有識者208人が見た安倍政権4年の評価-
~「首相としての資質」は5点満点で2.9点、「主要政策課題39項目の実績」は5点満点で平均2.59点~

2016年12月29日

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 安倍政権は、12月26日で発足から4年を迎えました。

 それに合わせ、言論NPOは、2004年から定期的に行っている政権実績評価の一環として、安倍政権の4年間の評価に関する有識者アンケートを実施しました。安倍政権発足後に実施する有識者アンケートとしては、2013年4月の政権発足100日時点、13年12月の1年時点、14年12月の2年時点、15年12月の3年時点に続く5回目の実施であり、安倍首相の資質、ならびに安倍政権が取り組んでいる政策課題について、有識者の意見を幅広く紹介することにより、有権者の判断と健全な世論形成に資する目的で行いました。

 その結果、安倍首相の「首相としての資質」に対する評価は2.9点と過去の調査に比べても高いものとなり、とりわけ「指導力や政治手腕」に対する評価が高くなっています。39の主要政策項目の4年間の実績評価は、「教育」、「外交・安保」、「農林水産」で高い評価を得て、5点満点で平均2.59点となり、こちらも3年時点よりも高い評価となりました。一方で、「財政」に対する評価の低さが際立っています。

調査の概要

 今回のアンケートは、言論NPOの活動にご参加、ご協力をいただいている各分野の有識者約6000人を対象に、2016年12月20日から24日までの期間でメールの送付によって行い、208人から回答を得ました。回答者の属性は、男性が87.5%、女性が8.6%となっています。年齢別では、10代が0%、20代が3.4%、30代が5.3%、40代が10.1%、50代が21.6%、60代が27.4%、70代が23.1%、80代が5.8%という構成です。職業別では、企業経営者・幹部が13%、会社員が11.5%、メディア幹部が2.4%、メディア関係者が6.7%、国家公務員が1.9%、地方公務員が1.4%、国会議員が0.5%、地方議員が0.5%、NPO・NGO関係者が9.1%、学者・研究者が13%、各団体関係者が7.7%、学生が2.9%、自営業が8.7%、その他が18.3%となっています。

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【安倍政権の評価】

安倍政権への支持率は約4割で、この1年間で大きな変化はない

 発足して約4年が経過した安倍政権を支持するか尋ねたところ、「支持しない」が44.7%となり、「支持する」の38.9%をやや上回っています。3年時点では「支持しない」が44.9%、「支持する」が39.9%で、この1年間で大きな変化はみられません。

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「期待以上」も「期待以下」もそれぞれ増加

 発足前と比べた安倍政権への期待度の変化について尋ねたところ、最も多かった答えは「そもそも期待していなかった」で34.6%でした。

 一方、「期待以上」との回答は、19.7%で、3年時点の18.5%をわずかに上回っていますが、「期待以下」も3年時点の17.2%から20.2%に増加しています。

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⇒上記のように回答した理由とは

安倍政権が「国民の不安にしっかり向かい合っていない」と考える有識者は5割を超えている。

 長期政権となった安倍政権が、様々な課題解決に向けて「国民の不安にしっかりと向かい合っているか」と尋ねたところ、「そうは思わない」(「どちらかといえば」を含む)が50.9%と半数を超え、「そう思う」(「どちらかといえば」を含む)の37.5%を上回っています。

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安倍政権が更なる長期政権となるとの見方が4割を超える

 2016年10月19日、自民党はこれまでの「連続2期6年」の党総裁任期を「連続3期9年」まで延長することを決定しました。これにより、安倍政権は最大2021年9月まで続けることができるようになりました。

 そこで、安倍政権はいつまで続くと思うかを尋ねたところ、最も多かったのは「自民党総裁選の3期目の任期が切れる2021年9月まで」で26%でした。次いで、「2020年の東京五輪終了まで」(17.3%)となり、この2つを合計すると4割を超える有識者が、安倍政権はさらに4年前後続くと予想していることになります。「次回の衆議院選挙後まで」は13.9%と1割程度でした。

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安倍首相の「首相としての資質」は全8項目で増加し平均2.9点。特に「アピール度、説明能力」「指導力や政治手腕」の評価が上昇

 安倍首相の「首相としての資質」について、「首相の人柄」、「指導力や政治手腕」、「見識、能力や資質」、「基本的な理念や目標」、「政策の方向性」、「実績」、「チームや体制づくり」、「アピール度、説明能力」の8項目について、5点満点での評価を尋ねました。

