です。閣議後の記者会見は、閣議メンバーである官房長官が出るしかありませんが、午後はその日の出来事に関連したものですから、広報補佐官がすればいいのです。
今の広報担当補佐官は総理の意を体して、広報面で走り使いしているという感じです。内閣全体として、総理、官房長官、広報官との縦系列の中で、総理補佐官としての広報担当補佐官をどこに位置づけ、どの分野を担当してもらうのかがはっきりしていません。そういう意味では、世耕さんは気の毒です。外国を見ると、どこでも報道官が記者会見をしています。中国もアメリカもそうです。日本の場合は、官房長官にウェイトがかかり過ぎています。だから、官房長官は時間的に物すごく制約されてしまう。官房長官は内閣の番頭ですから、あらゆる問題をさばかなければならないはずです。
安倍さんは若いし、閣僚経験も官房長官しかしていませんから、総理大臣としては異例です。それはある意味では気の毒です。普通の閣僚経験をしないままに総理の座に座るというのは、やはり本人も不安があるでしょうし、精神的にも負担になります。ただ、国政を任されているので、安倍さん自身も慣れてきて、自信もつけてきているのではないでしょうか。日本のマスコミは、支持率の低下がどうだとか、せっかく選んでおきながら足を引っ張ることばかりしています。
安倍さんは小泉さんとは政治スタンスが異なります。性格が全く違う人です。性格の違う人が同じようなことをやると、失敗します。安倍さんは安倍さんの流儀で行くべきです。得意分野でないのに真似して失敗するというのは、よくある話です。小泉さんの一発かましてやるやり方は天性のものです。安倍さんは非常にオーソドックスな人ですから、そのようなやり方は向きません。自分の性格に従って、不動の信念の下しっかり目標を持ってやるということです。