 その結果、8項目の平均点は2.9点となり、3年時点での2.3点を大きく上回りました。さらに、1年時点、2年時点の2.7点も上回っており、100日時点の3.3点に次ぐ水準となっています。

 項目別にみると、8項目すべてにおいて3年時点から点数が上昇し、中でも国民に対する「アピール度、説明能力」(3年時点1.9点→今回2.7点)や、「指導力や政治手腕」(3年時点2.8点→今回3.4点)の両項目で増加幅が大きくなり、その他の項目でも0.4点~0.5点上昇しています。
 

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【有識者は安倍政権の中心的な政策課題をどう評価したか】

有識者208人が考える主要39項目の4年間の実績評価は、5点満点で2.59点。
「教育」、「外交・安保」、「農林水産」が2.8点を超える一方で、「財政」は1点台にとどまる

 次に、安倍政権が打ち出した39項目の政策に対する評価を尋ねました。各項目について、「4年間で実現した」を5点、「実現はしていないが、目標達成の方向に向かっている」を4点、「現時点で目標達成できるかは判断できない」を3点、「目標達成は困難」を2点、「既に断念しているがその説明はない」、「わからない」を0点とし、各項目について5点満点の採点を算出したところ、全39項目の平均は2.59点となりました。

 このうち、項目別の平均点が5割(2.5点)を超えたのは25項目でした。特に評価が高かったのは、「法人税を引き下げる」(3.35点)、「安保法制の施行に伴い、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能な体制を構築する」(3.15点)、「給付型奨学金など教育費負担への支援を充実する」(3.12点)、「国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国際社会の平和に向けて貢献する」(3.02点)の4項目で、ここまでが3点を超えています。

 対照的に低評価が際立っていたのが、「2020年の基礎的財政収支黒字化を実現する」で、1.81点と唯一の1点台になっています。それに次ぐ低水準となったのは、今年法改正が行われた「若者も高齢者も安心できる年金制度を確立する」(2.01点)と、安倍政権の看板である「アベノミクス『三本の矢』で10年間の平均で名目3%、実質2%の経済成長達成し、雇用・所得の拡大を目指す」(2.08点)でした。

 政策分野別でみると、最も高かったのは「教育」で2.83点でした。これと並んで「外交・安保」(2.82点)、「農林水産」(2.82点)も高い評価を得ています。以下、「地方再生」(2.73点)、「経済再生」(2.71点)、「憲法改正」(2.63点)、「エネルギー」(2.61点)、「復興・防災」(2.56点)までが5割を超えています。

 一方、「財政」は1.81点となり、2番目に低かった「政治・行政改革」(2.23点)と比較しても低評価が際立っています。
 

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アベノミクスの現状に対し否定的な評価が5割を超え、物価や成長率目標未達の説明責任を求める声が多い

 個別の政策の評価について、さらに詳しく尋ねました。まず、アベノミクスについての成否を質問したところ、「成功していると思う」(「断定はできないが、どちらかといえば成功していると思う」を含む、以後同様)は25.5%でした。3年時点では「成功していると思う」は38.0%だったことから、この1年間で13ポイント低下しています。

 一方、「既に失敗していると思う」(「断定はできないが、どちらかといえば失敗していると思う」を含む、以後同様)との回答は52.4%と半数を超え、3年時点の36.0%からは16ポイント増となり、アベノミクスに否定的な見方が拡大しています。
 

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 また、これに関連して、安倍政権が当初掲げていた物価安定目標や経済成長率目標は、その達成が難しい状況にあることについてどう考えるか質問しました。これに対しては、「達成していない以上、今後も維持するのか、断念するのか国民に説明するのが当然だ」と説明責任を問う回答が25.0%で最多となりました。

 また、目標自体の問題点を指摘する有識者が多くみられ、23.6%が「そもそも目標設定が間違っていた」、10.6%が「こうした数値目標を掲げること自体が問題だった」と回答しています。一方で、目標設定の誤りはあるとしつつも、プラス面を評価する「目標が高すぎただけで、実際に経済が上向くなど評価できる」という意見も22.6%みられます。

 なお、「現時点では達成していないが、今後達成の可能性は十分にある」との見方は5.3%にとどまりました。
 

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日本の財政状況について、悲観的な見方が7割を超える

 政府は、昨年6月に閣議決定した「経済・財政再生計画」の中で、2020年度に基礎的財政収支を黒字化することを目標としていますが、その達成は非常に難しい状況になっています。そこで、今の日本の財政状況をどのように考えているか尋ねたところ、「非常に厳しい状況で、財政再建はできないと思う」との見方が40.9%で最も多く、「既に破綻していると思う」(13.0%)、「どのような取り組みを行っても、破綻は免れないと思う」(11.1%)と合わせると、7割を超える有識者が日本の財政状況を悲観的にみていることになります。

 一方、「消費税率を上げる余力があり、財政再建は可能だと思う」と考える有識者も25.5%いました。

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有識者の6割が、安倍政権は急速に進む少子高齢化社会に対するビジョンを示していないと答える

 日本では、団塊の世代が後期高齢者になる2025年にかけて高齢化がさらに進んでいきます。そこで、少子高齢化へ対応するために、安倍政権が具体的なビジョンや対応策を国民に提示していると思うかを尋ねました。

 その結果、「そもそも政府は、ビジョンや有効な対応策は持ち合わせていない」という回答が35.6%で最も多く、「ビジョンや有効な対応策は提示されていない」の25.0%と合わせると6割の有識者が安倍政権のビジョンの欠如を指摘しています。

「断片的には提示しているが、全体像は提示されていない」との回答は31.7%と3割でしたが、「ビジョンや有効な対応策を提示している」と評価する意見は1.9%にすぎませんでした。

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日露首脳会談に対する否定的評価は半数近い

12月15、16日に行われた日ロ首脳会談で、安倍首相とロシアのプーチン大統領が北方四島での共同経済活動実施などで合意しました。そこで、この首脳会談についての評価を尋ねると、「評価できない」(「どちらかといえば」を含む)が48.5%と半数近くなり、「評価する」(「どちらかといえば」を含む)の37.5%を上回っています。

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⇒上記のように回答した理由とは
 

「自由貿易を守るため、状況を見ながら対応策を練るべき」との回答が最多

 臨時国会でTPP承認案と関連法案が成立したものの、アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は就任初日のTPP離脱を明言しています。そこで、TPPの今後をどうみるか尋ねたところ、「自由貿易を守るため、状況を見ながら対応策を練るべき」が最も多く、17.3%でした。

 そして、「アメリカ抜きでも発効できるように日本主導で各国に働きかけるべき」が16.8%、「アメリカの離脱姿勢の翻意に向け、日本がリーダーシップを発揮して説得すべき」が14.9%となり、TPP発効に向けて努力すべきと考える有識者が3割います。

 一方、アメリカの離脱が避けられず、発効できない以上「諦めるべき」と考える有識者も12.5%いました。そして、「中国が主導する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に軸足を移すべき」(5.8%)、「日中韓FTAや日欧EPAなどの早期締結を図るべき」(17.8%)など、他の経済連携協定に力点を移すべきと考える有識者を合わせれば、4割近い人がTPPにこだわるべきではないと考えていることになります。

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【有識者は日本政治の現状をどう見ているか】

ポピュリズムや、政治の課題解決力に対する懸念が依然として強い

 日本の政治の現状をどのように判断しているか、8つの選択肢から2つまで選んでもらったところ、最も多かったのは、「日本の将来についての選択肢が政党から提起されないまま、ばら撒き政策や官僚たたきに明け暮れ、ポピュリズムが一層強まる時期」で34.8%(3年時点では39.6%)でした。これに「新しい国や政府、社会のあり方を、まだ政治が模索している時期」が26.5%(3年時点では33%)、「政府の統治(ガバナンス)が崩れ、政治が財政破綻や社会保障などで課題解決できないまま混迷を深める国家危機の段階」が24.5%(3年時点で28.7%)が続く構図は3年時点と同様です。

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民主主義を強く機能させるためには、有権者と政治の間に緊張感ある関係が不可欠

 最後に、民主主義を強く機能させるため、選挙を軸にして、政党や政治家が国民に政策を説明し、その実現に努力をするという、有権者と政治の間に緊張感ある関係をつくることが大事だと思うかを尋ねました。

 その結果、「大事だと思う」(「どちらかといえば」を含む)との回答が89.4%と9割近くになり、こうした関係を不可欠とする見方が多数を占めました。

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⇒上記のように回答した理由とは
 

このアンケートや言論NPOについてのご意見・ご感想・ご要望なども、記述回答でお寄せいただきました。その回答もご紹介します。

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